初级阅读（466）

　木を構成する細胞の一つ一つは、寒いところでは寒さに耐えるように、雨の多いところでは湿気に強いように、微妙な仕組みにつくられている。あの小さな細胞の中には、人間の知恵のはるかに及ばない神秘が潜んでいるとみるべきであろう。それを剥いだり切ったり、くっつけたりするだけで、神のつくった微妙な構造までもが改良されると考えたこと自体、近代科学への過信だったかもしれない。

　木を取り扱ってしみじみ感ずることは、木はどんな用途にもそのまま使える優れた材料であるが、その優秀性を数量的に証明することは困難だということである。なぜなら、強さとか保温性とかいったどの物理的・科学的性能を取り上げてみても、木はいずれも中位の成績で、最高位にはならないから、優秀だと証明しにくい。

　だがそれは、抽出した項目について、一番上位のものを最優秀とみなす項目別のタテ割り評価法によったからである。いま見方を変えて、（　ア　）割りの総合的な評価法をとれば、木はどの項目でも上下に偏りのない優れた材料ということになる。木綿も絹も同様で、（　イ　）割評価法で見ると最優秀にはならないが、「ふうあい」までも含めた繊維の総合性で判断すると、こんな優れた繊維はないということは、専門家の誰もが肌を通して感じていることである。総じて生物系の材料というものは、そういう特性を持つもののようである。

　以上に述べたことは、人間の評価法の難しさに通ずるものがある。二、三のタテ割りの試験科目の成績だけで判断することは危険だという意味である。（　★　）今の社会は（　ウ　）割りの軸で切った上位の人たちが指導的地位を占めている。だが実際に世の中を動かしているのは、各軸ごとの成績は中位でもバランスのとれた名もなき人たちである。頭のいい人ももちろん大事だが、バランスのとれた人もまた、会社構成上欠くことのできない要素である。だが今までの評価法では、そういう人たちの価値は評価できない。思うに生物はきわめて複雑な構造を持つものだから、（　エ　）割りだけで評価することには無理があるのである。

　科学技術の急速な進歩で、私たちはすべての対象を物理的・科学的に分析すれば、それで事は足りると考えてｋふぃた嫌いがあった。だが生命を持ったものは、たとえ木のような素朴な材料であっても、無機質のものとは違うもう一つの神秘な次元を持っているのである。いわんや人間においてをやである。いま私たちにとって大切なことは、物から人に視点を移して、発想の転換をはかることであろう。

　木はそのことを黙って教えてくれているように、私は思う。

（小原二郎「木の文化をさぐる」より）

 

1、「神の作った微妙な構造」とあるが、それは具体的にはどんなことを指すか。

①木も人も同じように複雑な細胞の組み合わせから作られていること。

②木の細胞が寒いところでは寒さに耐えるように、雨の多いところでは湿気に強いように作られていること。

③小さな細胞の中に、人間の知恵がはるかに及ばない神秘が潜んでいること。

④木はどんな用途にもそのまま使える優れた特質を備えていること。

 

2、ア～エに入る語の適当な組み合わせはどれか。

①ア：タテ　イ：タテ　ウ：ヨコ　エ：タテ

②ア：ヨコ　イ：ヨコ　ウ：ヨコ　エ：タテ

③ア：ヨコ　イ：タテ　ウ：ヨコ　エ：タテ

④ア：ヨコ　イ：タテ　ウ：タテ　エ：タテ

 

3、（　★　）に入るものとして、最も適当なのはどれか。

①てっきり

②確かに

③きっと

④さすがに

 

4、「木はどんな用途にも…、その優秀性を数量的に証明することは困難だ」とあるが、どうすれば木の持つ優秀さを知ることができるか。

①物理的・化学的な分析

②各項目の平均値からの分析

③項目別のタテ割りの評価

④ヨコ割りの総合的な評価

 

5、「いま私たちにとって大切なことは、物から人に視点を移して、発想の転換をはかることであろう」とあるが、筆者は具体的には何が言いたいのか。

①近代科学の方法論では、木や生物系の材料の優れた特性は証明できない。

②この社会では頭のいい人よりも、バランスが取れた人のほうが大切だ。

③人を二、三のタテ割りの試験科目の成績だけで判断する考えを改めるべきだ。

④タテ割り評価法よりもヨコ割りの総合的な評価法の方法が優れている。

 

6、「科学技術の急速な進歩で、私たちはすべての対象を物理的・化学的に分析すれば、それで事は足りると考えてきた嫌いがあった」とあるが、それを一言で表す語はどれか。

①細胞の微妙な仕組み

②近代科学への過信

③数量的な優秀性の証明

④生物の持つ神秘な次元