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「一本の古クギ」

时间: 2016-10-18    进入日语论坛
核心提示: まぶしい朝日に向かってハトの群れが飛んでいく。その軌跡に吸い込まれるように、私は五十数年前の春、中学に進学したばかりの
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 まぶしい朝日に向かってハトの群れが飛んでいく。その軌跡に吸い込まれるように、私は五十数年前の春、中学に進学したばかりの少年のころにタイムスリップしていた。
 私が育った米軍基地の町三沢では、伝書鳩(ばと)の飼育が流行(はや)っていた。鳥が好きだった私も欲しかったが、町営の長屋に八人家族の暮らしがやっとで、それができる余裕はなかった。
 諦(あきら)めきれない。ハトは顔見知りの愛好家から分けてもらうこともできたし、餌は新聞配達をすれば何とかなる。ひとつだけ、鳩小屋をどうするかが悩みのタネだった。
 そうだ、学校だ! 思いついたら走り出していた。科学部の先生に、ハトの観察をしたいので鳩小屋を造ってほしい、とアピールを繰り返し、ひそかな期待を胸に待ち続けた。
 秋風の立つころ、待望の許可が下り、校舎を見渡す高台に鳩小屋を建てた。早速、学校でハトの研究をする-とあちこちに言い回って、すぐに十数羽を集めることができた。
 嬉(うれ)しくて全校朝礼会で発表したのに、たいした話題にもならず、となりクラスのT君だけが毎日のように顔を見せていた。
 彼は小学生のころ転校してきた口数の少ない子だった。ハトを見つめる目はきらきら輝いて、校庭の上空を飛ぶ群れや、ヒナが育つ様子を見に来ては、いつもうらやましそうな表情を残して帰って行くのだった。
 「オラも、ハト欲しい」
 彼は唐突に言った。なかなか言い出せなかったのは、彼を取り巻く事情が私と同じように、それを許さない厳しさだったのだろう。
 分けてやった四羽の翼が触れ合うほど小さな鳩小屋でも、彼は目を細めて坊主頭をかきむしり、喜びを隠しきれない様子だった。
 学校の帰り道、暮れ残る薄明かりに影を引きながら、棒切れで土をほじくる彼の姿があった。顔を上げ、ニッと笑って突き出したバケツの中に、古クギがぎっしり詰まっていた。
 壊れた家屋の周りや瓦礫(がれき)が山積みの広場にもぐり込み、赤錆(さ)びた古クギを一本ずつ丹念に拾っていたのだ。廃鉄商に持っていけば、それがお金に換わって、一本の古クギが一粒の餌になった。指先の爪(つめ)は土くれを噛(か)んで黒ずんでいた。彼の問題解決の方法は、地面とにらめっこの途方もない根気の積み重ねだった。
 日曜日の午後、あわてて走って来た彼が、
 「大変だ、ハトがいねぇ。だけどKの小屋に似たのがいる」と早口に言う。
 駆けつけると、たしかに彼のハトが混じっている。同じような羽色でも一目でわかる。しかし、彼のハトは足環が切られて素足になっていた。年上のKは、お前のハトの証拠をみせろとばかりに無視を続ける。
 足環には、ハトの名前でもある番号が刻印されていて持ち主がわかる。それがなければ、自分が何者かの証明ができない。足環は、そのハトが誰からも認められる伝書鳩としての、存在と生い立ちを明らかにする証(あかし)なのだ。
 彼と私はハトを返せと懸命に迫った。するとKは、私に向き直り責めるように言った。
 「お前、こったら朝鮮の味方するのかッ」
 その言葉はハトの問題とは別の、私と彼のそれぞれの心を揺さぶる容赦ないものだった。
 Kはフンと鼻先で笑うと、ハトを空に放った。四羽のうち、私の鳩小屋に馴(な)れていた二羽は戻ってきたものの、あとの二羽は行方不明になった。別のハトをやるからと慰めたが、彼は哀(かな)しそうに首を振り、足環をなくした二羽を抱いて帰って行った。
 Kとのことがあってから、彼は私の鳩小屋に姿を見せなくなった。廊下ですれ違うときや、体育館で横に並んだときに話しかけても、無言のまま私を避ける態度に変わっていった。
 それに腹を立てた私は、バケツを下げた胸ぐらを掴(つか)んで詰め寄ると、彼は力なくうつむき、絞り出すように口を開いた。
 「おさむ、日本人だべ、足環、ついてるべ。オラ朝鮮人だ。足環、ねぇんだ。もう構うな、迷惑かけたくねぇ。構わねぇでけろ!」
 二年生の夏休みの朝、新聞配達を終えて鳩小屋に行くと、林檎(りんご)箱に足環のないつがいと、その仔(こ)が入れられ、かたわらに肥料袋の少しの餌とバケツ半分の古クギが置かれていた。胸騒ぎがして彼の家へ走った。しかし、そこ一帯は静まり返り、住人の気配はなかった。
 休み明け、先生に尋ねると、彼の家族は船に乗って朝鮮に帰った、と教えてくれた。
 バケツ半分の一本一本の古クギには、Kの罵倒(ばとう)にたじろいだ私を知りながら、それでも私にハトを託す彼の願いが込められていた。
 「ハトになりてぇなぁ。空、飛びてぇなぁ」
 校庭の空を飛ぶ群れを見つめて、彼はいつもそう言った。もし、それが叶(かな)うのなら、彼が飛びたかった空はどこにあったのだろう。
 私のハトと彼のハトは同じ空を飛んでいたのに、なぜ、足環があっても、なくてもハトはハトなんだ、と言ってやれなかったのか。
 遠く過ぎた少年の日と、朝日に輝くハトの群れは、ほろ苦い思いを残して雲間に消えていく。
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