チームは2015年、沖縄本島の北西約150キロで、深さ約1000メートルの海底を無人探査機で調査。噴出孔を中心に最大約100メートルの範囲を調べ、下から上に向かって乾電池の数分の1程度の電流を確認したという。
海底下でできる熱水には硫化水素など電子を放出しやすい物質が多く含まれる一方、海底上の海水は電子を受け取りやすい物質を多く含む。噴出孔付近の海底は、電気をよく通す硫化鉱物が沈殿した特有の状態であることも、電流発生に働いているという。
地球の生命は約40億年前、高温高圧の熱水噴出孔の周りで誕生したとの説がある。だが、生命のもとになる有機物から、DNAや組織など生物に欠かせない複雑な分子がどのように作られたかは不明だ。チームの山本正浩・同機構研究員は「熱水噴出孔の周辺は『天然の発電所』。この電気エネルギーが生命誕生の鍵となったかもしれない」と話している。