米科学誌「ネイチャー?エコロジー?アンド?エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に発表された研究によると、この傾向が商業漁業の対象となっている他の海洋生物種にも当てはまるなら、体長の縮小が、保護措置の必要性を知らせる早期の警報として機能する可能性があるという。ひとたび個体群が崩壊すれば、その回復は困難を極める。
18世紀から捕獲の対象となっていたクジラ種の多くは、1986年の「商業捕鯨モラトリアム」によって絶滅から救われた。しかし、抜け穴が多いこの措置の下では、今なお毎年1000頭以上のクジラが捕殺されているのが現状だ。
スイス?チューリヒ大学(University of Zurich)のクリストファー?クレメンツ(Christopher Clements)氏率いる研究チームは、国際捕鯨委員会(IWC)がまとめたクジラの体長や捕獲数などを含む年次記録を、1900年前後までさかのぼって詳細に調べた。この頃に、それまでの「狩り」を大量捕獲に転換させる新たな技術が登場した。
「商業捕鯨が行われていたこの期間中に、捕獲されたクジラの平均体長が70年間で最大4メートル減と劇的に縮小したことが、今回の研究で明らかになった」と、論文は指摘している。
学術誌「Marine Fisheries Review」に最近掲載された個体数調査によると、20世紀中に商業捕鯨によって姿を消したクジラの数は300万頭近くに上るという。
■警戒信号は早い時期から
クレメンツ氏と研究チームは、捕獲量全体の80%を占めた、イワシクジラ、ナガスクジラ、シロナガスクジラとマッコウクジラの4種を重点的に調査した。シロナガスクジラは地球上最大の動物だ。
論文には「漁業による圧力は、クジラの個体群が崩壊するまで高い状態が続き、商業捕鯨の継続が困難になった時点で新たなクジラ種に移行した」と記された。
イワシクジラ、ナガスクジラ、シロナガスクジラについては、捕獲数の急減が起きる20~30年前から体長の縮小が始まっていた。マッコウクジラについては、体長の縮小が20世紀のほぼ全体にわたって徐々に進行しており、年間捕獲数が急落する40年以上も前には既に明確に現れていた。「4種すべてに関して、警戒信号が早い時期に現れていた」と研究チームは指摘する。
体長や他の身体的特徴の変化に基づくこの予測モデルは、高い漁業圧にさらされている魚や他の海生動物にも適用できる可能性がある。
例えば、フカヒレの採取を目的として毎年数千万匹のサメが殺されているが、最上位の捕食者であるサメの体長が、局地的または世界規模の個体群の健全性に関する手がかりを提供する可能性がある。
天然のカレイやヒラメ、サケ、ロブスターなども、こうしたアプローチから恩恵が得られるかもしれない。
*難しい言葉*
【フカヒレ】鱼翅