赤い十字のペンダント
ほのぼのと心に灯がともる
いとおしみながら
そっと握りしめてみる
滴一滴としたたる 血潮
わたしの分身は
ひとり歩きし
凍結され 旅だってゆく
白い部屋をカルテを抱えて
ナースが足早に行きかう
ワゴンが静かに滑ってゆく
わたしとあなたは
細い管で結ばれた いのち
弾けたざくろに似た臓腑が
メスを握った外科医にゆだねられ
切断されてゆく
あなたは深い ねむりの中で
ペンペン草の実の鳴る音を聞き
ねこじゃらしで頬や喉をくすぐりあった
幼い頃の夢をみた
みどりの風が吹いてきた
長い髪を無造作にかきあげながら
街角を歩けば
赤い十字のペンダントは
柱時計の振子の振幅になり 楽しげに
わたしの まあるい 胸でゆれている
今日もまた
救急車のサイレンが聞えてくる
鮮血を求める悲鳴のように…