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妖怪博士-美丽的少女

时间: 2021-10-25    进入日语论坛
核心提示:美少女 その部屋は客間らしく、まんなかにテーブルがあって、そのまわりに、みょうなかっこうのイスがならんでいました。なんと
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美少女


 その部屋は客間らしく、まんなかにテーブルがあって、そのまわりに、みょうなかっこうのイスがならんでいました。なんとなくうす暗い陰気な部屋でしたが、すみずみが見わけられぬほどではありません。
 泰二君は、忙しく、そこを見まわしましたが、予期に反して、さいぜんの老人の姿はどこにもありませんでした。そのかわりに、テーブルの足のところに、老人などよりは、もっともっとびっくりするようなものがころがっていたのです。
 それはうす暗い部屋の中に、パッと一輪のバラの花が咲いたように、美しい色彩のものでした。ひとりの美しい少女なのです。目もさめるばかり、はでやかな洋装をした、十六、七歳の絵のように美しい少女なのです。
 しかし泰二君は、そのおねえさまの美しさにおどろいたのではありません。少女のむごたらしいありさまにギョッとしたのです。少女は洋服の上から、太いなわで、手足をグルグル巻きにしばられていました。口には白い(ぬの)で、さるぐつわさえはめてあるのです。
「あの悪者の老人が、おねえさまを、こんなひどいめにあわせたんだな。」泰二君はそう思うと、もうじっとしてはいられませんでした。美しい少女がかわいそうでしかたがないのです。あのおいぼれじじいと一騎うちの勝負をしても、このおねえさまを救わないでおくものかと、少年の胸には、(いさ)ましいいきどおりがこみあげてきました。
 正面のドアはひらいたままになって、その向こうにズッと廊下がつづいているのですが、そこにも怪老人の姿は見えません。きっと、たったひとりでおるす番をしていた、この少女をしばっておいて、何かをぬすむために、奥のほうへはいっていったのにちがいありません。
「よしッ、このまにおねえさまを助けてあげよう。そして、おねえさまにかぎをかりて、老人を家の中へしめこんでしまって、おまわりさんを呼びに行くことにしよう。」
 泰二君はとっさに決心しますと、窓のふちに両手をかけ、学校で習った器械体操の腕まえで、パッと身をおどらせ、みごとに部屋の中へとびこんでしまいました。それから、急いで少女のそばへかけより、ポケットからナイフを出して、なわを切り、
「しっかりしてください。ぼく助けに来たんです。」と、少女の安心するようにささやきながら、だんだん手足のなわをといていきました。
 ところがみょうなことには、なわがおおかたとけてしまっても、少女は石のように身動(みうご)きさえしないのです。
 気をうしなっているのかしらと、肩へ手をあてて、ソッとゆすり動かしてみました。
「しっかりしてください。きみ、しっかりしてください。」
 でも、少女は少しも動きません。いや、そればかりか、なんだか手ざわりがへんなのです。やわらかいはずの肩の肉が、コチコチとかたくてぶきみにつめたいのです。
 泰二君は、それに気がつくと、思わずゾッとしました。このおねえさまは死んでいるのかもしれない。そして本で読んだ死後の硬直(こうちょく)状態になっているのかもしれない、と思ったからです。
 泰二君は、どうしていいのかわからなくなりましたが、なわをといたのですから、さるぐつわもはずしてあげようと、顔の前にまわって、その白い布をとりさろうとしました。
 そして、少女の顔をつくづく見ますと、泰二君はまたしても仰天(ぎょうてん)してしまいました。ああ、なんということでしょう。あんなにも胸をドキドキさせて、助けてあげようと骨折ったこの少女が、人間ではないことがわかったからです。それは、まるで生きているようによくできた、ろう細工の人形がしばられて、さるぐつわをはめられて、そこにころがっていたのです。
 いったいだれが、なんのために、こんなみょうなことをしておいたのでしょう。さいぜんの怪老人が、わざわざ人形をしばったりなんかするはずはありません。老人がここへしのびこむ以前から、この人形はしばられていたのにちがいないのです。
 ろう人形は、そこによこたわったまま、かわいらしいガラスの目で、じっと、泰二君を見あげていました。ほんとうに生きているように美しい顔です。お友だちの桜井(さくらい)君のおねえさまにそっくりです。
 泰二君は、なんだかこわくなってきました。魔法にでもかけられているような、おそろしい夢でもみているような、なんともいえないへんてこな気持ちです。
 あの怪老人はどこへかくれてしまったのか、さっきから、もう十分ほどもたっているのに、もどってくるようすもありません。この古めかしいうす暗い洋館の中に、たったひとりとりのこされたような、うすきみの悪いさびしさです。
 泰二君はしばらく、ものを考える力がなくなってしまったように、ぼんやりとそこにたたずんでいましたが、ふと気がつくと、いつのまにか、部屋の中がまっくらになっているではありませんか。
「おやッ。」と思って、ふりむいてみますと、今しがたまでひらいたままになっていた、ただ一つの窓がいつのまに、だれがしたのか、がんじょうな鉄のよろい戸で、ぴったりとふさがれていることがわかりました。そのよろい戸が外からの光線をさえぎって、こんなに暗くなったのです。泰二君はびっくりして、そこにかけより、両手で力いっぱいよろい戸をひらこうとしましたが、おしても引いてもビクとも動きはしないのです。
 ああ、なんというへんてこな建物でしょう。外から見ただけでも、なんとなくうすきみが悪かったのですが、その部屋の中には、美しい少女の人形が、さも生きた人間のようなかっこうでしばられていたり、人もいないのに、ひとりでに窓のよろい戸がしまったり、まるで化け物屋敷ではありませんか。
 泰二君は、とうとう、まっくらな部屋の中に、とじこめられてしまったのです。出口をさがそうとすれば、奥の廊下のほうへ出てみるほかはありませんが、しかし、そちらには、あのきみの悪い老人が、ニヤニヤ笑いながら待ちかまえているかもしれないのです。
 泰二君はとほうにくれてしまいました。といって、いつまでもこの暗い部屋に、人形とふたりきりでいるわけにはいきません。だいいち、こわくてたまらないのです。少女の人形が、あまりよくできているものですから、暗やみの中で、ヒョッコリ立ちあがりそうな気がして、もういたたまれないほどおそろしいのです。
 そこで、怪老人に出あうのはかくごして、とうとうその部屋から、廊下へ逃げだしてしまいました。
 ビクビクしながら、廊下を見まわしましたが、そのへんに、あの老人がかくれているようすもありません。家中がしいんと静まりかえって、ほんとうにあき家のような感じです。
 廊下はかぎの手にまがっていて、そのところどころにドアがついているのですが、どのドアも中からかぎがかかっているとみえ、とっ手をまわしてみてもあくようすもありません。みんなきみの悪い「あかずの部屋」ばかりです。泰二君は今にも泣きだしそうになるのを、やっとの思いでこらえながら、とうとう、廊下のいちばん奥にある部屋の前までたどりつきました。
 見ると、そのいちばん奥の部屋だけは、ドアが半分ほどあいているのです。「この中にだれかいるのかしら。」と思うと、また、みょうにこわくなってきます。ドアがしまっていればしまっているで、うすきみが悪いし、あいていればあいているで、やっぱりこわいのです。
 でも、いまさらためらっているばあいではありません。泰二君は下腹にグッと力を入れて、勇気をふるいおこしました。そして、そのあいたドアの中を、ヒョイとのぞきこんだのです。

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