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魔术师-壁の穴(2)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示: だが、そうだとすると、犯人は一体どこにいるのだ。「さっきあなたは、妙子が犯人を見てびっくりしたのだとおっしゃった様です
(单词翻译:双击或拖选)

 だが、そうだとすると、犯人は一体どこにいるのだ。
「さっきあなたは、妙子が犯人を見てびっくりしたのだとおっしゃった様ですが」
一郎が、少し青ざめて明智の顔を見た。
「そうです」
「そいつはどこへ行きました」
「どこへも行きません。最初からいないのです」
「すると…………」
一郎にも二郎にも、明智の云う意味が、おぼろげに分って来た。併し、それは口にすべく、余りに恐ろしい事柄だ。
「妙子さんは、この鏡の中に、恐るべき真犯人の姿を発見したのです」
明智がとうとうそれを云った。
「アア、それでは……、まさか、まさか」
一郎が、思わず叫んだ。
「ではあなたは、妹が実の父を殺した犯人だとおっしゃるのですか」
二郎が恐ろしい見幕(けんまく)でつめ寄った。
「今、その証拠を、あなた方にお目にかけたではありませんか」
明智は冷静な調子で答えた。
「妙子さんはこの鏡を見て、最初ギョッとしたが、次の瞬間には、今二郎君が笑った様に笑いました。鏡ということが分ったからです。併し、更らにその次の瞬間には、あの女の顔から、笑いの影がサッと消えて、恐ろしい恐怖の表情となり、その口からはたちまちゾッとする様な悲鳴がほとばしりました。どこの世界に、鏡に写った自分の影を、あの様に恐れる者がありましょう。鋭い彼女は、咄嗟の間に、僕のトリックに気附いたのです。僕が、このカーテンの蔭に犯人がいると云ったのは、つまり鏡に映った妙子さんその人を意味していたことを悟ったのです」
兄弟は、彼等の妹の顔に現われた、この世のものならぬ恐怖の表情を見た。なる程、そう云われて見れば、妙子自身が真犯人ででもなければ、あんな恐ろしい表情をする筈はない。併し、肉親の娘が、その父を殺すなんて、考えられないことだ。
「動機は? 妙子には父を殺す動機がありません」
二郎が叫んだ。
「動機ですか、至極(しごく)簡単ですよ」明智は少しも騒がぬ。「妙子はあなた方の妹でも、善太郎氏の娘でもなかったからです」
低い声であったが、これは実に晴天(せいてん)霹靂(へきれき)だ。一郎も二郎も、余りに意外な明智の言葉に、あっけにとられて、暫くは口も利けなかった。
明智ともあろうものが、出鱈目(でたらめ)を云う筈はない。さっきの妙子の異様な表情といい、明智の断言といい、どうも嘘ではないらしい。
「では妙子は一体誰の子です。どうして僕の家にいたのです。僕はあれの赤ん坊の時分から知っているのですよ」
一郎がなおも抗弁した。
「びっくりしてはいけません。妙子は怪賊奥村源造の実の娘です」
「え、そんな馬鹿なことが。…………」
「イヤ、お疑いなさるのも無理はありません。併し、それは僕が調べ上げた間違いのない事実です。生れたばかりの赤ん坊が、病院で取り替えられたのです。しかも、その取替えは、奥村源造の深い企らみであったのです。彼はある看護婦を買収して、偶然同じ頃生れた、自分の娘と、あなた方の本当の妹さんとを、ひそかに取替えさせたのです」
「エ、エ、すると、若しや、あの文代という賊の娘が……」
「そうです。文代さんこそ、あなた方の血を分けた妹さんです。これには確かな証人があります。当時の看護婦が未だ達者でいるのです」
「併し、なぜそんな恐ろしい真似をしたのです。僕には理由が解りません」
二郎が口を挟む。
「源造の恐ろしい復讐心です。彼はこの取替え子によって、我が実の娘を玉村家の人として成長させ、物心つく頃になって、ソッと親子の名乗りをとげたのです。そして、復讐事業の手助けをさせたのです。実に恐ろしい企らみではありませんか。あなた方が真実の妹として愛していた、あの妙子さんこそ、復讐鬼の美しい廻し者であったのです。実の子が(かたき)の家庭の一員と信じられている、悪魔にとってこれ程好都合なことはありません」
云われて見ると、一郎も二郎も、段々思い当る所があった。実の妹と信ずればこそ、別に疑いもしなかったものの、考えて見れば、妙子の挙動には、日頃どことなくおかしい点がないでもなかった。
明智は説明を続ける。
「妙子が賊の娘であったとすれば、今までどうにも解釈の出来なかった、様々の不可思議がたちどころに氷解するではありませんか。犯人はいつも家の中にいたのです。いくら厳重に戸締りをし、見張りをつけても、実の娘が犯人なのだから、防ぎ様がないのです」
「分りました、では、僕達を妙子に会わせて下さい。直接あれの口から聞き度いのです。妙子は(さだ)めし波越さんの手で捉えられているのでしょうね」
二郎が、明智の説明を、もどかしげに打切って尋ねた。
「そうです。波越君は、妙子を捉えて、あちらの部屋で待っている筈です。そこには妙子の外に意外な共犯者や、さっき云った元看護婦のお婆さんなども、呼びよせてあるのですよ」
明智は云いながら、もうその方へ歩き出した。

 

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