おばあさんは毎日、食べるものをもらってくらしていましたが、ある日、マメをもらったので、さっそく土にまきました。
マメはドンドン大きくなって、ついには天までとどくばかりになりました。
おばあさんは、
(マメの木のてっぺんは、どんなだろう?)
と、思って、のぼっていきました。
すると、ふしぎな納屋(なや→ものおき)がありました。
中に入ると、脱穀機(だっこくき)が金のからつぶをガラガラまわしていました。
「ありゃ、これはとんでもないものを見ちまった」
おばあさんは、あわてて下へおりていきました。
ところが、いつのまにか、おばあさんのうでの中にツボが入っています。
ツボの中にはタマゴがいっぱい入っていて、おばあさんはタマゴをそっと、わきの下に入れると、家に帰っていきました。
ツボは、とてもふしぎなツボでした。
おばあさんがミルクを飲みたいと思うと、ちゃんとミルクが入っているのです。
おばあさんが大よろこびしていると、わきの下のタマゴがかえって、
「はい、お母さん、コケコッコーッ」
と、オンドリがとび出しました。
おばあさんは友だちができたので、うれしくてたまりません。
ミルクもたっぷり飲めて、食べものをもらうこともなくなりました。
ふしぎなツボのうわさは、すぐに金持ちの耳に入りました。
金持ちはある日、
「火事だ!」
と、さわいで、おばあさんの家から、ツボをぬすみ出してしまいました。
そして、
「ミルクが出せるなら、お酒も出せるだろう」
と、ツボになみなみとお酒を出させて、毎日あびるようにのみました。
家の者にもお客にも、ドンドン飲ませたので、金持ちの家はよっぱらいだらけになり、村一番のきたならしい家になりました。
「お母さん、ツボをとり返してくるよ」
ある日、オンドリはおばあさんにいって、金持ちの家までとんでいきました。
オンドリは、金持ちの屋根にとまるとさけびました。
?コケコッコーッ
?金持ちの飲んでるお酒はぬすんだお酒
?金持ちはとんでもないぬすっとだ
これを聞いた金持ちも、家の人もビックリ、あわててオンドリをつかまえました。
金持ちは、オンドリを井戸(いど)になげこみました。
ところが、オンドリは水をぜんぶ飲みほして、また、屋根の上にとびあがりました。
?コケコッコーッ
?金持ちの飲んでるお酒はぬすんだお酒
金持ちはまた、オンドリをつかまえて、ストーブの中にほうりこみました。
オンドリは、井戸の水をはき出して火をけすと、
?コケコッコーッ
?金持ちはぬすっと
と、さけびました。
金持ちは、今度は金庫の中にオンドリをとじこめました。
けれど、オンドリはお金をみんな飲みこんで、金庫をやぶってコケコッコーと出てきました。
「ええい、いまいましい」
金持ちは、とうとうオンドリの首をきって、焼いて食べてしまいました。
すると、今度は金持ちのおなかの中から、
?コケコッコーッ。
金持ちはほとほとまいって、オンドリをはき出すと、おばあさんの家にツボを返しにいきました。
「コッコちゃん、ありがとうよ」
おばあさんはオンドリのもってきた金貨とツボのおかげで、つつましく幸せにくらしたということです。