「ねえ、あなた、うちの若い甥は心地よいベッドがあるし、手に素晴らしいお金をもってるし、砕くたくさんのパンももっていますよ。それに私と同じくらいたくさんのパッチもありますよ。」と叔父さんは答えて、話しながらズボンのパッチ(つぎはぎ)をたたきました。しかしその地方では小さな土地の区画もまたパッチと呼ばれていました。「お手数をおかけしますが私と一緒に家へ来て見れば、すぐに私が言った通りだとわかりますよ。」すると欲張りはこの良い機会を失いたくなくて、「そういうことなら、これ以上結婚に反対して言うことはないよ。」と言いました。
それで決められた日取りで結婚式が祝われました。そして若い妻が花婿の財産を見ようと家から外へ出たとき、ハンスは礼服を脱ぎ、パッチのついた仕事着を着て、「上等な服をだめにするかもしれないからな。」と言いました。それから一緒にでかけて、ブドウ畑が見えたり畑や草地が区切られているところをどこでも指差し、仕事着の大小のパッチをたたきながら、「そのパッチはおれので、それもそうだ。おまえ、よく見てごらんよ。」と、妻が広い土地を見ないで、自分の服を、それが自分のものだから、見るべきだという意味で、ハンスは言いました。
「あなたも結婚式に出たの?」「ああ、確かにでたよ。正装してね。頭飾りは雪だったけど、お日様がでると溶けちゃったね。上着はクモの巣でできていて、イバラを通ったら破れてとれちゃった。靴はガラスでできていたんだが、石の上を歩いたらカチンと音がして、2つにわれちゃったよ。」
(注)俗語表現で「裕福なのかね」の意味らしい