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恐怖王-恶魔的真面目(4)

时间: 2021-08-29    进入日语论坛
核心提示: 一着の古い黒の背広服、黒のソフト帽、その横に白紙をのべて、上に黒眼鏡と、長髪のと、つけ髭が並べてある。 その側に、数枚
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 一着の古い黒の背広服、黒のソフト帽、その横に白紙をのべて、上に黒眼鏡と、長髪のと、つけ髭が並べてある。
 その側に、数枚の手紙の様なものが、キチンと重ねて、に紙ナイフが重しにのせてある。
 蘭堂は、悪夢の続きでも見ている様な気がした。この服、この帽子、この眼鏡、凡て黒瀬と名乗った怪画家のものではないか。ゴリラに毒薬の注射をして逃げ去った、恐怖王その人と覚しき怪人物のものではないか。彼は果して変装していたのだ。長髪も口髭も、皆にせものであったのだ。
 では、一体が黒瀬に化けていたのだ。あの惨虐あくなき殺人鬼「恐怖王」の正体はそもそも何者であったのだ。
 如何に不思議に見えようとも、それはここに殺されている喜多川夏子その人と考える外はない。でなくて、病院を脱走したゴリラ男が、態々夏子を殺しにやって来る筈はないからだ。
 ゴリラ男は「ここはお前の敵の家だ」と云った。夏子が若し「恐怖王」であったとすれば、如何にも敵の家に相違ない。蘭堂は我が恋人を殺害した当の敵と同じに夜を明かしたことになる。
 余りに事の意外さに、蘭堂は暫くぼんやりしていたが、やがて、テーブルの上の手紙の様なを手に取って、むさぼり読んだ。
 それは皆「恐怖王」と自称するからゴリラ男と覚しき人物に送られた、簡単な通信文であった。
 布引照子の棺桶を盗み出す手筈を打合せた一通があった。照子の死骸を自動車に乗せて、恐怖王(ち喜多川夏子)が、同じ車内に隠れ法によって照子の声で父布引氏に呼びかける手段を記した一通があった。花園京子の片腕を切断する打合せの一通があった。又、大江蘭堂を鎌倉におびきよせ、空中文字、砂文字によって、夏子のへ誘い込む手筈を通知した一通があった。
 どれもこれも、通信者相互に丈け分る様な、符号に近い文句であったけれど、事件を最初から知っている蘭堂には、なんなく判読することが出来た。
 しかも、何より恐ろしいのは、その手紙の文字が、よく知っている喜多川夏子の筆蹟に相違なかったことだ。最早や疑う余地はなかった。
「恐怖王」とは、この美しき一女性に過ぎなかったのか、余りにあっけない種明しではないか、これが本当だろうか。蘭堂はいくら証拠を見せつけられても、それを信じる気にはなれなかった。
 彼女はあの美しい顔をして、実は恐ろしい精神病者であったのだろうか。血にえた殺人狂であったのだろうか。
 だが、殺人狂としても、これらの犯罪には、何かしら一つの思想が含まれている様に見えるではないか。
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