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第一部 第六章 薄明(3)_恐怖の谷(恐怖谷)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:「そのとおり。こんどの事件についての彼女の陳述をきいただけでも、妻としてはあまり感心できない。きみも知ってのとおり、ワト
(单词翻译:双击或拖选)

「そのとおり。こんどの事件についての彼女の陳述をきいただけでも、妻としてはあまり

感心できない。きみも知ってのとおり、ワトソン君、ぼくは、もともとそれほど熱心な女

性崇拝者ではないのだが、それでもこれまでの経験から、いやしくも夫を大切に思う妻な

ら、ほかの男のいうなりになって夫の死体をほったらかしにしておくようなことはしない

ものだ、ということくらいはわかっているつもりだよ。もしぼくが結婚でもすることにな

れば、ワトソン君、すぐそばに夫の死体がころがっているというのに、駆けよってみよう

ともせずに家政婦に連れられておとなしくその場を立ち去ってしまう、なんてことをしな

いだけの情操くらいは妻に植えつけておきたいものだと思うね。あれはへたな演出だっ

た。女らしい涙ひとつみせなかったとあっては、どんなに駈けだしの探偵でも、おかしい

と思うにきまってるよ。ほかのことはさておき、この一件だけでも、ぼくには何かあらか

じめ仕組まれたものを感じさせるにじゅうぶんだね」

「じゃきみは、バーカーとダグラス夫人がこんどの事件の犯人だとみてまちがいないと考

えているわけなんだね?」

「そうあからさまにきかれると、どきっとするよ、ワトソン君」パイプを私のほうに振っ

てみせながら、ホームズが言った。「まるで弾丸をぶちこまれたような気がする。もしき

みの質問が、ダグラス夫人とバーカーはこんどの殺人事件の真相を知っていながら、しめ

しあわせてそれを隠しているのか、ということなら自信をもってお答えできるよ。そう、

たしかにふたりは知っていながら隠している。でもそれをさらに踏みこえて、ふたりが犯

人かということになれば、事態はそう簡単ではないのだよ。そこでひっかかってくる問題

を少し考えてみよう。

 まず最初に、あのふたりは不倫の愛でむすばれていて、じゃまになった夫を消してしま

おうと決心したと仮定してみる。かなり大胆な仮定だけどね。召使いやそのほかの周囲の

ものたちにそれとなくきいてみても、それを裏づけるような証言はなにひとつ得られな

かったのだから。それどころか、夫婦仲はきわめてよかったという証言が返ってくるほう

が、はるかに多かったときている」

「ぼくにはそうは思えないね」私は、庭でみた美しい笑顔を思いうかべながら、言った。

「なるほど。でもね、少なくともまわりのものにそういう印象をあたえていたことだけは

事実なんだ。しかしもしかりにバーカーと夫人が人並みはずれてしたたかな連中で、この

点でもみんなの目をあざむき、共謀して夫殺しをたくらんだとしてみよう。たまたま夫の

ダグラスはいつも何かの危険におびやかされていて――」

「それもしかしあのふたりが言っているだけだ」

 ホームズは一瞬考えこんで、

「なるほど、ワトソン君、きみは、あのふたりの言っていることは何から何まですべてう

そだとみるんだね。するときみの考えでは、なぞめいた脅迫とか、秘密結社とか、恐怖の

谷とか、マク何とか親分とか、そういったものはすべてでっちあげにすぎないということ

になるわけだ。なるほど、面白い。非常にすっきりした意見だね。でもそうだとするとど

ういうことになるか、考えてみよう。ふたりは、うその犯人をこしらえるために、そう

いった理屈をあみだしたとする。その理屈をもっともらしくみせるために、さも外部のも

ののしわざであるかのごとく、自転車をしげみのなかに隠しておいた。窓わくの血のあと

も、同じ魂胆からわざとつけたわけだ。死体のそばの紙きれにしたって、あらかじめあの

屋敷でこしらえておいたのかもしれない。ここまではすべて、きみの仮説でたしかに説明

がつくよ、ワトソン君。ところが、ここにひとつだけ、きみの仮説ではどうしてもつじつ

まのあわないやっかいな事実があるんだ。なぜよりによって銃身を切りつめた猟銃なんか

を使ったのだろう? しかもこともあろうにアメリカ製のやつなんかをだよ? 銃声をき

いて誰かが駆けつけてくるような心配はないなどという確信は、いったいどこから生まれ

たのだろう? ドアのしまるような音をきいたアレン夫人が、不審に思って部屋からとび

ださなかったのは、実際、まったくの偶然にすぎなかったのだからね。もしふたりを犯人

だとするのなら、彼らはなぜこんな危ない橋をわたったのだろう、ワトソン君」

「正直いって、その点はぼくにも説明がつかないんだ」

「まだある。人妻が愛人と共謀して夫殺しをたくらんだとして、まるで自分たちがやりま

したといわんばかりに、死体の指からこれみよがしに結婚指輪を抜きとったりなんかする

ものかね? そんなことをする人間がいると思うかい、ワトソン君?」

「いや、思わないよ」

「さらにまだある。自転車をわざと隠しておくという手を思いつくまではいいとしても、

自転車は逃げる身にとって何よりの必需品ともいえるものなのだから、どんなへぼ探偵に

でも見えすいたごまかしだと見ぬかれるにきまっているというのに、それをあえて実行す

るようなばかがいると思うかい?」

「ぼくには説明がつかないよ」

「しかしだよ、人間の頭では説明のつかないような出来事がいくつも重なりあうなんてこ

とはありえないはずなのだ。そこで、事実かどうかはさておき、たんなる思考訓練のひと

つとして、どういうことが想定しうるかを考えてみよう。たしかに想像にしかすぎない

が、しかし想像が真実の母となった例はいくつもあるはずだからね。

 そこでまず、このダグラスという男の生活には、何かやましい秘密、人にはいえないほ

ど恥ずかしい秘密があったと仮定してみよう。そのために殺された、復讐されたものとし

よう――したがって外部のものによってね。そしてこの復讐者は、正直いって私にもなぜ

だかいまのところわからないのだが、死体から結婚指輪を抜きとっていった。もしかして

こんどの復讐は、ダグラスの最初の結婚に根ざしたもので、指輪の一件もそのせいなのか

もしれない。さて、この復讐者がまだあの部屋から逃げ去らないうちに、バーカーと夫人

とが駆けこんできた。そこで犯人は、もし自分をつかまえようとすれば、恥さらしな不名

誉な秘密を世間にばらすといっておどす。ふたりはおどしに負け、しかたなく逃がしてや

る。そのため、ふたりはおそらく橋をおろしてやり、再びあげておいたのだろう。橋のあ

げおろしは、音をほとんどたてずにできるからね。そして犯人はまんまと逃げたわけだ。

しかも何らかの理由で、自転車を使うよりは歩いて逃げたほうが安全だと思ったのだ。そ

こで、自転車はとりあえずうまく逃げおおせるまで見つからないようにと、手頃なところ

に隠しておいた。と、ここまでは可能の域を脱していないと思うのだが、どうだい?」

「そうだね、たしかにありえないことではないね」私はいくぶん遠慮して言った。

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