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「耳たぶの思い出」

时间: 2017-09-03    进入日语论坛
核心提示: 幼かった娘が大好きだったもの、それは私の「耳たぶ」だ。甘えたい時、眠い時、不安な時、いつだって娘は私の耳たぶを求めた。
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 幼かった娘が大好きだったもの、それは私の「耳たぶ」だ。甘えたい時、眠い時、不安な時、いつだって娘は私の耳たぶを求めた。小さい温かい指で触れられると、とてもくすぐったかった。何だかほんのり心地よくなって、ついつい私の方が先に眠りこんでしまうこともしばしばあった。
 そんなある晩のこと。いつも娘の右側で寝ていた私は、たまたま左側で眠っていた。娘が動く気配で目が覚めると、娘が右側にいるパパの方に転がっていくのが目に入った。そしてパパの耳たぶを触り始めたのである。あれ?と思った瞬間、娘の手がとまり、目がはっと見開かれるのが分かった。右、左、ときょろきょろ頭を動かすと、あわてて私の方に寄ってきて、耳たぶを触り始めたのである。
 --娘は、私と主人をまちがえたのだ。でも耳たぶの感触ですぐに気づいたのだろう。安心しきった娘の寝顔を見ながら、おかしくて思わずふきだしてしまった。
 娘に耳たぶをゆだねている時は、なぜか母乳をあげていた時と同じ気持ちになれた。肌と肌が触れあう温かさ、ぬくもり。求められる嬉しさ、母としての喜び、無垢な優しさがじんわりと胸に広がっていく。
 けれども、娘は私の耳たぶを卒業してしまった。遠慮がちに触っているなあと感じるようになったある晩、触りやすくしてあげようと頭の向きを変えた時、娘の指がふと離れた。そしてそれ以来、娘の指が私の耳たぶに触れることはなくなってしまった。
 私が嫌がって向きを変えたと思ったのか?それとも卒乳の時のように、娘なりに時期を感じたのか?今だにそれは分からない。
 「耳たぶなんて覚えてないよ。」と八才になった娘は笑う。それでも、私は決して忘れないだろう。あの頃耳たぶに感じていた小さなぬくもりを。ささやかな幸せの一時を。
 --娘よ。すてきな思い出を残してくれてありがとう!
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