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猫の事件16

时间: 2018-03-31    进入日语论坛
核心提示:未完成交情曲「待っていらしてね」「本当に戻って来てくれるんだね」「ええ」「何時ごろ?」「お座敷が終って着がえをしてから。
(单词翻译:双击或拖选)
 未完成交情曲
 
 
「待っていらしてね」
「本当に戻って来てくれるんだね」
「ええ……」
「何時ごろ?」
「お座敷が終って着がえをしてから。十二時ごろかしら」
「よし。きっとだぞ」
「ええ」
 雪子は山田氏の手を握り、小指をからませてから部屋の外へ消えて行った。甘ったるい残り香が鼻をくすぐる。山田氏は床柱に背をあずけたまま、
「わるくないコだ」
 と独りごちた。思わず口もとがほころびてしまう。
 雪子というのは本当の名前だろうか。それともお座敷だけのものだろうか。肌はその名の通り雪のように白い。こめかみのあたりにおくれ毛が二、三本ほつれて静脈が青く浮き出している。いやでも全身の白さを連想しないわけにいかない。体の芯がジーンと熱く火照《ほて》った。
 山田氏は結婚して五年になるが浮気をするのは今夜が初めてのこと。遊びたい気持ちは充分過ぎるほどあったのだが、女房がこわくてとてもその気になれなかった。
 世話する人があって社長の姪と結婚したのが身の不運。この細君がひどいやきもちやきで、山田氏が隣の奥さんと言葉をかわしただけで眼尻がピクピクと痙攣《けいれん》してヒステリィの発作が始まる。ポケットからクラブのマッチが出てきたときなんか、なんらやましいところもないのにギュウギュウ詰問され、離婚をするのしないのと大騒ぎが起きたほどだ。財布のひもをしっかりと握りしめ、山田氏の行動を逐一調査をしては、あれこれ干渉する。
 だから結婚一年ですっかり嫌気がさしてしまい、浮気の虫がムズムズと首をもちあげた。だが弱気な山田氏にはどうしてもそれを決行する勇気が湧かなかった。
 それというのも山田氏には困った癖がある。寝言を言うのである。どこかで浮気をしたら、その女の名前をきっと夢の中で叫んでしまうだろう。それを聞いたら、あの嫉妬深い女房がただですましてくれるはずがない。さりとて寝言は無意識で言うことだから抑制する方法もない。
 しかし人生なにごとも窮すれば通ずのたとえ通り、ある日ポンとうまい考えが浮かんだ。
「そうだ。女房と同じ名前の女と浮気をすればいいんだ」
 細君の名は由紀子である。こんな名前ならば、ちょっとこまめに捜して歩けばどこにでも同じ名があるだろう。浮気のあとで夢を見て、
「ユキコ、ユキコ、ああ、この白い肌」
 そう叫んだとしても、これならば疑われるはずがない。いや、待てよ。猜疑心の強い女のことだから、
「なによ。私、色なんか白くないわよ」
 くらいのことは言うかもしれないが、それだって、
「いや、夢の中でキミの肌がものすごく白く見えたんだから」
 と反論すればそれまでのことだ。とにかく�ユキコさん�さえ見つければそれでよろしい。
 折しもめぐって来たのが出張の機会。日程をきりつめへそくりを握ってやって来たのがこの温泉郷。番頭にチップをはずんで頼んでみると、果せるかな雪子という名の芸者がいて、話はトントンとまとまった。雪子さんは器量よし。性格も穏和で、すれたところが少しもない。二人で酒を汲みかわし、あとは彼女の仕事が終わるのを待って自由恋愛の運び……。
 もし女房の由紀子がこれを知ったらどんなに怒り狂うことか、それを思うと山田氏はひどく滅入ってしまうのだが、もう賽《さい》は投げられたのだ。できるだけそのことは考えないようにして残りの酒を傾け雪子の到来を待つことにした。
 まだ夜半までにはしばらく時間があった。それまでのひととき、ちょっと体を休めておこうと思い、布団の上にゴロリと寝転がった山田氏、そのうちにウトウトと眠ってしまった。
 何時間たったのだろうか? 山田氏は眼をさまし隣に手を滑らせてみた。手には冷たいシーツの感触が伝わるばかり……あわてて腕時計を見ると午前四時をまわっている。
「しまった!」
 と思ったがもう遅い。
 ひどいじゃないか。揺り起こしてくれればいいものを……。いや、そうじゃあないんだ。調子のいいことを言ってたが初めから来る気はなかったんだ。千載一遇のチャンスだったのに。ああ、なんていうことだ。
 怒りとくやしさでまんじりともせず夜を明かした山田氏は、早々に床を抜け出して番頭を捜した。
「番頭さん。ひどいじゃないか。昨日の芸者さん、あとできっと遊びに来るって約束したのに……」
 すると番頭が、
「お客さんこそ……。雪ちゃんが怒ってましたよ」
「…………」
「十二時過ぎにお客さんのお部屋へ行ったとたん�ユキコ、おまえなんかに用はない。帰れ。いい気になるな、このスベタ�って、いきなり怒鳴られたって」
 山田氏は想い出した。昨夜妻の�由紀子�に毒づいている夢を見たことを……。
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