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妖怪博士-名侦探的胜利

时间: 2021-10-25    进入日语论坛
核心提示:名探偵の勝利 見ていますと、その人の顔が、ヒョイと屋根裏のやみの中へ引っこみました。オヤッと思ううちに、こんどはその穴か
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名探偵の勝利


 見ていますと、その人の顔が、ヒョイと屋根裏のやみの中へ引っこみました。オヤッと思ううちに、こんどはその穴から、きたない二本の足が、ニューッとおりてくるではありませんか。
 そして、ひざからもも、腰、腹と、すべるようにズルズルさがってきたかと思うと、いつのまにか、二本の手で天井にぶらさがり、器械体操でもするように、はずみをつけて、ヒラリと部屋の中へとびおりました。
 じつにみごとな早わざです。あの高い天井からとびおりて、しりもちをつくでもなく床の上を二、三度ピョンピョンはねて、スックと立ちあがると、人々の顔を見まわしてニコニコ笑っているのです。
 それは十四、五歳ほどの、乞食のようなうすぎたない少年でした。思いもよらぬ天井から、子どもの乞食がふってきたのです。人々がアッと仰天したのもむりではありません。
「殿村君、この子どもに見おぼえはないかね。きみがさいしょ東洋製作会社へやってきたときから、この乞食の子どもは、たえずきみの身辺につきまとっていたんだぜ。よく見たまえ、きみは今までこの子どもに、たびたび出あっているはずだ。」
 殿村は乞食少年を、穴のあくほど見つめました。見つめているうちに、彼の顔がだんだん青ざめていくではありませんか。たしかに見おぼえがあるようです。何かしら、ひしひしと思いあたることがあるらしいのです。
 明智は殿村のうろたえるありさまを、しりめにかけながら、一同に話しかけました。
「みなさん、ご紹介しましょう。この子どもは、こんなきたないふうをしていますが、けっしてほんとうの乞食ではありません。ぼくの少年助手小林芳雄君です。わざとこんな変装をさせて、先日から、この男を尾行させておいたのです。小林君は殿村の一挙一動を、残るところもなく見とどけました。そして、毎日ぼくに報告していたのです。」
 読者諸君は、この数日、毎晩のように、窓から明智探偵の書斎へしのびこんだ乞食少年をご記憶でしょう。あの異様な乞食少年こそ、今ここにいる小林芳雄君だったのです。
 人々はそれを聞いて、またべつのおどろきにうたれました。「ああ、こんな奥の手が用意してあったのか。やっぱり明智探偵はたいしたものだ。」と、声をのんで感嘆しないではいられませんでした。
「では、この小林君の口から、殿村の秘密をお話しさせることにしましょう。小林君、かいつまんで話してみたまえ。」明智がさしずしますと、乞食少年の小林君は、すぐ快活に語りはじめました。
「ぼくは明智先生の命令で、殿村を尾行しました。そして、殿村が人目をしのびながら、コッソリこの家へはいるのを見とどけたのです。
 そこで、先生とご相談したうえ、殿村のるすを見はからい、ぼくは、この家の屋根裏へしのびこむことにしました。それにはひじょうな苦心をしましたが、けさ、やっとその目的をはたしたのです。
 ぼくは天井の上をはいまわり、天井板にナイフで、下から気づかれぬように、小さいすきまを作って、部屋の中のようすをすき見していたのです。
 そして何もかも見てしまいました。この人はせむしの殿村探偵だけでなくて、また別の人にも化けるのです。三角形のあごひげをはやして、大きなめがねをかけた、五十歳ぐらいのりっぱな紳士に化けるのです。
 この人はそういう姿に化けて、地下室から相川君たち四人の子どもを、じゅんじゅんにこの部屋へ連れてきました。そして、みんなをしばりあげてさるぐつわをはめて、あの石膏像の中へかくしたのです。石膏像の底に大きな穴があいているのです。みんなをひとりひとりその中へいれて、またもとのように立てておいたのです。
 そうして、相川君たちを、おどしつけているとき、この人は自分のことを蛭田博士といっていました。それから、ぼくは殿村が夕方外出するのを待って、事務所へかけつけ、ぼくの見たり聞いたりしたことを、すっかり明智先生に報告したのです。」
 こんなに見とどけられてしまっては、もう運のつきです。殿村の蛭田博士は、まっさおになって、ギリギリと歯がみをしながら、小林君をにらみつけていましたが、なんという強情なやつでしょう。まだ、やせがまんをはって、気でもちがったように、ゲラゲラ笑いだしたのです。
「ワハハハ……、おい、小僧、でたらめもいいかげんにしろ。きさま夢でもみたんじゃないか。このおれが蛭田博士に化けたんだって? ば、ばかな、おれは知らん。おれはそんなまねをしたおぼえはない。」
 しかし、小林少年は少しもひるみませんでした。いきなりきたない着物のふところから、何か髪の毛のかたまりのようなものを取りだして、それを殿村の前にさしつけながら、はげしい口調で、たしなめるように言いました。
「それじゃ、ひとつ、これをかぶってごらんなさい。きみが蛭田博士に化けたときのかつらと、つけひげと、めがねです。きみが昼間、変装をといて、あの衣装部屋へ投げこんでおいたのを、ぼくがソッと手にいれたのです。さあ、これをつけてごらんなさい。そうすれば、きみが蛭田博士かどうか、相川君たちが一目で見わけてくれるでしょう。」
 ああ、さすがは小林少年です。相手にうむをいわせぬ、りっぱなしょうこ品を、ちゃんとにぎっていたのです。
 いくら強情な殿村でも、このかつらや、あごひげをつけて、四人の少年に顔を見せる勇気はありません。もう絶体絶命です。
 殿村は血走った目で、助けでも求めるように、あたりをキョロキョロ見まわしました。そして、ゾッとするようなおそろしい表情になって、ジリリ、ジリリと、あとじさりをはじめたのです。殿村はそのとき、書斎のまんなかの大机の前に立っていたのですが、だんだん、あとじさりをして、机のうしろにまわりました。そして、人々にさとられぬように、そっと机の下の床に出ている小さなボタンのようなものを、ふみつけました。
 ああ、あぶない! それはいつか、相川泰二少年が蛭田博士のために地下室へ落とされた、あのおとし穴をひらくボタンなのです。
 ところが、いったいどうしたということでしょう。殿村がいくらボタンをふんでも部屋の中には、なんの異変もおこらないではありませんか。ちょうど明智探偵と小林少年の立っているあたりの床に、四角な穴があくはずなのですが、そんなようすは少しも見えぬではありませんか。
「ハハハ……。」とつぜん、明智探偵が、さもおかしくてたまらない、というように笑いだしました。
「おいおい、つまらないいたずらはよしたまえ。そのボタンはききゃしないんだよ。こんなこともあろうかと思って、ぼくはこの部屋へ来るまえ、そっと、地下室にはいって、機械装置をとりはずしておいたのだ。いくらきみがふんだって、おとし穴はあきゃしないよ。」
 ああ、なんというぬけめのないやり口でしょう。さすがは名探偵です。これではいかな悪人も、手も足も出ないではありませんか。
「ちくしょう!」殿村は憤怒の形相ものすごく、口をゆがめてさけびました。そして、いきなり身をおどらせて、あいたままになっていた書だなのうしろの衣装部屋へかけこんだかと思うと、とつぜん、パッと電灯が消えて、部屋の中は(すみ)を流したような暗やみになってしまいました。むろん、殿村が衣装部屋にしかけてあるスイッチを切ったのです。
 たちまち暗やみの部屋の中に、そうぞうしい物音がおこりました。何かわめく声、走りまわる靴の音。その中にひときわ高いさけび声が聞こえます。
「みなさん、さわぐことはありません。しずかにしてください。あいつは袋のネズミです。この部屋の出口には、ちゃんと刑事諸君が見はり番をしていてくれるのです。いくら暗やみでも、逃げだすことはできません。」
 それは明智探偵の声でした。明智はこの書斎へはいるまえ、中村警部の部下の刑事たちに、そっと身分をうちあけて、廊下への出口はもちろん、衣装部屋から地下室に通ずるドアの外にも、ちゃんと見はりを立てておいたのです。
 やがて、部屋の中がボーっと明かるくなりました。ろうそくの光です。さいぜん殿村が地下室を案内してまわった燭台が、大机の上においてあったのに気づいて、中村係長がそれに火をつけたのです。
 そのうす明かりをたよりに、明智は衣装部屋にかけこんで、壁にかけならべた衣装のかげまで、くまなくしらべましたが、どこにも人の姿はありません。
「そのドアを、あけたものはありませんか。」地下室に通ずるドアの向こうがわへ声をかけますと、パッとそのドアがひらいて、ふたりの刑事が顔を見せました。
「いいえ、だれもこちらへは来ません。書斎がまっくらになったので、じゅうぶん注意していたのですが。」
 刑事のひとりが懐中電灯を手にしていましたので、明智はそれをかりて、もう一度、衣装部屋を、すみからすみまでさがしました。でも、やっぱり殿村の姿は見えないのです。そのとき、電灯のスイッチもしらべてみましたが、殿村はスイッチのとっ手を引きちぎってしまっているので、きゅうに電灯をつけるわけにいきません。そこで、こんどは反対がわの廊下にあいているドアのところへかけつけてみますと、ここには、外の見はり番にたずねるまでもなく、大ぜいの新聞記者が、おたがいに手をつないで、げんじゅうな通せんぼをしていてくれました。
「ここからはだれも出たものはありません。」記者たちは口々に答えました。
 明智は念のために、懐中電灯をかざして、部屋の窓をしらべてみました。しかし二つの窓はしめきったまま、なんの異状もありませんし、その窓のそばには相川技師長や、四人の少年たちが立っていたのですから、そこからも逃げだせるはずがありません。すると、もう殿村の逃げだす個所は、どこにもないのです。それなのに、明智をはじめ、中村係長や、小林少年や、新聞記者などが、すみからすみまでさがしまわってもあやしい人影はどこにも見えません。じつにふしぎです。蛭田博士は忍術でも使って、煙のように消えうせてしまったのでしょうか。
「みなさん、しばらく動かないで、じっとしていてください。あいつはこの部屋にいるのです。みなさんの中にまぎれこんでいるのです。」
 明智の声に、人々は立ちどまったまま、うすぼんやりしたろうそくの光の中で、おたがいの顔をジロジロとながめあいました。なにしろ相手は、変装の名人です。それにさいぜん、変装の材料がいっぱいならんでいる衣装部屋へとびこんだのですから、どんな変装をしているかもしれたものではありません。
 まさか子どもに化けることはできませんから、小林君や相川君たち五人の少年ははぶくとしても、その部屋には、明智のほかに中村係長、相川技師長、それから、六、七人の新聞記者がいるのです。もしかしたら、中村係長がふたりになっていたりするのではないでしょうか。そう考えると、知りあいの顔をさえ、うたがってみないではいられません。そのうえ、この暗さです。赤茶けたろうそくの光に照らされて、どの人もどの人もなんだかお化けめいた顔つきに見えてきます。
 明智探偵は、立ちすくんでいる人々の顔を、じゅんじゅんに懐中電灯で照らしていきました。最後に新聞記者の一団です。明智は、記者たちの顔をいちいち見おぼえているわけでないのですから、ことに念を入れてしらべなければなりません。
「きみたち記者諸君は、たしか六人でしたね。」明智がたずねますと、
「いや、七人ですよ。廊下の外でかぞえてみたときは、たしか七人でした。」記者のひとりが答えました。
「いや、それじゃ、やっぱり六人です。廊下にいたときは、ぼくもきみたちの仲間だったのですから。」
 いかにもそのときは、明智は、まだ本名を名のらないで、記者のような顔をしていたのでした。
「ああ、そうだ、それじゃあ六人ですね。」
「かぞえてみてください。たしかにきみたちは六人ですか。」
 記者たちは、てんでに仲間の人数をかぞえました。
「おや、へんだな。やっぱり七人いますぜ。」
 それを聞きますと、明智はなぜかにこにこと笑いました。
「そうでしょう。ぼくも、さいぜんからへんだと思っていたのです。」なにげなく、そんなことをつぶやきながら、七人の顔に、つぎつぎ懐中電灯の光をあてていきましたが、やがて、最後の七人めにきたとき、懐中電灯のまるい光が、ピッタリ止まったまま動かなくなりました。
「諸君、この人は何新聞社の人です? 見おぼえがありますか。」
 そこにはまるい光の中に、まるで映画の大写しでも見るように、ひとりの若い新聞記者の姿がうきあがっていました。黒々とした髪を、きれいに分けて、ロイドめがねをかけ、鼻の下にチョビひげをはやしています。
「はてな、きみはどこの社の人だっけ。どうも見おぼえがありませんね。」
 二、三人が同じ意味のことをつぶやきました。
「ハハハ……、見おぼえがないはずですよ。こいつは、きみたちの仲間じゃないのです。……ごらんなさい。じつにすばやく変装したじゃありませんか。」いうかと思うと明智の手がパッと相手の頭にのびました。そして、かつらをむしりとり、めがねをはね落とし、つけひげをひきちぎってしまいました。その中からあらわれたのは、なんと殿村の素顔だったではありませんか。さすがの悪人も、とうとう観念したのか、今にも泣きだしそうな渋面(じゅうめん)をつくって、ものをいう元気もなく目をふせています。
「逃げ道がなくなったものだから、こんなところにまぎれこんでいたんだね。あわよくば、記者諸君といっしょに、何食わぬ顔でこの部屋を出る気だったのだろう。ハハハ……、さすがの悪人も、よくよくこまったとみえるね。中村さん、こいつをとらえてください。」
 いわれるまでもなく、中村係長は、もう殿村の肩に手をかけていました。そして、ドアの外の刑事を呼びこみ、なんなく後ろ手にしばらせました。こうして、怪物蛭田博士は、ついに明智探偵にうち負かされ、あわれなとらわれ人となってしまったのでした。

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