引き返してほしいと願う
私の必死な叫びのなかを
流れていった水子たち
三回の流産を乗り越えて
また身ごもった
羊水に浮かぶ命を
いつも感じていたくて
五感を研ぎ澄ます
ただそれだけのために今がある
生き延びたい胎児
生かしてやりたい私
ふたつの想いが重なって青く脈を打つ
胎内で息づいているものの
生と死を
おおいなるものにゆだねたその先に
燦と手を招く
予定日と言う
道しるべが立っている
吾子は生まれた
秋の風が運んでくる
銀色の光を身にまといながら
そして まっさらな未来を
まるごと私の両の手に投げかける
息子がはたちになった日私は告げた
あなたの誕生を支えたのは
水子たちの
か細い六本の腕だと
僕生まれてきてラッキー
ためらうことなく息子は言った
自らの生に頷いたまっすぐな言葉の線上から
二十年前の
産声が届けられる
喜び 戸惑い
そして 悲しみにさえ満ち満ちた
大きな大きな産声が