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虞美人草 十八 (2)

时间: 2021-05-25    进入日语论坛
核心提示: 先生は右の手頸(てくび)へ左の指を三本懸(か)けた。小夜子は浅井のいる事も忘れて、脈をはかる先生の顔ばかり見詰めている。先
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 先生は右の手頸(てくび)へ左の指を三本()けた。小夜子は浅井のいる事も忘れて、脈をはかる先生の顔ばかり見詰めている。先生の顔は(ひげ)と共に日ごとに細長く()せこけて来る。
「どうですか」と気遣(きづか)わし()に聞く。
「少し、早いようだ。やっぱり熱が()れない」と額に少し(しわ)が寄った。先生が熱度を計って、じれったそうに不愉快な顔をするたびに小夜子は悲しくなる。夕立を野中に避けて、(たより)と思う一本杉をありがたしと(こずえ)を見れば稲妻(いなずま)がさす。(こわ)いと云うよりも、年を取った人に気の毒である。行き届かぬ世話から出る疳癪(かんしゃく)なら、機嫌(きげん)の取りようもある。気で勝てぬ病気のためなら孝行の尽しようがない。かりそめの風邪(かぜ)と、当人も思い、自分も()にしなかった昨日今日(きのうきょう)(せき)を、蔭へ廻って聞いて見ると、医者は性質(たち)が善くないと云う。二三日で熱が退()かないと云って焦慮(じれ)るような軽い病症ではあるまい。知らせれば心配する。云わねば気で通す。その上(かん)を起す。この調子で進んで行くと、一年の(のち)には神経が赤裸(あかはだか)になって、空気に触れても飛び上がるかも知れない。――昨夜(ゆうべ)小夜子は眼を合せなかった。
「羽織でも召していらしったら好いでしょう」
 孤堂先生は返事をせずに、
「験温器があるかい。一つ計ってみよう」と云う。小夜子は茶の間へ立つ。
「どうかなすったんですか」と浅井君が無雑作(むぞうさ)に尋ねた。
「いえ、ちっと風邪(かぜ)を引いてね」
「はあ、そうですか。――もう若葉がだいぶ出ましたな」と云った。先生の病気に対してはまるで同情も頓着(とんじゃく)もなかった。病気の源因と、経過と、容体を(くわ)しく聞いて貰おうと思っていた先生は(あて)(はず)れた。
「おい、無いかね。どうした」と次の間を向いて、常よりは大きな声を出す。ついでに咳が二つ出た。
「はい、ただ今」と()さい声が答えた。が験温器を持って出る様子がない。先生は浅井君の方を向いて
「はあ、そうかい」と気のない返事をした。

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