―重力波って
質量を持つ物体が動いた時に生じる時空の「ひずみ」が、さざ波のように伝わる現象。1916年にアインシュタインが「一般相対性理論」の中で予言した。極めて小さいため、ブラックホール同士の合体のように、非常に重い天体が高速で運動する際に生じたものでないと観測できない。他の物質にほとんど影響を受けずに届くため、光や電波では見えない宇宙誕生直後の姿を直接観測する手段になると期待されているんだ。
―どうやって検出するの
LIGOは一辺4キロの真空パイプ2本をL字形に配置し、パイプ内部で鏡を使ってレーザー光線を何度も往復させる。普段は両辺の往復時間は同じだけど、重力波が到達して時空のひずみが生じると、ごくわずかな距離だけ1辺が長く、もう1辺が短くなる。この変化を、レーザーの往復時間の差で検出するんだ。
―実際の検出は?
LIGOは2015年9月、太陽の約29倍と36倍の質量を持つブラックホール同士が、約13億年前に合体した際に生じた重力波を検出した。検出された「ひずみ」は、太陽と地球の距離が水素原子1個分伸び縮みする程度の、とてつもなく小さいものだった。
―日本の関与は?
日本も1999年、一辺300メートルの「TAMA300」という装置で検出を目指した。残念ながら検出できなかったけど、経験は今建設中の「KAGRA(かぐら)」に引き継がれているよ。
―KAGRAって
東京大宇宙線研究所が岐阜県飛騨市の地下に建設中の検出器で、2019年の本格稼働を目指している。L字の一辺は約3キロ。地下トンネルで防振性を高め、レーザーを反射する鏡を低温にするなど、さまざまな工夫で世界最高の検出感度が期待されている。
―どんな成果が期待できる?
15年のノーベル物理学賞受賞者で、計画を率いる梶田隆章さんは、「かぐらが加わることで、重力波の発生源を高い精度で特定できるようになる。一般相対性理論が本当に正しいのか、検証する糸口になる」と話している。重力波はまだ4例が検出されたばかり。かぐらが加わって検出例が増えれば、まだまだノーベル賞級の発見ができるかもしれない。