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怪指纹:站立的尸首

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:立上る骸骨(がいこつ) 小池助手は、名探偵とも云われる人の、余りの子供らしさに、呆気(あっけ)にとられたが、ふと気がつくと、
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立上る骸骨(がいこつ)


 小池助手は、名探偵とも云われる人の、余りの子供らしさに、呆気(あっけ)にとられたが、ふと気がつくと、それには何か訳がありそうであった。博士は非常に実際的な規則正しい性格で、意味もなく見世物なんかへ入る人ではなかった。
「若しかすると、先生はこの化物屋敷の中で、妙子さんを探そうというのではないかしら」
 この想像が、小池助手をギョッとさせた。見せびらかすことの好きな、芝居がかりの殺人鬼のことだ。(あるい)はこの想像が当っているかも知れない。妙子さんを運んだ塵芥(ごみ)車はすぐ近所の神社の境内に、空っぽにして捨ててあったのだ。まだ薄暗い早朝とは云え、まさか若い女を抱いて遠くまで逃げることは出来まい、どちらの方角も町続きだから、やがてはげしくなる人通りの中を、怪しまれないで逃げおおせるものではない。という風に考えて来ると、いかに突飛(とっぴ)に見えようとも、博士の想像は、どうやら当っているらしくも思われる。
 博士が木戸へ近づいて入場料を払うと、木戸番の若者は妙な笑い顔で注意を与えた。
「中で紙札を二度渡しますからね。出口で返して下さい。それが無事に通り抜けたという証拠になるのですよ。二枚揃ってなくちゃいけませんよ」
 二人はそれを聞き流して木戸を入って行った。テント張りとは云え、天井はすっかり厚い黒布で(おお)ってあるので、一歩場内に入ると、夜も同然の暗さであった。その薄暗い中に、見通しも利かぬ竹藪の迷路が続いているのだ。
 或は右に或は左に、或は()き或は戻り、やっと人一人通れる程の細道が、何町となくつづいている。全体の面積はさほどではなくても、往きつ戻りつの道の長さは驚くばかりである。
 道が分れている箇所に出ると、小池助手はどちらを選ぼうかと迷った。若し間違った道に入り込んでしまったら、いつまでもどうどう(めぐ)りをするばかりで、(はて)しがないからである。
「君、迷路の歩き方を知っているかい。それはね、右なら右の手を、藪の(かき)から離さないで、どこまでも歩いて行くんだ。そうすると、仮令(たとえ)無駄な袋小路へ入っても、二度と同じ間違いを繰り返すことがない。出鱈目(でたらめ)に歩くよりも、結局はずっと早く出られるのだよ」
 博士は説明しながら、右手で竹藪を伝って、先に立って、グングンと歩いて行く。小池助手は、成程(なるほど)そういうものかなあと思いながら、そのあとを追うのである。
 長い竹藪の間々(あいだあいだ)には、ありとあらゆる魑魅魍魎(ちみもうりょう)が、ほのかな隠し電燈の光を受けて、或は(よこた)わり、或は(たたず)み、或は(うずく)まり、或は空からぶら下っていた。あるものはからくり仕掛けで、ゆっくりと動いていた。古池になぞらえた水溜(みずたまり)の中から、痩せ細った手がニューッと出て、それから徐々に、お岩のように片目のつぶれた女の幽霊が現われ、見ていると、そのまんまるに飛び出した目から、タラタラと真赤な血が、とめどもなく流れ出すという、念の入った仕掛けもあった。
 或時(あるとき)はまた、見物は闇の通路で、何かしらグニャグニャした大きなものを踏んづけるのである。ギョッとして目をこらすと、何とも形容の出来ない、鼠色のいやらしいものが地上に横わっているのだ。どうやら顔らしい部分や、手足らしい部分が見えるけれど、無論人間ではない。と云って動物でもない。何かしら、ゾーッとするような、えたいの知れぬ物体なのだ。
 ある場所では、(しん)に迫った首吊り女が、見物の頭の上から、スーッとその肩に負ぶさって、両手でしがみつき、いやな声で笑い出す仕掛けもあった。
 だが、それらの人形が、どれほど巧みに、いやらしく出来ていたとしても、屈強の男を走らせる程の恐怖は感じられなかった。よく見ていると滑稽(こっけい)でこそあれ、(しん)から怖いというようなものではなかった。
「先生、つまらないじゃありませんか。ちっとも怖くなんかありゃしない。どうしてこんなものを見て逃げ出すんでしょうね」
「マア、終りまで見なければ分らないよ。それに僕達はただ慰みに入って来たんじゃない。大事な探しものがあるんだ。人形一つでも見逃す訳には行かないよ」
 二人はそんなことを低声(こごえ)に云い交しながら、お化けや幽霊に出くわすとは[#「出くわすとは」はママ]、立止り立止り、歩いている内に、やがて竹藪の迷路を抜けて、黒板塀(くろいたべい)のようなものに突き当った。
「オヤ、また袋小路かな。イヤイヤ、そうじゃない。ここに小さな(くぐ)り戸がある。開けてお入りくださいと、貼り紙がしてある」
 如何にも、黒板塀の上に、ひどく下手な字の貼り紙が見える。
「君、少し凄くなって来たじゃないか。真暗な中で戸を開けて入るというのは、何だか気味の悪いものだね」
「そうですね。一人きりだったら、一寸いやな気持がするかも知れませんね」
 しかし、二人はまだ心の中ではクスクス笑っていた。なんてこけおどしな真似をするんだろうと、おかしくて仕方がなかった。
 博士を先に、二人は戸を開いて中に入った。だが、そこには別に恐ろしいものがいる訳ではなく、ただ文目(あやめ)もわかぬ闇があるばかりであった。天井も左右の壁も、板を重ねた上に黒布が張ってあるらしく、針の先程の光もささぬ如法暗夜(にょほうあんや)である。目の前に何かムラムラと煙のようなものが動いたり、ネオンサインのように鮮かな青や赤の環が現われたり消えたりした。造りものの化物などよりは、この網膜のいたずらの方が、(かえ)って不気味な程であった。
「こりゃ暗いですね。歩けやしない」
 二人は手を壁に当てて、足で地面をさぐりながらあるいて行った。
「昔パノラマという見世物があってね、そのパノラマへ入る通路が、やっぱりこんなだったよ。この闇が、つまり現実世界との縁を断つ仕掛けなんだ。そうして置いて、全く別の夢の世界を見せようというのだね。パノラマの発明者は、うまく人間の心理を掴んでいた」
 手さぐりで五間(ごけん)程も進むと、左側の闇に、何か白いものが感じられた。やっぱり網膜のいたずらかと疑ったが、どうもそうではないらしい。何かが蹲まっているのだ。
「ナアンだ。骸骨ですよ。骸骨が胡坐(あぐら)をかいているんですよ」
 小池はその側に近づいて、骨格に触って見た。絵ではない。人間が縫包(ぬいぐるみ)を着ているのでもない。本物の骨格模型である。
 何も見えぬ黒暗々の中に、この世のたった一つの生きもののように、白い骨が浮き上って、ポツンと胡坐をかいている有様は、怖いというよりも、異様に謎めいて不気味であった。
 だが、二人が立止って見ているうちに、妙なことが起った。骸骨がスーッと立上ったのである。そして、いきなり右手を二人の方へ突き出した。その手に紙の束を持っているのが、どうやら見分けられた。
 と同時に、骸骨の口がパックリと開いて、カチカチと歯を噛み合した。
 妙な嗄れ声で笑っているのだ。どこかにラウドスピーカーがあって、遠くから声を聞かせているのに違いない。
 それが木戸番の云った証拠の紙札であることは、すぐに分ったが、気の弱いものは、黒暗々の中で、骸骨の手からそれを受取る勇気がなくて、逃げ出してしまうかも知れない。()わばこれが第一の関所であった。
 博士と小池助手とは、無論怖がるようなことはなく、一枚ずつそれを受け取って、さらに前方への手さぐり足さぐりをはじめた。
 それから少し行くと正面の壁に突き当った。右にも左にも道はない。行き止りになっているのだ。
「変だね、あとへ戻るのかしら」
「その辺に、又戸があるんじゃないでしょうか。やっぱり黒い板塀のようじゃありませんか」
「そうかも知れない」
 博士は正面の板をしきりとなで廻していたが、間もなく、
「アア、あった、あった。ドアになっているんだよ。押せば開くんだ」
 と呟きながら、そのドアを押して中へ入って行った。その拍子に、何かしらマグネシュウムでも()いたような、ギラギラした光線が、パッと小池助手の目をくらませたが、それも一瞬で、ドアはバネ仕掛けのように、彼の鼻先にピッタリ(とざ)されてしまった。
 博士を追って中へ入ろうと、押しこころみたが、どうしたことか、ドアは誰かがおさえてでもいるように、びくとも動かない。
「先生、戸が開かなくなってしまいました。そちらから開きませんか」
 その声がドアを漏れて(かす)かに聞えて来たが、博士の方ではそれどころではなかった。真暗闇から突然太陽のような光の中へ放り出されて、クラクラと眩暈(めまい)がしそうになっていたのだ。
 何かしらギラギラと目を射る、非常な明るさであった。暫らくは闇と光との転換の余りの激しさに、網膜が麻痺したようになって、何が何だか少しも分らなかったが、(もや)が薄れて行くように、目の前のギラギラした後光みたいなものが消えて行くと、その向うに、目を大きく見開いて、口を開け、だらしのない恰好(かっこう)で立っている一人の男が現われて来た。
「オヤッ、あれは(おれ)じゃないか」
 ギョッとして見直すと、その男はもう他所(よそ)行きの取りすました顔になっていたが、眼鏡といい、口髭といい、三角の顎髯といい、モーニングといい、宗像博士自身と一分一厘も、違わない男であった。

    小池助手虽然对名侦探过分的孩子气感到惊愕,但他突然发觉这里面好像有什么道理。博士的性格是非常实际的。有规律的,不是那种毫无意思地去看什么杂耍的人。
 
    “或许先生想在这凶毛里寻找妙子吧。”
 
    这想象使小池助手吃了一惊。那是个好夸示自己的演戏似的刽子手!或许这想象是对的。运妙子的垃圾车空空如也地丢弃在附近神社的院落里。纵然说还是天刚蒙蒙亮的清晨,可怎能抱着年轻的女子逃得很远呢!去哪个方向都是毗连的街道,所以是决不能在往来频繁的行人中不被人怀疑而逃之夭夭的。
 
    这么一想,不管看上去如何离奇,但博士的想象总觉得是对的。
 
    博士走近入口处付完入场费,看门的年轻人便以奇怪的笑脸提醒他说:
 
    “在里面两次交给你纸片,请在出口处归还。那是说明你平安通过的证据,必须两张齐全。”
 
    两人把他的话只当耳边风,沿入口处走了进去。虽说搭着帐篷,但顶棚全用厚黑布遮盖着,所以一走进场内就如同晚上一般黑暗。就在这片昏暗之中,绝不清楚的小竹丛里有一条接连不断的盘阳路。
 
    或主或右,或往或返,一条勉强能通过一个人的小道足有几百米长。整个面积不算太大,但往返的长度却令人吃惊。
 
    一到道路分岔的地方,小池助手就不知道选哪边好,因为倘是走进了错道,就只是永远来回兜圈子,没有尽头了。
 
    “你知道迷宫的走法吗?这呀,如果是右边,你就顺着右手紧挨树篱笆一直往前走,这样的话,即使走进死路也不会重犯同样的错误,结果比乱走一气要早出来得多。”
 
    博士一边说明一边顺着右手沿小竹丛在头里一个劲儿往前走去。“可不是那样麻!”小池助手边想边追了上去。
 
    在长长的竹林里,所有的妖魔鬼怪都被隐藏电灯的微弱光线照耀着,或是躺着,或是立着,或是蹲着,或是悬挂着。有的装有自动装置,慢慢地动着。从模仿古池的水坑里,突然伸出又细又瘦的手来,在别的地方又出现了瞎了一只眼睛的女鬼,仔细一看,还有一个从那圆溜溜地突出的眼睛里不停地滴着鲜血的机关。
 
    有时候,游览的人又会在漆黑一团的走道上跌到一种软勒咕卿的大东西。当你大吃一惊定眼细看时,只见地上躺着一种无法形容令人作呕的灰色物体。虽然可以看见像是胜一样部分和像是手脚一样的部分,但当然不是人,可也不是动物,是一种令人毛骨悚然的莫名其妙的物体。
 
 
 
 
    有的地方也有这样一种装置:一个遍真的女吊死鬼从游人的头顶上刷地落到其肩上,用双手死死搂住游人的肩,同时发出令人作呕的笑声。
 
    可是,这些偶人不管做得多么巧妙、多么令人作呕,也感觉不到那般吓跑身强力壮的男子的恐怖。仔细看去只是滑稽,并不是那种从心里感到害怕的东西。
 
    “先生,不太无聊了吗?一点也没有什么害怕的,为什么看到这种玩意儿就逃跑呢?”
 
    “哎,不看到最后是不知道的,况且我们又不是只为了消遣而进来的,有重要的东西要寻找,一个偶人都不能放过呀。”
 
    两人一边低声交谈一边走着,一遇到妖魔或是鬼怪就大吃一惊地停下来。就在这样停停走走的过程中,不久便穿过了小竹丛里的盘阳路,走到了像是板墙一样的东西跟前。
 
    “哎呀,又是死路吗?不不,不是的。这里有一扇小便门,还贴着写有‘请打开进去’几个字的字条儿呢。”
 
    果然在黑色的板墙上可以看到一张字体很蹩脚的字条儿。
 
    “喂,不是有点儿可怕起来了吗?黑咕隆略中开门进去,总叫人发毛呀!”
 
    “是啊,要是一个人,说不定不大愿意进去哩!”
 
    但两人还在心里暧昧地笑着。简直要笑死人,心想:这多吓唬人呀!
 
    博士在前,两人打开门走了进去。但那里并没有什么可怕的东西,只有咫尺莫辨的黑暗。棚顶和左右两侧的墙壁都好像是用板擦的,而且在上面张挂着黑布,所以漆黑一团,连针尖儿般的光线都照不过来。眼前忽而滚滚地曾起烟雾般的东西,忽而又有鲜艳的蓝色或是红色的圈儿像霓虹灯一样忽隐忽视。较之假的妖怪来,视网膜对自己的捉弄反而更令人可怕。
 
    “这太暗了,没法走呀。”
 
    两人手扶着墙壁,用脚摸索着往前走去。
 
    “过去有种叫‘全景画’的杂耍儿,进那全景画的通道也是这样的。这黑暗就是断绝与现实世界的关系的一个机关。意思是说:你这样做了,我就给你看完全是别的梦幻的世界。全景画的发明者巧妙地抓住了人的心理。”
 
    摸索着前进了十米左右,左侧的黑暗中感到有一种白的东西。怀疑可能又是视网膜在捉弄自己,但又好像不是。是什么蹲坐在那里。
 
    “哎呀,是尸骨啊。是尸骨盘腿坐在这儿。”
 
    小池走近那旁边,换了一下骨骼。不是画,也不是人穿着兽形罩衣,是真的骨骼模型。
 
    在这什么都看不到的一片黑暗之中,就像是这世上唯一生物似地出现了一堆白骨,它那孤零零地盘腿而坐的样子与其说可怕,倒不如说异样神秘。
 
    两人停下来观看着,但看着看着突然发生了一件奇怪的事。那尸骨忽然站了起来,并且冷不防地把右手伸到两人前面,勉强可以辨认那手里拿着一叠纸。
 
    同时,尸骨的嘴张得大大的,而且格格地咬着牙齿。
 
    尸骨用奇怪的嘶哑的声音笑着。一定是什么地方装着扬声器,从远处让他们听到声音的。
 
    两人立即明白那纸片是看门人说的凭证,但胆小的人在漆黑之中也许没有勇气从尸骨手里收下那东西,早就逃走了。可以说这是第一关。
 
    博士和小池助手当然没有什么可害怕的,各拿了一张纸片,又开始向前方摸索。
 
    又走了一会儿,迎面碰上了一堵墙壁,左右都没有道路。是走到了尽头。
 
    “奇怪!要返回去吗?”
 
    “那边不是又有一扇门吗?不也好像是黑色的板墙吗?”
 
    “也许是。”
 
    博士来回摸着正面的板,过了一会,一面自言自语地说:“啊,有了,有了,这是扇门,一推就开。”一面推着那扇门走了进去。就在那当儿,像是点着了镁一样的耀眼的光线突然使小池助手眼睛发花,但这只是一瞬间,门又像是有弹簧装置似地在他鼻尖前啪地关闭了。
 
    他想跟着博士到里面去,于是试着推了一下,但不知怎么搞的,门像是有人顶着似的一动也不动。
 
    “先生,门开不开了,从您那边能打开吗?”
 
    虽然透过门隐隐传来了小池的声音,但博士哪还谈得上去开门呢!他从黑暗中突然被抛到了太阳一般的光线中,光亮使他头昏眼花了。
 
    这光非常明亮,直刺人的眼睛。一时间由于光的转变太快,所以视网膜像是麻痹了似的,一点也不知道这是怎么回事。当眼前耀眼的圆光一样的东西像薄雾逐渐消散似地渐渐消失时,那边突然出现了一个睁大着眼睛、张着嘴、衣冠不整地站着的男子。
 
    “哎呀,那不是我吗?”
 
    博士吓了一跳,重新一看,那男子虽然装着一本正经的样子,但眼镜也好,嘴上边的胡子也好,三角形的胡须也好,晨礼服也好,哪样都与宗像博士自己丝毫不差。
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