日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 阿刀田高 » 正文

猫の事件22

时间: 2018-03-31    进入日语论坛
核心提示:風邪とサラリーマン その夜、二匹の風邪のビールスが風に揺られて町をさまよっていた。雲は凍てつき、今にも雪の降り出しそうな
(单词翻译:双击或拖选)
 風邪とサラリーマン
 
 
 その夜、二匹の風邪のビールスが風に揺られて町をさまよっていた。雲は凍てつき、今にも雪の降り出しそうな寒い夜だった。
「寒いな。だれか人間の体の中にもぐりこもうぜ」
「うん。このままじゃこごえ死んでしまうぜ」
 そうつぶやきあっているとき、二人のサラリーマンが町角に現われた。
「あれにしよう」
「あんまりいい男じゃないな」
「より好みをしているときじゃないぜ」
「まあ、そうだ。二人ともいいあんばいに疲れているらしい」
 二匹は風に揺られて男たちの口もとに近づき、二人が息を吸った瞬間に、スイと鼻から肺へともぐり込んだ。
 男たちの名はマジメ氏とナマケ氏。同じ会社に勤めるサラリーマンだった。
 マジメ氏はその名前の通り生真面目な男で、この日も夜遅くまで残業をし社宅に帰る途中ちょっと駅前の居酒屋に立ち寄った。体は綿のように疲れていた。
 一方、ナマケ氏は退社時刻を待ちかねるようにして会社を出て、そのまま麻雀屋へ足を向けた。それがナマケ氏の日課だった。昨夜も一昨夜も十二時過ぎまで雀卓を囲んだ。
「たまには少し早めにきりあげようぜ」
「ああ、そうしよう」
 十時過ぎに麻雀屋を出て、駅前の居酒屋に立ち寄った。そこでマジメ氏に出合った。
「ぽつぽつ帰ろうか」
「ああ、オレも少し疲れた」
「麻雀も結構疲れるものらしいな」
「うん。仕事より疲れるぜ」
 店を出て大通りの角にさしかかったとき、折あしく二匹のビールスとめぐりあったのだった。
 
「あなた、どうなさったの。もう七時半よ」
 マジメ氏の奥さんが声をかけた。いつもならとうに起きているはずの夫が、まだ布団の中にいる。
「頭が痛い」
「あら、いやだわ。風邪かしら。熱があるの?」
「体温計をくれ」
 計ってみると、三十八度を越えている。
「風邪よ」
「そうらしい。体のふしぶしが痛い」
「休んだら」
「そうもいかんさ。仕事が山のようにたまっているんだ」
「でも、体の調子のわるいときくらい休んだほうがいいわよ」
「風邪くらいでいちいち休んでいられるか。勤務評定にも響くしな。風邪薬を持って来てくれ」
「大丈夫かしら」
「グズグズ言うな。行くと決めたら行くんだから」
 マジメ氏は身を起こし、屈伸運動をひとつしてから布団を離れた。
 たしかに体調はわるい。しかし仕事は休めない。昨日も課長から「マジメ君は頑張るなあ」とほめられたばかりだった。勤務評定は入社以来ずっとAランクだ。一番いそがしい時期に風邪くらいで休暇をとるわけにはいかない。マジメ氏は無理を承知で会社へ向かった。
 ——オレの誠意はきっと認められるだろう——
 と信じながら。
 
 同じ頃、ナマケ氏は自宅のベッドに身を横たえていた。頭が痛い。体がだるい。熱もあるらしい。
「あなた、どうするの。また休むの?」
「ああ、風邪を引いたらしい。こんなとき会社へ行ったって仕事にならん」
「もう年次休暇はないんでしょ」
「病気には勝てんよ」
 入社以来勤務評定はずっとCランクだ。今期の査定もCだろう。今さら努力することもない。ナマケ氏は布団をかぶって目を閉じた。
 
 マジメ氏の体に入ったビールスは体内で活発な活動を開始し、どんどん子孫を増やした。マジメ氏が体を酷使すればするほど繁殖はやりやすい。子孫はマジメ氏の口から鼻から飛び出して周囲の人間たちの体の中に新しい住まいを見つけた。
 おかげでマジメ氏の課では、十人のうち九人までが風邪を引き仕事の能率はいちじるしく低下した。
 一方、ナマケ氏の体に宿ったビールスはと言えば、白血球たちの激しい抵抗にあって繁殖もままならない。多少子孫を増やしてみたところで、ナマケ氏が家でのんびりと寝ているので、だれかの体に移住することもできない。一族はそのまま死に絶えるよりほかになかった。ナマケ氏の課ではだれも風邪を引くこともなく、仕事は順調に進んだ。
 
 日ならずして、勤務評定が始まった。マジメ氏はA、ナマケ氏はC、いつもと変らぬ査定だった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%