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第二部 第十三章 危機(1)

时间: 2024-01-18    进入日语论坛
核心提示:第十三章 危機 恐怖の支配は頂点に達した。すでに支部長補佐役に抜てきされていたマクマードは、いずれはマギンティのあとを継
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第十三章 危機

 恐怖の支配は頂点に達した。すでに支部長補佐役に抜てきされていたマクマードは、い

ずれはマギンティのあとを継いで支部長になる人物であることが衆目の一致するところで

あり、もはや彼の助力と助言なくしては会議すらなりたたないほどの、重要な人物になっ

ていた。しかしながら「自由民団」の内部での人気が高まれば高まるほど、ヴァーミッサ

の町ですれ違う人々の彼を見る目はいっそう冷たいものになっていた。

 市民たちは、恐怖におののきながらも、一致団結してひるまずに圧政者に立ち向かおう

とする姿勢をみせはじめた。ヘラルド新聞社で秘密の集会が開かれたとか、善良な一般市

民たちの間で火器の配布が行われたとかいううわさが支部の耳にもはいってきた。だがマ

ギンティも部下の者たちも、そのようなうわさにはびくともしなかった。こちらは大勢だ

し、闘志満々、武器にも不自由しない。それにひきかえ相手はまとまりに欠け、もろくて

弱い。だからどうせこんどもいままで同様、たんなるうわさ話に終わるか、せいぜい二、

三の者が逮捕されるくらいでけりがつくにきまっている。マギンティやマクマードをはじ

め、ずぶとい連中はみんなそういっていた。

 五月のある土曜日の晩のことだった。土曜日の晩はいつも支部の集会があったので、マ

クマードがそれに出席するため下宿を出ようとしていると、支部の小心者モリスが会いに

やってきた。心労のため額にしわをきざみ、やさしそうな顔をひきつらせて、やつれはて

ている。

「マクマード君、今日はきみと心おきなく話がしたくてやってきたんだが」

「いいとも」

「いつかきみに本心をうちあけたことがあったが、きみがそれを誰にももらさず、親分自

らがきみのところへそのことで探りを入れにやってきたときですら黙っていてくれたこと

は、本当にありがたく思っているよ」

「あんたの信頼を裏切るようなまねはできないからな。といって、あんたの話に賛成した

わけじゃないんだぜ」

「よくわかっている。だが何を話しても安心していられるのはきみだけだよ。私はここに

秘密を」――彼は胸に手をあてた――「もっているんだが、そのために身を焼かれる思い

だ。よりによってこの私が知るはめになるなんて。もしこれを口外すれば、どうせまた人

が殺されるにきまっている。といって黙っていれば、われわれみんなの破滅は目にみえて

いる。ああ神様、なんとかしてくれ。でないと私は気が狂いそうだ!」

 マクマードは真剣な表情で相手の男をみた。手足ががたがたふるえている。彼はグラス

にウイスキーを注いで相手にわたしてやった。

「いまのあんたにはこれがなによりの薬だ。さて、で、その話というのをきこうじゃない

か」

 モリスはウイスキーを飲んだ。青白い顔にほんのりと赤みがさしてきた。

「話というのはごく簡単、探偵がわれわれをつけねらっているんだ」

 マクマードはあ然として相手をみつめた。

「なんだって、おい、気でも狂ったか! この土地に警官や探偵がうようよしているの

は、なにもいまにはじまったことじゃない。だからといって、おれたちが一度だって危害

をこうむったことがあったかい?」

「いや、ちがうんだ。こんどのはここいらの連中とはわけがちがうんだよ。なるほどこの

土地のやつらならたかが知れているさ。たいしたことはできやしない。だがピンカートン

探偵社のうわさはきいたことがあるだろう?」

「そういう名の連中のことは何かで読んだことがあるな」

「うそはいわん、あの連中にねらわれたらひとたまりもないよ。やる気のないお役所仕事

の連中とはわけがちがう。仕事となると死に物狂いでとりくんできて、ねらった獲物をと

ことんまで追いつめ、ぜったいとり逃がさないやつらなんだ。だからピンカートンのやつ

らがひとりでも本気でここの仕事に乗りだしてきたら、われわれはみんなおだぶつだよ」

「殺してしまうしかないな」

「ほれ、きみはすぐそうくるだろう! 支部の連中だってそういうにきまってる。だから

結局人殺しを招く結果になるだけだっていったんだ」

「いったい人殺しがなんだっていうんだい? このへんじゃごくあたりまえのことじゃな

いか?」

「そりゃそうだが、でも殺されるはめになる男の名をわざわざ教えるようなまねは、私に

はできないよ。そんなことをすれば、一生心の休まるときはないだろうからね。といって

ほっとけば、危ないのはこっちの首だし。いったい私はどうすりゃいいんだろう?」彼は

決断の苦しさに耐えかねて、からだを大きくゆすった。

 だが彼の言葉は、マクマードの心を強く動かしていた。危険が迫っていてなんとか手を

うつ必要があるという点では、彼もモリスと同意見であるらしいことは容易にみてとれ

た。彼はモリスの肩をつかみ、真剣になってゆすぶった。

「おい、よくきくんだ」彼は叫んだ。興奮のあまり、ほとんど絶叫に近かった。「亭主に

死なれたばあさんじゃあるまいし、そんなところで泣き言をいってたってはじまらない

ぜ。事実をはっきりさせようじゃないか。そいつは何というやつなんだ? どこにい

る? どこからそいつのことをきいたんだ? なぜわざわざおれに知らせにきた?」

「なぜってそりゃ、相談相手になってくれるのはきみしかいないからだよ。私はここへ来

るまえは東部で店をもっていたってことは、いつかきみにいったろう。そういうわけで、

向こうには親友が少なくないんだけど、そのうちのひとりが電信局に勤めているんだ。と

ころがきのう、その男からこんな手紙がきてね。で、ここんとこの、この頁の上あたりか

らなんだけど、ちょっと読んでみてごらんよ」

 マクマードが読んだのは、つぎのような一文だった。

 そちらでのスコウラーズの様子はいかが? こちらの新聞には彼らの記事がしょっちゅ

うでています。これは内密の話ですが、近いうちにきみから面白い知らせが頂けるものと

期待しています。といいますのも、じつは、五つの大企業と二つの鉄道会社がついに本腰

を入れてこの問題に取りくみはじめたからです。いざやるとなれば、必ずやりとげるで

しょう。もうすでにかなり力を注いでいるようで、ピンカートン探偵社が依頼をうけて乗

りだし、同社きっての腕利き探偵バーディ・エドワーズが調査にあたっていますから、悪

事が一掃される日もそれほど遠くないでしょう。

「追伸のところも読んでみてごらん」

 もちろん以上お伝えしたことは、私が業務上たまたま知りえたことにすぎず、これ以上

のことはわかりかねます。なにしろ相手は職場で毎日うんざりするほど扱っている、わけ

のわからない奇妙な暗号文なものですから。

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