ピッと水の中で割れた硝子の器を
手探りで拾うような
生温い不安
薔薇との呼応の中では
生きることの惰性は
影を潜めてしまう
それは
私の「時」をも停止させる
一つの焔だ
しんなりと柔らかく
崩れるように
からみ合っている花弁は
寡黙な女の髪の毛のように
芯の方から冷えてくる
開ききった薔薇は
夥しい情欲と感傷を重ねながら
褪せていく時間までも
誇らしげに見せつけて
ただ
音もなく
暮れていくのか
空ではない
無ではない
曇った鏡が
しだいに
結像していくような
恐ろしいまでの
手応えがある