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虞美人草 十 (12)

时间: 2021-04-11    进入日语论坛
核心提示:「兄さん」「何だい。――仕事はもうおやめか。何だかぼんやりした顔をしているね」「藤尾さんは駄目よ」「駄目だ? 駄目とは」
(单词翻译:双击或拖选)
「兄さん」
「何だい。――仕事はもうおやめか。何だかぼんやりした顔をしているね」
「藤尾さんは駄目よ」
「駄目だ? 駄目とは」
「だって来る気はないんですもの」
「御前聞いて来たのか」
「そんな事がまさか無躾(ぶしつけ)に聞かれるもんですか」
「聞かないでも分かるのか。まるで巫女(いちこ)だね。――御前がそう頬杖(ほおづえ)を突いて針箱へ()たれているところは天下の絶景だよ。妹ながら天晴(あっぱれ)な姿勢だハハハハ」
沢山(たんと)御冷(おひ)やかしなさい。人がせっかく親切に言って上げるのに」
 云いながら糸子は首を(ささ)えた白い腕をぱたりと倒した。(そろ)った指が針箱の角を(おさ)えるように、前へ垂れる。障子に近い片頬は、()し付けられた手の(あと)耳朶(みみたぶ)共にぽうと赤く染めている。奇麗に囲う二重(ふたえ)(まぶた)は、涼しい(ひとみ)を、長い(まつげ)に隠そうとして、上の方から垂れかかる。宗近君はこの睫の奥からしみじみと妹に見られた。――四角な肩へ肉を入れて、倒した胴を(ひじ)()ねて起き上がる。
「糸公、おれは叔父さんの金時計を貰う約束があるんだよ」
「叔父さんの?」と軽く聞き返して、急に声を落すと「だって……」と云うや否や、黒い眸は長い睫の裏にかくれた。派出(はで)な色の絹紐(リボン)がちらりと前の方へ顔を出す。
「大丈夫だ。京都でも甲野に話して置いた」
「そう」と俯目(ふしめ)になった顔を半ば上げる。危ぶむような、慰めるような笑が顔と共に浮いて来る。
「兄さんが今に外国へ行ったら、御前に何か買って送ってやるよ」
今度(こんだ)の試験の結果はまだ分らないの」
「もう(じき)だろう」
「今度は是非及第なさいよ」
「え、うん。アハハハハ。まあ好いや」
()かないわ。――藤尾さんはね。学問がよく出来て、信用のある(かた)が好きなんですよ」
「兄さんは学問が出来なくって、信用がないのかな」
「そうじゃないのよ。そうじゃないけれども――まあ(たとえ)に云うと、あの小野さんと云う方があるでしょう」
「うん」
「優等で銀時計をいただいたって。今博士論文を書いていらっしゃるってね。――藤尾さんはああ云う方が好なのよ」
「そうか。おやおや」
「何がおやおやなの。だって名誉ですわ」

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