江戸時代、伊藤仁斎によって唱えられた儒学の一派。仁斎の学問手法は、当時支配的だった朱子学的経典解釈を廃した。朱子学は学問体系としては非常に整ってはいたが、その成立過程に流入した禅学や老荘思想といった非儒教的な思想のために経書の解釈において偏りがあった。仁斎はそのような要素を儒学にとって不純なものとみなし、いわば実証主義的な方法を用いた。このような傾向は同時代の儒学研究に共通にみられるものである。仁斎は朱子学の「理」の思想に反して、「情」を 積極的に価値づけした。客観的でよそよそしい理屈よりも人間的で血液の通った心情を信頼している。四端の心や性善説を唱えた。
8.古義学派