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三角のあたま43

时间: 2018-03-31    进入日语论坛
核心提示:古文書見聞録 講演で熊本市へ行った。 図書館職員養成所時代の友人Tさんが熊本大学の図書館に勤務していて、「せっかくだから
(单词翻译:双击或拖选)
 古文書見聞録
 
 
 講演で熊本市へ行った。
 
 図書館職員養成所時代の友人Tさんが熊本大学の図書館に勤務していて、
 
「せっかくだから、ちょっと寄ってくれよ。顔も見たいし、おもしろい史料もある」
 
 少々窮屈なスケジュールではあったけれど、二時間ほどをあけて黒髪地区のキャンパスを訪ねた。
 
 史料は細川家の古文書で、私はほとんど読むこともできないのだが、専門司書のKさんが読んで内容を説明してくれた。
 
 一つは宮本武蔵のこと。
 
 武蔵と小次郎は、のちに巌《がん》流《りゆう》島《じま》と呼ばれる小島で試合をすることになるのだが、そのときの条件は双方とも配下門弟どもを伴なわず、たった一人で来ること。小次郎は約束通り一人で現われたが、武蔵のほうには数人の配下が同道して、この連中が倒れた小次郎を寄ってたかって殺してしまった、と、そんな内容の記録だった。吉川英治その他の筆による巌流島の決闘とは相当にちがっている。
 
 題《だい》簽《せん》には沼田家記……。
 
「権威のあるものですか」
 
「ええ。一応は信用のおけるものです」
 
 この件については、何か月か前に朝日新聞の記事で読んだような覚えがある。
 
「出どころは、ここなんです」
 
「そうだったんですか」
 
 かならずしも新史料の発見ということではなく、宮本武蔵について作品を書く人なら、ほとんどが知っていておかしくない程度の記録らしい。だが、
 
「やっぱり武蔵のイメージが崩れるから、見て見ぬふりをしているんじゃないでしょうか。私はわかりませんけど」
 
 という解説であった。
 
 私は時代小説を書かないし、このあたりの史料の価値について、とやかく言う資格はない。
 
 ——こんなこともあったかもしれないな——
 
 遠い時代の事実をさぐるのは、どの道むつかしい。
 
 
 
 もう一つは〓“阿部一族〓”について。これも細川家にまつわる史料である。
 
 私が森鴎外の〓“阿部一族〓”を読んだのは、ずいぶん昔……おそらく高校生の頃だろう。あらかた忘れた。
 
 ——たしか細川の殿様が死んで、おもだった家臣が殉死することになったんだ。阿部ナントカ右衛門は死にきれず、あとになって死んだけれど、藩内の不評をかい、結局一族みんなが死ぬことになる。ちがったかなあ——
 
 くらいの記憶である。
 
 私の高校生時代と言えば、戦後まだ日が浅い。戦争の第一番の責任者東條英機は自殺をしそこねて裁判に身をさらすことになり、それについて国民の感情はあまりかんばしいものではなかった。私の頭の中でも、殉死しそこねた阿部ナントカ右衛門と自殺しそこねた東條英機とが少し重なっていたような気がする。
 
 以来三十有余年、細川家の古文書を指し示され、
 
「ちょっとちがうような気もするんですけどね」
 
 と、Kさんに言われても、なかなか〓“阿部一族〓”のことが思い出せない。
 
 話を聞けば死んだ殿様は細川忠利。奉行の公式記録に殿の死後数日のうちに殉死した者の名が連ねて記され、その中に阿部弥一右衛門の名も、他の者と変らず、同じように列記されている。
 
「なるほど」
 
 よくはわからないけれど、相づちを打った。阿部ナントカ右衛門は弥一右衛門という名だった。
 
「少なくともこの文書で見る限り弥一右衛門の死は鴎外の〓“阿部一族〓”のようには読めないんです」
 
「はあ?」
 
「弥一右衛門の死後、知行を一族にバラバラに分けたことは、ここに書いてありますし、あ、それから、ここに鷹《たか》が死んだことも書いてあります」
 
「はあ?」
 
 私のほうはいたって心もとなく、せっかくの示唆にうまく応えることができなかった。
 
 
 
 東京に帰って早速〓“阿部一族〓”を読み返してみた。
 
 少々自慢めくかもしれないけれど、私は一度読んだ小説のストーリイを、かなりよく覚えているほうである。いま小説家として生きている、その才能の淵《えん》源《げん》をたずねてみると、一つにはこのせいではないかと思うほどである。
 
 三十数年前にたった一度読んだ〓“阿部一族〓”について、二二四ページに記した程度のストーリイを覚えているのは、よく覚えているほうなのか、それともよく覚えていないほうなのか。公平に判断して、私はむしろ、
 
 ——よく覚えていたな——
 
 と思うほうにくみしたい。
 
 それはともかく、いま読み返すと、私の曖《あい》昧《まい》な記憶とはかなりちがっている。
 
 殉死というものは、だれでもができることではなかったらしい。殿の生前から許しをえておいた者だけが死んでよい。
 
 みんな武士なのだから、死というものについては一定の覚悟ができている。殿のために死ぬのなら、いささかも命など惜しくない。
 
 だが、当然殉死をしてよい立場にありながら、お許しをえられなかった人もいる。それが鴎外の〓“阿部一族〓”の中の弥一右衛門であって、そこが一番肝《かん》腎《じん》なところ。そこから生じた悲劇が〓“阿部一族〓”の物語であり、高校生の私は、それを読み落としていた。少なくとも記憶には留めてなかった。〓“知行をバラバラに分けた〓”ことや〓“鷹が死んだ〓”ことも、鴎外の作品を読めばなんのことか、すぐにわかる。
 
 ——小説を読んでから熊本大学へ行くべきだったなあ——
 
 と思わないでもなかった。
 
 森鴎外は史料に関しては、きわめて正確な作家であって〓“阿部一族〓”を書くに当たっても、充分な調査と推理があったにちがいない。
 
 ——阿部弥一右衛門の死は、本当のところどんな死だったのか——
 
 作品の根幹にかかわることではあるけれど、これも私に判断のできることではない。
 
 ——天草へも行ってないし——
 
 いつかもう一度熊本へ訪ねて行ってみよう。
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