実験したのは、鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)で飼育されているシロイルカの「ナック」(推定32歳)。まず、潜水などで使うフィン(足ひれ)を見せたら「ピィ」と鳴いたり、「丄」の文字を選んだりするようにそれぞれ訓練。また、それとは逆に音声を聞かせたり、文字を見せたりするとフィンを選べるようになった。さらに、文字と鳴き方の関連は教えていないのに、フィンがなくても「丄」を見せると「ピィ」と鳴き、「ピィ」と聞かせると「丄」を選べるようになった。村山さんは「このような覚え方をするのは人だけだ。チンパンジーやオウムはできない」と注目する。
マスク、バケツ、長靴も同様に、それぞれを表す鳴き方と文字を覚えることができた。実験ではヒントを与えないように人の視線を隠したほか、ほうびの餌も与えなかった。
イルカは、口ではなく頭の上にある呼吸孔(こきゅうこう)から鳴き声を出す。ナックは飼育員が言葉に出した「ピヨピヨ」「おはよう」など8種類の言葉をまねた鳴き声を出したことで、2014年に注目を集めた。ただし、この時は単なるオウム返しだった。
村山さんは「ナックは物の意味を理解していると言える。次は動詞を覚えさせることに挑戦し、人とコミュニケーションができるようにさせたい」と話す。