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魔术师-意外な共犯者

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示:意外な共犯者 玄関脇の客間風な一室に、いつの間にか明々(あかあか)と電燈が点ぜられ、その光が廊下まで流れ出していた。その中
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意外な共犯者


 玄関脇の客間風な一室に、いつの間にか明々(あかあか)と電燈が点ぜられ、その光が廊下まで流れ出していた。その中から甲高(かんだか)い女の声が、漏れ聞えていた。
 三人は明智を先頭に、そこへ入って行った。
 と見ると、夜叉(やしゃ)の様に荒れ狂っている、一人の女性があった。妙子だ。彼女は邪悪なる正体をむき出しにして、彼女を捉えた波越警部に食ってかかっているのだ。
「妙子さん、虚勢を張っても駄目です。君の兄さん達は、さっき君が鏡を見て顔色を変えた有様を、すっかり覗いていたのです。あの恐ろしい表情なり挙動なりが、何よりも雄弁な証拠です」
 明智が半狂乱の妙子に憐む様に云い聞かせた。
「オオ、兄さま、あたしどうしましょう。こんな、ひどい(うたがい)を受けてしまって」
 妙子は、兄達に対して、最後のお芝居を演じて見せた。
 一郎も、二郎も、もうその手には乗らなかった。彼等は昨日まで妹であった女を、怖い目で睨みつけた。
 明智も妙子のお芝居には取合わず、さっきの説明を続けた。
「妙子さん、今僕が、あなたのして来たことを、兄さん達に、かいつまんでお話ししますから、間違っている点は訂正して下さい。君は、奥村源造の実の娘であることを知ると、お父さんや兄さん達に(あだ)を報いる為に、日夜(にちや)心を砕きました。復讐事業に着手する前に、君が先ず計画したのは、この僕を懐柔(かいじゅう)して、邪魔立てさせない様にすることでした。S湖畔のホテルで、僕と偶然に出合ったと見せかけ、君の美しさで、(あらかじ)め僕の活動を封じることでした。……
 やがて福田得二郎氏殺害事件が起りました。福田氏の下手人は、妙子さん、あなたでした。横笛(フリュート)の葬送曲、死体にまき散らした花びら、血なまぐさい中にも、女性的な感傷を忘れなかった君の心持を、僕は面白く思います。犯罪学上に特異なる一例を残すことでしょう。……
 それから、君は波越君に対して、僕をS湖畔から電話で呼び寄せることを希望しました。これは無論、途中で僕を引っさらって、事件の落着するまで、例の汽船の中へ幽閉して置く為でした。……
 それから、矢つぎ早に様々の陰謀が計画され、玉村家の人達は、屡々(しばしば)生命をおびやかされました。君の実父の奥村源造は外から、君は邸内に()って、(あい)呼応し、着々として復讐事業を進めて行ったのです。……
 併し、若し君が少しでも疑われる様なことがあったら、源造の四十年の計画も(たちま)ち水の泡です。大事の上にも大事をとらねばなりません。そこで、君はうら若い娘にも似げなく、大胆不敵な決心をしました。即ち、玉村一家の人が襲われる場合には、必ず君が第一の犠牲者になって見せることです。そうして、完全に疑いをさけ(よう)としたのです。現に君は、二度もひどい負傷をしています。あの様な手傷を負ったその人が、実は犯人の片割れであろうなどと、誰が考えましょう。実に恐ろしい、思い切った欺瞞(ぎまん)手段でした。君の様な勝気な娘さんでなくては真似も出来ない芸当です。……
 併し、君はいつも手傷を負いながら、その負傷の箇所が、生命には別状ない安全な部分に限られていた。この点が先ず僕の注意を()いたのです。そこへ持って来て、最後の水責めの際、君丈けは、抜け穴から救い出され、船中へ連れ去られた点、源造は君を人質にしたのだと言っていたけれど、何となくおかしく思われたのです。……
 そういう訳で、君は、あらゆる不可能事を可能にする魔術師の役目を勤めた。例えば、賊からの手紙なりその他の通信なりが、幽霊の様に、ヒョイヒョイと玉村家の邸内に現われた奇怪事なども、君がその通信の配達人を勤めていたとすれば、実に何の訳もないことです。謎は忽ちに解けるのです。……
 蛇の一件にしろ、善太郎氏殺害にしろ、君なれば実に易々(やすやす)と行うことが出来た訳です。なぜと云って、お父さんは、(むし)ろ君の身を案じて、寝室も隣同士にしていた位ですからね。なる程廊下に書生が見張り番をしていた。併し、令嬢であるあなたが、お父さんの部屋へ這入ったところで、少しも疑念を抱く筈はありませんし、又買収という手もあったのです。……
 サア、これで大体あなたの悪事を数え上げた訳です。どこか間違った点がありますか」
 明智が語り終ると、妙子は()てばちに、落ちつき払って、抗弁を始めた。
「ホホホホホホ、まあ流石(さすが)に見事な推理でございますわね。でも、卑怯ですわ。謎の解けない苦しまぎれに、あたしが玉村家の娘でないなんて。ホホホホホホ、あんまり馬鹿馬鹿しくて」
「お()しなさい。今更ら何とごまかしても、もう駄目です。僕はすっかり調べ上げたのです。れっきとした証人もあるのです」
 明智はあくまでおだやかな調子で云う。
「マア、証人ですって? それは一体誰ですの」
「K私立病院の看護婦です。あなたの生れる時お世話をした看護婦を発見したのです。その女が、奥村源造から莫大な礼金を貰って、殆ど同時に出産した文代さんと君とを取替えたことを、とうとう白状したのです」
「マア、古めかしいお話ですこと。二十年も前の昔話が、何の証拠になりましょう。どんな(こしら)えごとだって仕組めますわ」
「ハハハハハハ、君はたかを(くく)っているのですね。耄碌(もうろく)したお婆さんの証言なんか、どうだって云いくるめられると思っているのですね。だが、妙子さん、証人はその看護婦一人ではないのですよ」
「アラ、まだございますの? 随分お集めなさいましたのね」
 妙子は愈々ふてぶてしい態度を見せた。
 明智は唇の隅に妙な笑いを浮べながらドアを開けて、隣室に待たせてあった人物を招き入れた。そこには、薄暗い電燈の下に、ひどく時代の違った二人の男女が、神妙に呼ばれるのを待っていたのだ。
 入って来たのは、元看護婦の老婆と、彼女に手をとられた幼い子供であった。
「アラ、進一ちゃん!」
 妙子はその少年を一目見ると、思わず甲高い叫び声を立てた。進一というのは、読者も知っている様に、妙子が貧家のみなし児を貰い受けて、我子の様にいつくしみ育てていた、まだいたいけな少年である。

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