読解.文法
(200点70分)
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最も適当なものを一つ選びなさい。
私が半年ほど入院した、同じ病室に、安全に寝たきり(注1)になっていたKさんという人がいました。彼の毎日の楽しみは、看護婦さんに「息子(注2)から電話があったでしょうか」と尋ね、「あったわよ」と言う看護婦さんの返事を聞くことでした。当初、私は、①オヤジ(注3)の病状を毎日のように電話で尋ねてくるいい息子さんだなぁーと感心しながら、Kさんと看護婦さんのやりとりを、ベッドの上で眺めていました。
ところが、②それがうそであることが、しばらくして分かりました。息子さんからの電話はなく、看護婦さん達が、かかってきたかのように演じていたのです。それはKさんを励まし、希望をもたせるために、③看護婦さん達がついた精いっぱいのやさしいうそでした。そして、悲しいうそでした。というのは、Kさんが入院した当初は、本当にその息子さんから毎日のように病院に電話があったそうです。トラックの運転手をしていた彼は、仕事で全国を走り回っていたため、直接、病院に見舞いに来られなかったのです。入院して以来、Kさんは何度か危険な状態になったことがあったそうです。④そのたびに、看護婦さんが、「息子さんから電話がかかっているのよ」と声をかけると、不思議ともち直したというのです。
そんなある日、病院に悲しい電話が入りました。交通事故で、Kさんの息子さんが亡くなったという知らせでした。もちろんKさんの病状を心配して、⑤そのことはしらせないことにしたそうです。そしてその日から、看護婦さん達の⑥幻の電話が始まったのだそうです。
(中略)
しかし、そんな看護婦さ達のうそも長く続きませんでした。Kさんは日ごとに容体(注4)が悪化し、別れが近づいたころは、まるで看護婦さん達の幻の電話を知っていたかのように、ただ「ありがとう、ありがとう」を繰り返すばかりでした。Kさんの遺体(注5)が病室を出て、廊下をエレベーターに向かう途中、ナース·ステーションの前を通り過ぎたところで、突然「リーンリーン」という電話のベルが鳴り、一瞬、みんな、そこに⑦立ち止ってしましました。そして鳴り響くそのベルの音を聞きながら、看護婦さん達がボロボロ涙を流していた光景を、10年近くたった今でも鮮明に思い出します。
(笹本新平「看護婦さん、電話ありましたか?」「第7回 NTTふれあいトーク大賞100選」NTT出版による)
(注1)寝たきり:病気などのために、起きて活動できなくなった状態
(注2)息子:息子(むすこ)
(注3)オヤジ:父親
(注4)容体:病気の状態
(注5)遺体:死体
(注6)ナース·ステーション:看護婦の部屋
問1 ①「オヤジ」とはだれか。
1.Kさん 2.Kさんの父親 3.筆者 4.筆者の父親
問2 ②「それがうそであることが、しばらくして分かりました」とあるが、何がうそなのか。
1.Kさんの息子が病院に電話をかけたこと
2.Kさんが息子からの電話を楽しみにしていたこと
3.筆者と同じ病室にKさんがいたこと
4.筆者がKさんの息子をいい息子だと思ったこと
問3 ③「看護婦さん達がついた精いっぱいのやさしいうそ」とあるが、看護婦達がうそをついたのはなぜだと考えられるか。
1.うそをつくことが楽しかったから
2.筆者がうそをつくように頼んだから
3.Kさんの息子に病院に来てもらいたいから
4.Kさん少しでも元気になってほしいから
問4 ④「そのたびに」とあるが、この場合、次のどの表現に最も近いか。
1.Kさんの息子から電話があったときはいつも
2.Kさんの病状がよくなりかけたときはいつも
3.Kさんの病状が非常に悪くなったときはいつも
4.Kさんの息子が見舞いに来られなかったときはいつも
問5 ⑤「そのこと」は、何を指すか。
1.Kさんの病気が悪いこと
2.Kさんの息子が死んだこと
3.Kさんにうそをついていたこと
4.Kさんの病状を心配していること
問6 ⑥「幻の電話」とは、どんな電話か。
1.本当はかけることができない電話
2.本当はかかってきていない電話
3.本当はかけてはいけない電話
4.本当はかけたくない電話
問7 ⑥「幻の電話」が始まったのは、いつからか。
1.Kさんが入院した時から
2.Kさんが亡くなった時から
3.Kさんの息子が亡くなった時から
4.Kさんのむぅこが忙しくなった時から
問 ⑦「立ち止ってしまいました」とあるが、なぜだと考えられるか。
1.「ありがとう」とお礼を言われたから
2.エレベーターがまだ来ていなかったから
3.電話機がないのみ電話のベルが鳴ったから
4.Kさんの息子からの電話のように思えたから
問題Ⅱ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最も適当なものを一つ選びなさい。
「道具の作製」
飼育(注1)されているチンパンジーが道具をつくることは前からわかっていた。有名なものに1914年行われたケーラー(W.Kkoheler)の実験がある。
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チンパンジーの手のとどかない柵の向こうにバナナをおき、手をとどくところに棒をおいておくと、棒を使ってバナナをとりよせることはたいがいのものがすぐできる。棒がないときは木の枝を折り取ってそれでひきよせつことのできるものもいる。このチンパンジーのなまえはズルタンといった。
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今度はズルタンに丈夫で中空(注2)な葦(注3)の茎(注4)の棒を太いものと細いものと2本がつながった。①とたんにとんでいってバナナをひきよせはじめた。2本の棒をつなぐことにより、有効な道具がつくれたわけである。(中略)
-------------------(2)-------------------
もう一つの実験がある。壁はつるつるでのぼることができないへやのす隅に、一辺50センチぐらいの大きさの木箱をおいておく。バナナを手のとどかない高いところに吊しておく。ズルタンはとび上がってとどかないとわかると、箱をひきずってきてこの上からとび上がり、バナナをとることができた。次にさらに高いところにバナナを吊し、箱の数をまして積み上げないととどかないようにする。これは初めはなかなか難しかったが、だんだんできるようになった。ほかのチンパンジーも見習ってできるようになり、グランデという名のチンパンジーは四つまで積み上げるのに成功した。この積み上げられた箱は、ある目的のためにつくられた一種の建造物であると考えられる。
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箱の実験においてはこのほかに面白いことが二つ観察されている。一つは箱一つの実験でなかなか解決法がみつからなかったときに、実験者がまったく考えていなかったうまい解決法である。チンパンイーに②臨機応変(注5)の才能のあることを示している。
いま一つは③協同作業にみえるものが現れたことである。箱を積み上げることを知っているもの同士があつまると、われがち(注6)に箱を積もうとする。これは協同作業ではなく箱が崩れ落ちる結果となる。ただ、一度だけ離れたところにおいてあった大きな檻(注7)をグランデが使おうとして、うごかすことができなかったことがある。するとランというチンパンジーとズルタンとがかけよってきて、一頭ではうごかなかった檻を三頭でうまくうごかして目的のバナナの近くへ運んでいった。ただし、まだ真下へこないうちにズルタンが檻にとびのり、そこから跳躍してバナナをとってしまい、ほかの二頭はなにもとれない結果に終わった。これは真の協同作業というよりは、グランデがなにをしようとしているかをほかの二頭がただちに理解し、それぞれが自分自身のためにこれを運んだのであろう。
(木村賛「サルとヒトと」サイエンス社による)
(注1)飼育する:飼う
(注2)中空な:中が空の
(注3)葦:植物の名前
(注4)茎:
(注5)臨機応変:そのときの状況に合わせてやり方を変えること
(注6)われがちに:他のものよりも先に
(注7)檻:動物が逃げないように入れておくもの
2.2本の棒がつながると、すぐに
3.2本の棒で遊び始めると、すぐに
4.2本の棒があたえられると、すぐに
2.箱を積み上げたこと
3.人をつれていったこと
4.2本の棒をつないだこと
2.檻をうごかすこと
3.箱をひきずること
4.檻にとびのること
2.実験者を見習って行動する
3.他のチンパンジーと相談し、協同作業をする
4.他のチンパンジーの考えていることを理解する
【問い】筆者の考えに最も近いものは、どれか。
2.大人になるまでスポーツをしないほうがよ
3.できるだけ早くからスポーツを始めたほうがよい
4.9、10歳までは外遊びを十分にするほうがよい
(2) 幼い子どもに弟や妹ができると、赤ん坊に戻ったように振る舞うことがある。それまで自分の世話だけをしてくれていた母親が、生まれたばかりの弟や妹の世話で忙しくなる。赤ん坊に戻って、自分も同じように母親に世話をしてもらいたいと思うのだろう。
2.母親は生まれたばかりの弟や妹の世話で忙しいこと
3.母親は子どもが不安に思っているのを知っていること
4.母親はどの子も同じように育てているつもりであること
(注2)言葉続々として従う:言葉が次々出てくること
【問い】この文章の内容に最も近いものは、どれか。
2.本当に考えていれば、言葉にに表す必要はない。
3.いい考えというのは、言葉に表せないものだ。
4.言葉に表せるのは、たいていつまらない考えである。
a 家族でもきちんと挨拶をしましょう
b 何はおいても「おはようございます
c 挨拶言葉にひと言つけ加えて
d 目は心を伝えます
2.a-② b-① c-③ d-④
3.a-① b-② c-④ d-③
4.a-② b-③ c-④ d-①