そのデパートは、幼い頃、僕が母とゆっくり話をする時間を与えてくれた「魔法のデパート」だったような気がする。
うちの両親の仕事は「床屋」だ。店舗兼住宅で、僕が幼い頃は忙しくて、夜の10時すぎまで仕事をしていることがざらだったし、学校が休みの日曜日にも、他の友人達のように、母に、どこかへ遊びに連れて行ってもらった記憶はない。
ただ風邪をこじらした時、近所に小児科がなく、母が隣町の大きな病院まで連れていってくれた。その帰り、決まって、そのデパートの最上階にあった大食堂で「チャーハン」と「クリームソーダ」を二人で注文した。
熱で苦しいはずなのに、この時とばかり、母に、学校のこと、友達のこと、幼稚園に通っている妹のことなど、いろんな話を夢中でした。頭の中が、ぼぉーとしているのに、母の笑った顔が見たくて一生懸命しゃべった。
きっと、母もこんな時ぐらいしか、僕の相手をしてあげられないと思って、多分「お店」では、お客さんが大勢待っているのに、僕がしゃべり疲れるまで、ニコニコ笑いながら聞いてくれていた。
注文した「チャーハン」と「クリームソーダ」には、二人とも、一口か二口ぐらいしか、手をつけていなかったと思う。でも、そのアンバランスな「味の組み合わせのハーモニー」はいまでも忘れられない。
72歳になった母は、今でも現役で「お店」にでている。今度は、僕が母の「話」をゆっくりと聞いてあげる番だ。
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