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虞美人草 十七 (13)

时间: 2021-05-25    进入日语论坛
核心提示:「本来の無一物から出直すとは」と自(みずか)ら自らの頭脳を疑うごとく問い返した。甲野さんは尋常の調子で、落ちつき払った答を
(单词翻译:双击或拖选)

「本来の無一物から出直すとは」と(みずか)ら自らの頭脳を疑うごとく問い返した。甲野さんは尋常の調子で、落ちつき払った答をする。――
「僕はこの(うち)も、財産も、みんな藤尾にやってしまった」
「やってしまった? いつ」
「もう少しさっき。その紋尽しを書いている時だ」
「そりゃ……」
「ちょうどその丸に()(うろこ)()いてる時だ。――その模様が一番よく出来ている」
「やってしまうってそう容易(たやす)……」
「何()るものか。あればあるほど(わずらい)だ」
御叔母(おば)さんは承知したのかい」
「承知しない」
「承知しないものを……それじゃ御叔母さんが困るだろう」
「やらない方が困るんだ」
「だって御叔母さんは始終(しじゅう)君がむやみな事をしやしまいかと思って心配しているんじゃないか」
「僕の母は偽物(にせもの)だよ。君らがみんな(あざむ)かれているんだ。母じゃない(なぞ)だ。澆季(ぎょうき)の文明の特産物だ」
「そりゃ、あんまり……」
「君は本当の母でないから僕が(ひが)んでいると思っているんだろう。それならそれで好いさ」
「しかし……」
「君は僕を信用しないか」
「無論信用するさ」
「僕の方が母より高いよ。賢いよ。理由(わけ)が分っているよ。そうして僕の方が母より善人だよ」
 宗近君は黙っている。甲野さんは続けた。――
「母の家を出てくれるなと云うのは、出てくれと云う意味なんだ。財産を取れと云うのは寄こせと云う意味なんだ。世話をして貰いたいと云うのは、世話になるのが(いや)だと云う意味なんだ。――だから僕は表向母の意志に(さから)って、内実は母の希望通にしてやるのさ。――見たまえ、僕が(うち)を出たあとは、母が僕がわるくって出たように云うから、世間もそう信じるから――僕はそれだけの犠牲をあえてして、母や妹のために計ってやるんだ」

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