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俊一君の危難

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:俊一君の危難お話は、すこしもとにもどって、そのおなじ日の夕方のことでした。マユミさんの弟の、小学校六年生の花崎俊一君は、
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俊一君の危難


お話は、すこしもとにもどって、そのおなじ日の夕方のことでした。マユミさんの弟の、小学校六年生の花崎俊一君は、学校に野球の試合があって、帰りがおそくなり、午後五時すぎに、友だちの野上明のがみあきら君といっしょに、おうちへいそいでいました。世田谷区のさびしいやしき町です。
妖人ゴングの巨大な顔が、俊一君のうちの池の中にあらわれたほどですから、俊一君も、ねえさんのマユミさんと同じように、妖人のために、ねらわれているのかもしれません。明智探偵は、それを心配して、俊一君のおとうさんの花崎検事と相談して、俊一君を、ひとりで歩かせないことにしました。
いま、いっしょに歩いている野上君は、おなじ六年生ですが、学校でも、いちばんからだが大きく、いちばん力の強い少年で、また、少年探偵団の一員なのでした。それで、この野上少年にたのんで、俊一君の護衛をつとめてもらっているわけなのです。
そればかりではありません。明智探偵はもっと用心ぶかかったのです。ごらんなさい。ふたりの少年が歩いていくうしろから、まるでふたりを尾行でもするように、みなりのきたない子どもたちが、ひとり、ふたり、三人、四人、五人、遠くはなれてついてくるではありませんか。
それは、小林少年がつくったチンピラ別働隊の子どもたちです。上野公園で悪いことばかりしている浮浪少年を集めて、すこしでもよいことをさせようと、少年探偵団の別働隊をつくったのです。はじめは二十人以上いたのが、いまでは五人になっています。世のなかがよくなって、浮浪少年がへってきたからです。
この五人のチンピラ別働隊が、やっぱり、俊一君の護衛をつとめているのです。すばしっこい連中ですから、いざとなったら、なかなか役にたちます。
そのとき、人どおりのない広い道のうしろのほうから、砂けむりをあげて、一台の自動車が近づいてきました。そして俊一君のそばまでくると、ぐっと速力をおとし、俊一君とならんで徐行じょこうしていましたが、とつぜん、パッと、自動車のドアがひらき、中から太い手がニューッとでて、あっというまに、俊一君を、車の中へ、ひきずりこんでしまいました。
「あっ、なにをするんだっ!」
いっしょに歩いていた野上君が叫びましたが、もう、あとのまつりでした。自動車はパタンとドアをしめて、グングン、むこうへ走っていきます。
野上少年は、いきなりかけだして、自動車のあとを追いました。それといっしょに、うしろからついてきた五人のチンピラ隊も、かけだしました。
「花崎くーん! 花崎くーん!」
みんなは、口ぐちにわめきながら走りました。青い自動車を追っかける六人の少年、しかもそのうちの五人は、きたならしい浮浪少年です。じつに、へんてこな光景でした。
しかし、いくらいっしょうけんめいに走っても、人間が自動車に追いつけるものではありません。だんだんはなれていくばかりです。
やがて、あまりにぎやかではないが、自動車のよく通る大通りにでました。そして、しあわせなことには、むこうから、からのタクシーが走ってきたのです。
野上少年が、「オーイ。」と呼びとめると、タクシーはとまりました。
「ぼく、少年探偵団のものです。あの青い自動車を追っかけてください。あいてに気づかれないように。……ぼくの友だちが、さらわれたのです。」
野上君がたのみますと、そのタクシーの運転手は、すぐに承知してくれました。まだ二十代の快活な青年運転手でした。
野上君が、ドアをひらいて乗りこむあとから、五人のチンピラも、われさきにと車の中へおしこんできました。三人の座席に、六人がかさなりあって乗ったのです。
「ワー、みんな乗るのかい。きみたちは学生じゃないね。それでみんな少年探偵団なのかい?」
運転手が、びっくりして、たずねました。
「うん、そうだよ。おれたちは、チンピラ別働隊っていうんだ。明智先生と、小林さんの弟子だよ。」
運転手はそれを聞くと、べつにもんくもいわずに車を走らせました。
「あいてに気づかれないようにって、むずかしいな。よっぽど、あいだをへだてなくちゃね。」
青年運転手は、この冒険が気にいったらしく、おもしろそうに、そんなことをいいながら、それでも、たくみに自動車の尾行をつづけるのでした。
だんだん、道がさびしくなり、両がわに、畑や森が見えてきました。もう世田谷区のはずれです。それに、日がくれて、あたりがうす暗くなってきました。
むこうに大きな建物が見えます。日東にっとう映画会社の撮影所です。
青い自動車は、その撮影所の裏がわのいけがきの外でピッタリとまりました。それを見ると、
「とめて! これからさきへいくと、あいてに気づかれる。ぼくたち、ここでおります。待っててくださいね。」
野上君が運転手にたのみました。
「うん、いいとも、きみたちが、どんな活躍をするか、ここから見ているよ。」
青年運転手は、たのしそうに答えました。
少年たちは、車をおりると、はなればなれになって、ものかげをつたいながら、青い自動車に近づいていきました。
青い自動車のドアはひらいていました。そして、そこから、力の強そうな、ふたりの男が、俊一君をつるようにして、外に出ました。
ああ、ごらんなさい。俊一君は、手足をぐるぐる巻きにしばられ、さるぐつわまで、はめられているではありませんか。

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