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青铜魔人-怪人的真面目

时间: 2021-10-30    进入日语论坛
核心提示:怪人の正体 それから四五十分のち、煙突のまわりは火事場のような騒ぎになっていました。中村係長のきてんで、もよりの消防署に
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怪人の正体


 それから四五十分のち、煙突のまわりは火事場のような騒ぎになっていました。中村係長のきてんで、もよりの消防署に電話がかけられ、一台の消防自動車が、小型の探照(たんしょうとう)まで用意してやって来たのです。探照灯は近くの電灯線につながれ、まぶしい光線が煙突の頂上を照らしつけています。
 青銅の魔人は昇天しないで、まだそこにいました。煙突の頂上に腰をかけ、二本の金属の足をブランブランさせ、両手を空ざまにひろげて、おどかしつけるようなかっこうで下界をにらみつけ、例のキーッ、キーッという、いやな叫び声をたてています。
 警官が煙突へのぼって行って、怪人をとらえるなどは、とてもできることではありません。足場がわるい上に、相手はどれほど力があるかわからないやつです。そこで中村係長は消防署にたのんで、怪物めがけてホースの水をぶっかけてもらうことを考えつきました。そうすれば怪物は苦しまぎれにおりて来るだろうと思ったのです。しかし、その考えはまちがっていました。怪物はけっしておりてこなかったのです。
 自動車ポンプのエンジンが動きだし、消防署員はホースの(つつぐち)をとって身がまえました。ホースからはおそろしい音をたてて、水がほとばしり、はるかの空の怪物は真っ白な水しぶきに包まれました。
 ポンプの水は煙突の上の怪物をふきとばすほどの力があります。しかし、つきおとして殺してしまっては、なんにもなりませんから、手かげんをして、ただ顔に水しぶきをかけて苦しめるようにしているのです。
 ところが、魔人はすこしも苦しむようすがありません。機械人間は息をしないので、いくら水をかけられてもへいきなのでしょう。
 消防手はもどかしくなって、だんだん水のかけかたをはげしくしました。怪人の姿がユラユラとゆれるように見えます。ア、いけない。そんなにひどくしたら、煙突の上から落ちてしまう。人々がそう思って手に汗をにぎった時はもうおそかったのです。
 ポンプの水が強すぎたのか、それとも怪人がわざとそうしたのか、青銅のからだが左右にはげしくゆれたかと思うと、もう怪人の姿は煙突の上から消えていました。しかしこんどは煙のように消えてなくなったのではありません。落ちたのです。はるかの天空から、黒いかたまりとなって、矢のように地上に落下したのです。人々は思わず「ワーッ」と声をあげました。
 その時でした。ちょうどその時、地上の暗やみの中で、なんとも説明のできない異様なことがおこっていました。
 小林少年はその時、警官隊のずっとうしろのほうから、煙突の上を見あげていたのですが、怪物が落ちたので、いそいでそのほうへかけだそうとしました。そして、一歩ふみだした時、とつぜん頭の上から黒雲がかぶさって来たような気がして、目の前がすこしも見えなくなってしまい、からだがスーッと宙にういたかと思うと、こんどは深い深い穴の中へすべりおちて行くような気がして、それっきり何もわからなくなってしまいました。人々は怪物のほうにむちゅうになっていたのと、何をいうにも暗やみのことですから、小林君の身のうえにおこった変事には、だれも気づいたものはありません。しかし、この時かぎり、小林君の姿はかき消すように見えなくなってしまったのです。つまりこの世から消えうせてしまったのです。
 こちらでは青銅の魔人が、おそろしい音を立てて地上に落ちたものですから、警官たちはいっせいにその場にかけよりました。懐中電灯の光ではたよりないので、消防自動車を動かして、ヘッドライトでそこを照らしたのですが、怪物は見るもむざんなありさまで、地面にたたきつけられていました。むろん死んでいるのです。しかしそれはなんという不思議な死がいでしょう。手足は折れまがり、腹はさけているのに、一てきの血も流れていないのです。そして、さけた腹の中からとびだしているのは、はらわたではなくて、数知れぬ大小の歯車じかけでした。
 アア、やっぱりこいつはからだの中まで機械でできていたのです。ほんとうの機械人間だったのです。
 それにしても、その歯車を動かす力のもとは、いったいなんだったのでしょう。まさかゼンマイの力でこんな大きなものが動くはずはありません。電気の力にしても、これだけの人形を動かす蓄電池をしこむなどということはとても考えられません。なにか今までだれも知らなかったような発明をした者があるのでしょうか。では、その発明者はいったい何者でしょう。中村係長は魔人の死がいのそばによって、靴の先で肩のへんを動かして見ました。えたいの知れぬ魔物のことですから、こんなになっても、まだ生きているのではないかと、ためして見たのです。しかし機械人間はグッタリとなったまま、動きだすようすもありません。たしかに死んでしまったのです。
「なんだ、青銅の魔人って、こんなものだったのか。」
 ちらばっている歯車を見ると、なんだかばかにされたような気がしました。
 しかし、この機械があのような悪事をはたらき、そのうえたびたび煙のように消えうせたことを思いだすと、やっぱり気味がわるいのです。なんともいえない、ふしぎな感じがするのです。
 人々は奇妙な死がいのまわりに立ちすくんだままだまりこんでいました。あまりのふしぎさに、何を考えていいのだか、何をいっていいのだか、けんとうもつかないのです。
 そこへ、人々をかきわけるようにして、名探偵明智小五郎があらわれました。明智はだまって機械人間の死がいに近づくと、そのそばにしゃがんで、あちらこちらとしらべていましたが、
「オヤ、これはなんだろう。」
 と、つぶやいて、怪物の右の手を持ちあげました。見ると、ちょうつがいになった青銅の指が、かたくにぎりしめられていて、その指のあいだから、白い紙きれのはしが出ているのです。明智はその紙きれを破れないようにソッとぬきだし、ひざの上でしわをのばして、消防自動車のヘッドライトの光にあてて見ました。
「アア、やっぱり手紙だ。こいつは手紙でぼくらに何かをつげようとしているんだ。」
 その紙きれには、字だか絵だかわからないようなへんなかなで、
「フクシュウ」
 と、ただ五字だけしるされていました。「復讐」と読むのでしょう。つまり、復讐してやるぞという、例のおどし文句です。
 しかし、死んでしまった怪物がどうして復讐できるのでしょう。どうもわけがわかりません。でも、相手は化けものみたいなやつです。死んでしまっても、たましいがのこっていて、何かおそろしいたくらみをしているのかもしれません。
 そうだんのうえ、機械人間の死がいは警視庁の理化学研究室に運んで、くわしくしらべることにし、警官も消防手もそれぞれ引きあげることになりましたが、その時になって、明智探偵は小林少年の姿が見えないことに気づきました。
 れいのチンピラ別働隊の少年たちは、さっきからのおそろしいできごとに、すっかりめんくらってしまって、ひとかたまりになって、何か話しあっていましたが、明智が小林少年のことをたずねますと、その中からひとりのチンピラ君が前に出て、妙なことをいいました。
「ねえ、なんだかへんなんだよ。おら、わけがわかんねえや。小林のあにいね、フッと消えちまったんだよ。おら、あんとき小林のあにいのすぐそばにいたんだ。暗くってよくわかんなかったけどね、たしかに消えちゃったんだよ。フッと消えちゃったよ。」
 チンピラ君のいうことはなんだかよくわかりませんでしたが、小林君がいなくなったことはまちがいありません。みんなで手わけをして、できるだけさがしたのですが、どうしても見つからないのです。そして、あくる日になっても、小林君はどこからもあらわれて来ませんでした。
 アア、これはいったいどうしたことでしょう。青銅の魔人は死んでしまったように見えて、じつは生きているのでしょうか。それにしても、どうして小林君をかくしてしまうことができたのでしょう。魔人の復讐とすれば、こんなおそろしい復讐はありません。
 小林君は今どこにいるのでしょう。まさかほんとうに消えてしまったのではありますまい。
 これには何かわけがあるのです。きっとだれにもわからないようなおそろしいわけがあるのです。

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