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目羅博士の不思議な犯罪(13)

时间: 2023-09-19    进入日语论坛
核心提示: 云うまでもなく、それは、向うの窓の黄色い顔の奴に、僕がそこにいることを知らせる為ですが、僕の方からは、決してうしろを振
(单词翻译:双击或拖选)

 云うまでもなく、それは、向うの窓の黄色い顔の奴に、僕がそこにいることを知らせる為ですが、僕の方からは、決してうしろを振向かぬ様にして、相手に存分(ぞんぶん)隙を与える工風(くふう)をしました。
三時間もそうしていたでしょうか。果して僕の想像が的中するかしら。そして、こちらの計画がうまく奏効(そうこう)するだろうか。実に待遠(まちどお)しい、ドキドキする三時間でした。もう振向こうか、もう振向こうかと、辛抱(しんぼう)がし切れなくなって、幾度(いくど)頸を廻しかけたか知れません。が、とうとうその時機が来たのです。
腕時計が十時十分を指していました。ホウ、ホウと二声、(ふくろう)の鳴声が聞えたのです。ハハア、これが合図だな、梟の鳴声で、窓の外を覗かせる工夫(くふう)だな。丸の内の真中で梟の声がすれば、誰しもちよっと覗いて見たくなるだろうからな。と悟ると、僕はもう躊躇(ちゅうちょ)せず、椅子(いす)を立って、窓際へ近寄りガラス戸を開きました。
向側の建物は、一杯に月の光をあびて、銀鼠色(ぎんねずいろ)に輝いていました。前にお話しした通り、それがこちらの建物と、そっくりそのままの構造なのです。何という変な気持でしょう。こうしてお話ししたのでは、とても、あの気違いめいた気持は分りません。突然、眼界一杯の、べら棒に大きな、鏡の壁が出来た感じです。その鏡に、こちらの建物が、そのまま写っている感じです。構造の相似の上に、月光の妖術が加わって、そんな風に見せるのです。
僕の立っている窓は、真正面に見えています。ガラス戸の(あい)ているのも同じです。それから、僕自身は……オヤ、この鏡は変だぞ。僕の姿丈け、のけものにして、写してくれないのかしら。……ふとそんな気持になるのです。ならないではいられぬのです。そこに身の毛もよだつ陥穽(かんせい)があるのです。
ハテナ、俺はどこに行ったのかしら。確かにこうして、窓際に立っている筈だが。キョロキョロと向うの窓を探します。探さないではいられぬのです。
すると、僕は、ハッと、僕自身の影を発見します。併し、窓の中ではありません。外の壁の上にです。電線用の横木から、細引でぶら下った自分自身をです。
『アア、そうだったか。俺はあすこにいたのだった』
こんな風に話すと、滑稽(こっけい)に聞えるかも知れませんね。あの気持は口では云えません。悪夢です。そうです。悪夢の中で、そうする(つも)りはないのに、ついそうなってしまう、あの気持です。鏡を見ていて、自分は目を()いているのに、鏡の中の自分が、目をとじていたとしたら、どうでしょう。自分も同じ様に目をとじないではいられなくなるのではありませんか。


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