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怪指纹:黑影

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:黒い影 荒屋の縁側に上って、古蚊帳をまくると、天井に仕掛けた青い豆電燈の幽かな光を受けて、全裸の美女が、まるで水の底の人
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黒い影


 荒屋の縁側に上って、古蚊帳をまくると、天井に仕掛けた青い豆電燈の幽かな光を受けて、全裸の美女が、まるで水の底の人魚のように横わっていた。二人は這うようにして、その生々しい生人形の側へ近づいて行った。
「どうもそうらしいね」
「エエ、この顔は妙子さんにそっくりです」
 小池助手の鼻の先に、ふっくらとした美女の肩がもり上っていた。彼はオズオズとその青ざめた肌に指を当てて見た。
 冷い。氷のような冷さが、指の先から心臓まで伝わって来るように感じられた。それを我慢しながら、グッと押して見ると、美女の肩が、(えくぼ)のように(くぼ)んで行った。柔かいのだ。ゴムのように柔かいのだ。
 博士は、ハンカチを取り出して、ベットリと美女の胸を染めた黒いものに押し当て、それを目の前に持って来て眺めたり、(におい)を嗅いだりしていた。ハンカチには黒い液体が(にじ)んでいる。
「君、懐中電燈をつけてごらん」
 小池助手はポケットから、小型の懐中電燈を取り出して、スイッチを押し、その光を博士のハンカチに当てた。
 今まで青い電燈の下で、黒く見えていたハンカチの汚点(しみ)が、赤黒い血の色に変った。
 博士は無言のまま、ハンカチを助手に渡すと、胸の傷痕を調べた。
「心臓を(えぐ)られている。だが……」
 博士は出血量が案外少いことを不審に思っているらしく、なお死体の全身を眺め廻していたが、
「アア、やっぱり絞殺されていたんだ。そして、ここへ運んで来てから、舞台効果を出すために、心臓を抉ったのに違いない」
 と、独言のように呟いた。
「昨夜、寝室で絞殺されたのでしょうか」
「そうらしい。でなければ、あんなに易々(やすやす)とベッドの中へ隠したり、塵芥(ごみ)箱の中へ隠したり出来ない筈だからね。……犯人は、今朝まだ薄暗い内に、これを塵芥車にのせて、そこの神社の森の中へ引っぱって来た。それから、死体を担いで、化物屋敷のテントに忍び込み、この蚊帳の中の生人形と置き換えたのだ。心臓を抉ったのは、ここへ来てからに違いない。無論、最初からここへ死体を隠すつもりで、見当をつけて置いたのだろう。この場面を選んだのは、電燈も薄暗いし、蚊帳の中といううまい条件が揃っていたからだ。この中へ置けば、我々のように蚊帳をまくって見る見物(けんぶつ)なんかありやしないから、急に発見される心配はないと思ったのだ」
「それに、大抵の見物は、ここまで来ないで、逃げ帰ってしまうのですからね。……でも、見世物小屋の人達に、よく見つからなかったものですね」
「犯人がここへ来た頃は、まだ夜が明けたばかりで、みんな寝ていたのだろう。それに、何も正面の入口から入らなくても、この場面のすぐうしろから、テントの裾をまくって忍び込めば、訳はないんだからね」
「早速、川手さんと中村係長に知らせなければなりませんね」
「ウン、電話をかけることにしよう。……だが、小池君、ちょっと待ち給え。さい(ぜん)渡された二枚の紙札が何だか気になるんだ。懐中電燈をつけた(ついで)に調べて置こう」
 紙札というのは、例の暗闇のなかの骸骨と、(くさむら)を這い出して来た生腕(なまうで)とから受取った、化物屋敷通過証ともいうべき紙片(かみきれ)である。
 博士はその二枚の紙片を、ポケットから取り出し、小池助手のかざす電燈の光の中で、丁寧に調べて見た。
 紙片は二枚とも同質同形で、その表面には、夫々「第一引換券」「第二引換券」と筆太に記され、その真中に「丸花(まるはな)興行部之印」という大きな赤い判が、ベッタリと捺してある。
 二枚とも表面を調べ終ると、博士はそれを裏返して、懐中電燈の光に照らして見た。
「アア、やっぱりそうだ。君、これを見たまえ」
 二枚とも、紙片の真中に、黒い指紋がハッキリと現われていた。偶然についたのではなくて、指の腹に墨をつけて、態と捺した指紋である。
 博士は胸のポケットから、小型拡大鏡を出して、紙片の上に当てて見た。
「三重渦状紋だ、悪魔の紋章だ」
「例のいたずらですね」
「我々を嘲笑しているのだよ」
「しかし、あの骸骨や、人形の腕が、これを持っていたのは変ですね。丁度僕らの受取った札に、あいつの指紋が捺してあるというのは。……若しや、あいつ、まだこの中にウロウロしているんじゃないでしょうか」
 小池助手は異様に声を低くして、じっと博士の顔を見つめた。
「そうかも知れない。君、あれは何だろう。あの藪の中にいる黒いものは……」
 博士の目は、蚊帳を通して、荒屋のうしろの竹藪に注がれていた。
「エッ、黒いものですって?」
「ホラ、あすこだ。海坊主のような真黒な奴だ、まさか、こんな人の目につかぬところに、化物の人形が置いてある筈はない」
 博士は、荒屋の背後(うしろ)の竹藪の中を、目で知らせながら囁いた。殆ど光線の届かぬ闇の中だ。そう云われて見ると、何かそこに、闇よりも濃い影のようなものが、朦朧(もうろう)と立っているように感じられる。
 博士は刺すような眼光で、それを睨みつけている。闇の中の怪物も、身動きもせず、こちらを見つめている様子だ。蚊帳を隔てて、殆んど三十秒ほども、息づまるような睨み合いがつづいた。
「君、来たまえ」
 博士はそう囁くと、いきなり蚊帳をまくって、荒屋の裏の藪の中へ飛び込んで行った。
 ガサガサと竹の揺れる物音。
「そこにいるのは誰だッ」
 博士の叱りつけるような重々しい声に応じて、闇の中から異様な笑い声が響いて来た。クックックッと、口を押えて忍び笑いをしているような、まるで怪鳥(けちょう)の鳴き声のような、何とも云えぬいやな感じの音響であった。そして、又ガサガサと竹が鳴って、黒い怪物は素早く藪の中へ逃げ込んだ様子である。
「待てッ」
 闇の中の盲目滅法な追跡が始まった。
 小池助手も、博士のあとを追って、蚊帳を飛び出し、竹藪をかき分けながら、音のする方へ急いだ。
 厚い竹藪の壁を押し分けて向うに出ると、そこは以前に通り過ぎた迷路の中で、両側に藪のある曲りくねった細道がつづいていた。
「どちらへ逃げました?」
「分らない。君はそちらを探して見てくれたまえ」
 博士は云い捨てて、迷路を右へ走って行く。小池助手は左の方へ突進した。
 右に折れ左に折れ、いくら走っても際限のない竹藪の細道であった。もう自分がどの辺にいるのかさえ見当がつかない。黒い怪物は影も見えず、宗像博士がどの辺を追跡しているのか、それさえ全く分らぬ。
 ふと立止ると、厚い竹藪の向側に、ガサガサと人の気配がした。重なり合った竹の葉をすかして見ても、薄暗くてよく分らない。何かしら黒い人影が感じられるばかりだ。
「先生、そこにいらっしゃるのは先生ですか」
 声をかけても相手は答えなかった。答える代りに、又ガサガサと身動きして、クックックッと、あの何とも云えぬ不気味な笑い声を立てた。
 小池助手は、それを聞くと、ギョッと立ちすくんだが、やがて気を取りなおして、いきなり竹藪をかき分けながら、
「先生、ここです。ここです。早く来て下さい」
 と叫び立て、顔や手の傷つくのも忘れて、藪の向側へくぐりぬけた。
 だが、くぐりぬけて見廻すと、怪物はどこへ逃げ去ったのか、影もない。そして又、八幡の藪知らずの、(はて)しもない鬼ごっこが始まるのだ。
「小池君」
 ヒョイと角を曲ると、向うから宗像博士が走って来た。
「どうだった。あいつに出会わなかったか」
「一度声を聞いたばかりです。確かにこの迷路のどこかにいるには違いないのですが」
「僕も声は聞いた。竹藪のすぐ向側に立っているのも見た。しかし、こちらがそこまで行く間に、先方はどっかへ隠れてしまうんだ」
 二人が立話をしている所へ、ガサガサと人の気配がして、三人の男が近づいて来た。見世物小屋の人達である。さい前の叫び声を聞きつけて、様子を見にやって来たのだ。
 博士は三人のものに、事の仔細を語り、怪物逮捕の手伝いをしてくれるように頼んだ。
「小池君、じゃ、君はこの人達と一緒に、出来るだけ探して見てくれたまえ。僕は近くの電話を借りて、中村君に警官隊をよこしてくれるように頼むことにする。
 外は明るいのだし、大勢の見物が集っているんだから、犯人が外へ逃げ出すことはなかろう。ナアニ、もう袋の鼠も同然だよ」
 博士は云い捨てて、(あわただ)しく迷路の彼方へ遠ざかって行った。

    两人越过栅栏默默地走了进去,又踩开没膝的杂草走进了破屋,随后博士先将手放到旧蚊帐的下摆上,轻轻地撩了起来。
 
    黑影
 
    走上破屋子的廊檐,一撩起旧蚊帐,只见一个美女在挂在顶棚上的蓝色小电灯微弱光线照耀下如水底的美人鱼躺在里面。两人爬也似地靠近了那个逼真的偶人。
 
    “真像呀。”
 
    “是的,这脸跟妙子一模一样。”
 
    在小池助手的鼻尖前隆起着丰满的美女的肩,他战战兢兢地用手指触了一下那苍白的皮肤。
 
    一种冰凉的感觉似乎从手指尖传到了心脏,小池忍着使劲一据,美女的肩像酒窝似的瘪了进去。很柔软,像橡胶一样柔软。
 
    博士掏出手帕,擦了一下涂满了美女胸脯的黑色的东西,随后拿到眼前忽而看看,忽而闻着味道。手帕上渗出了黑色的液体。
 
    “你把手电打开一下。”
 
    小池助手从衣兜里掏出袖珍手电,并按下开关将光照到博士的手帕上。
 
    刚才在蓝色电灯下呈现黑色的手帕的污点变成了紫黑色的血色。
 
    博士默默地将手帕递给助手,随即检查了胸脯的伤痕。
 
    “掏掉了心脏,可是……”
 
    博士好像对出血量出乎意外地少感到不可思议,依然来回望着尸体的全身,过了一会儿自言自语地说道:
 
    “啊,还是被勒死的,而且一定是运到这儿以后为了增加舞台效果把心脏掏了出来。”
 
    “是昨晚在寝室里被勒死的吧?”
 
    “好像是的,要不然不可能那样轻而易举地又是藏在床里又是藏在垃圾箱里嘛……犯人今天早晨趁天还黑把这装在垃圾箱里,拉到了那儿的神社里,然后扛着尸体偷偷溜进凶宅的帐篷,和这顶蚊帐中的偶人调换了一下。掏出心脏一定是来这儿以后干的。当然是打一开始就打算把尸体藏在这儿,事先作好了估计吧,之所以选择这场面,是因为这儿具备电灯光昏暗而且在蚊帐中这一优越的条件,以为放置在这里面的话根本不会有游人像我们这样撩起蚊帐来看的,所以用不着担心会立即被发现。”
 
    “另外因为大多数游人不敢上这儿来,都逃回去了……不过,他们居然没有被杂耍场的人发现啊!”
 
    “犯人来到这儿的时候还刚刚天亮,大家都在睡觉吧,而且何必从正面的入口处进来呢,从这场景的后面也能不费吹灰之力地撩起帐篷边悄悄溜进来嘛!”
 
    “得赶快告诉川手和中村股长吧?”
 
    “嗯,给他们打电话吧……可是,小池君,你等一下。我心里总惦记着刚才交给我的两张纸片。你打着手电,顺带检查一下吧。”
 
    所说的纸片,就是那两张从黑暗中的尸骨那儿和从草丛中爬出来的血淋淋的胳膊那儿收下来的“凶宅通行证”。
 
    博士从口袋里掏出那两张纸片,在小池助手用手挡着的手电光中仔细地检查了一下。
 
    两张纸片是同一性质、同一形状,其正面用粗笔写着“第一兑换卷”“第二兑换卷”的字样,正中按着“丸花兴行部之印”的大红印。
 
    检查完正面,博士把两张都翻了过来,在手电光中照了一下。
 
    “啊,果然如此!你看这个。”
 
    两张纸片的正中都有清晰的黑色指纹。这指纹不是偶然沾上去的,而是手指肚上蘸上墨水故意按上去的。
 
    博士从胸前的衣兜里掏出小型放大镜放在纸片上看了看:
 
    “是三重涡状纹。是恶魔的徽章。”
 
    “还是那种恶作剧吧?”
 
    “是在嘲笑我们呀!”
 
    “可是那尸骨和偶人的胳膊拿着这个可有点奇怪呀,刚好我们拿的纸片上按着那家伙的指纹,这……会不会那家伙还在这里面转来转去呢?”
 
    小池助手异常地放低声音,凝视着博士的脸说。
 
    “也许是的。你看那是什么?在那竹丛里的黑的东西
 
    博士的目光透过蚊帐,落在破屋后面的竹丛里。
 
    “啊?!黑的东西?”
 
    “你瞧,在那儿。是个秃头海怪一样乌黑的家伙。总不会在这种不显眼的地方放妖怪的模拟像吧。”
 
    博士一面用目光示意一面低声说道。几乎是在光线照不到的黑暗里。经他这么一说,那边是好像腾腾脱脱地站着一个比黑暗还要浓的影子般的东西。
 
    博士用针扎般的目光瞪着那东西,黑暗中的怪物也像是一动不动地凝视着这边。隔着蚊帐令人窒息般地互相盯视持续了半分钟左右。
 
    “你来!”
 
    博士这样低声一说,突然撩起帐子朝破屋后面的竹丛里奔去。
 
    竹子发出沙沙晃动的声音。
 
    “谁在那里?!”
 
    回答博士这训斥般的严肃的声音的,是从黑暗中响起了异样的笑声。那是一种无法形容的使人感到讨厌的声音,仿佛捂着嘴在呼呼地暗暗发笑,又仿佛是一种怪鸟的啼叫声。随即竹子沙沙作响,黑色的怪物像是迅速地逃进了竹丛中。
 
    “等等!”
 
    他俩开始了黑暗中的盲目追踪。
 
    小池助手紧跟着博士跳出蚊帐,一面拨开竹丛一面朝发出声响的方向赶去。
 
    一出深竹丛来到那一边,那儿便是刚才通过的盘陀路中两侧有竹丛的蜿蜒曲折的小道。
 
    “逃到哪儿去了?”
 
    “不知道。你到那边找一下。”
 
    博士说罢沿盘阳路向右跑去,小池助手冲向左方。
 
    那是一条忽而拐向右边忽而拐向左边,无论怎么跑都没有尽头的竹丛小道,连自己已经在哪里都无法判断。黑色的怪物不见影踪,宗像博士都完全不知道自己在哪一带追踪。
 
    小池突然站住,只听到深深的竹丛对面沙沙作响,像是有人的样子。即使透过重重叠叠的竹叶缝隙看去也黑扭她的不知道是什么东西,只觉得像是个黑色的人影。
 
    “先生,是先生在那里吗?”
 
    即使打招呼对方也没有答话。代替回答的是,对方又沙沙地动了动身子,呼呼地发出那无法形容的令人毛骨悚然的笑声。
 
    小池助手一听到这声音就惊呆了。过了一会儿才重振精神,猛然间一边拨开竹丛一边大声喊:
 
    “先生,我在这儿,我在这儿,您快来呀。”
 
    他顾不得脸和手会擦伤,钻到了竹丛的对面。但钻过去朝四下一望,怪物不知逃到了哪里,连影子都没有。迷宫中漫无止境的捉迷藏又开始了。
 
    “小池君!”刚一拐弯,突然从对面跑来了宗像博士,“怎么样,碰上那家伙了吗?”
 
    “只听到过一次声音,确实是在这条盘阳路的什么地方,可是……”
 
    “我也听到了声音,还看到他就站在竹丛的对面,但在我去那儿期间,对方就躲到什么地方去了。”
 
    两人正站着说话时又沙沙地响动起来,三个男人走了过来。是杂耍场的人,他们是听到刚才的喊声后来观察情况的。
 
    博士跟三人说了这情况,希望他们帮助自己逮捕怪物。
 
    “小池君,那你就跟这些人一起尽量找一下。我去借附近的电话,请中村君派警察来。外面很亮,而且很多游人汇拢在一起,所以犯人大概不会逃出去吧,不,已经等于是瓮中之鳖了!”
 
    博士说罢急匆匆地朝盘陀路的那头跑去。
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