さっきまで降り続けた雨は
一体
どこにいってしまったのか
橋を流し 畑を潰し
それでもまだ
鬱鬱を押さえきれずに
ヒトをも壊した
あの雨粒たちは
吐き出した漆黒のあれこれは
どこに どの辺りに
隠れてしまったのか
目の前に拡がる
灰色泥色の
海に繋がっている砂浜には
雨粒の欠片も見えず
ちらちらと
望(しお)潮(まねき)が顔を出す
ここは私達の場所
ここからは私達の出番
邪魔者はいらない
この鋏をごらん
強いよ 恐いよ 大きいよ
ここは私達の住処
持って行きようのない鬱鬱なんて
抱えようもない鬱鬱なんて
私達は知らない
ただ
私達はここで生きているだけ
くいくいと
望(しお)潮(まねき)が私を威嚇する
ゆたゆたと繰り返す波音
水の引いた
海に繋がる砂浜には
望(しお)潮(まねき)が住んでいる