十月二十七日。
朝窓をあけたら、黄色い初冬の草の上にまだらな淡雪があった。
杉林の中の小さいステーション。わきの丘の上に青と赤、ペンキの色あざやかな農業機械が幾台も並んでいる。古い土地がいかに新しい土地となりつつあるか。ソヴェトが五ヵ年計画で四〇〇パーセント増そうとしている農業機械のこれは現実的な見本である。
列車の窓ガラスが緑になってしまうぐらい、松ばかり。パッと展望が開いた。地平線まで密林が伐採されている。高圧線のヤグラが一定の間隔をおいてかなたへ。――いそいでもう一方を見たら、電線は鉄道線路を越えて、再びヒンデンブルグの前髪のような黒い密林のかなたへ遠くツグミの群がとび立った。今シベリアを寂しい曠野と誰が云うことが出来よう。
エカテリンブルグ=スウェルドロフスキーを通過。モスクワ時間と二時間の差。進んだのだ。列車は石造ステーションの二階にあたるような高いところに止る。駅の下、街に二台幌型フォードがあった。列車の中から見晴らせるだけのところにでも、いくつか新しい工場が建ちかけている。ウラル地方はこのスウェルドロフスキーを中心として、СССРの大切な石炭生産地、農業用トラクター生産地だ。一九三〇年、アメリカのキャピタリストがウラルという名をきいて連想するのは、もう熊狩ではない。
灰色を帯びた柔かい水色の空。旧市街はその下に午後のうっすり寒い光を照りかえしている。足場。盛に積まれつつある煉瓦。