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第二部 第十三章 危機(3)_恐怖の谷(恐怖谷)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: 自分の逃亡の準備がひとまずできたので、マクマードはいくらか安心して、支部へ向かった。もうすでに集会ははじまっていて、出
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 自分の逃亡の準備がひとまずできたので、マクマードはいくらか安心して、支部へ向

かった。もうすでに集会ははじまっていて、出入口を外側と内側から厳重に見張っている

ふたりの男とややこしい合図をかわしたあげく、やっと奥へはいれた。集会室にはいる

と、喜びにみちた歓迎のざわめきが彼を包んだ。細長い部屋は人であふれ、もうもうと立

ちこめる煙草の煙の中に、支部長の黒いもじゃもじゃ頭や、ボールドウィンの冷たい残忍

な顔、秘書のハラウェイのはげたかのような顔、そのほか支部の幹部連中の顔が十人あま

り見えた。彼は例の情報を討議するのにふさわしい顔ぶれがそろっているのを見て、うれ

しく思った。

「やあ、いいところへきてくれた、同志!」議長が叫んだ。「おまえの知恵を借りなきゃ

ならん問題があってな」

「ランダーとイーガンのことなんだよ」彼が席につくと、となりの男が教えてくれた。

「スタイルズタウンでのクラップ老人射殺のことで、支部の賞金をめぐって、撃ったのは

おれのほうだといってふたりが争っているんだが、どっちの弾丸 たま があたったかなんて、

誰にもわかるまい?」

 するとマクマードはさっと立ちあがって、手をあげた。その顔つきをみて一同はしんと

静まりかえり、固唾 かたず をのんでみまもった。

「支部長殿、緊急動議を提出します」彼は厳粛な口調でいった。

「同志マクマードは緊急動議があるという。したがって、支部の規定によりこれを優先さ

せることにする。さあ、同志、述べたまえ」マギンティがいった。

 マクマードはポケットから例の手紙をとりだした。

「支部長殿ならびに同志諸君、私は本日ここに悪い知らせをもってまいりました。このま

まではわれわれは不意打ちをくらい、全滅することになりかねず、それよりは前もってみ

なさんにお知らせして、論議していただくにこしたことはないと考えた次第です。私の入

手しましたる情報によりますと、この州でも有数の富と力を誇る大企業たちが一致団結し

て、われわれの撲滅へ向けて動きだしております。すでにいまこの瞬間にも、バーディ・

エドワーズと称するピンカートン探偵社の男が、この谷にて証拠の収集にあたっており、

われわれの多くをしばり首にし、この部屋にいる諸君をひとり残らず重罪犯として独房へ

ぶちこむ下準備をすすめております。こういった事態に対し、なんらかの対応策を講じる

必要があるかと思い、あえてみなさんにおはかりした次第です」

 場内は水を打ったように静まりかえった。それを破ったのは議長の声だった。

「同志マクマード、いったい何を証拠にそんなことをいうのだ?」

「私の入手しましたこの手紙がなによりの証拠です」そういって、マクマードは問題の箇

所を読みあげた。「この手紙については、約束にもとづきこれ以上はどうしても申しあげ

るわけにはいきません。またおわたしするわけにもいかないのです。しかしいま読んでお

きかせしたところ以外は、支部の利害とはまったく無関係であることを保証いたします。

私としては、みなさんに申しあげるべきことはすべてありのままに申しあげた次第です」

「議長、ちょっといいですか」年配の連中のひとりがいった。「バーディ・エドワーズの

うわさはじつは私も耳にしたことがあります。ピンカートン探偵社のなかでもいちばんの

腕利きだというもっぱらの評判です」

「誰かやつの顔を知っている者があるか?」マギンティがたずねた。

「私が知っています」マクマードがいった。

 みんなは一斉に驚いて、場内がざわめいた。

「ですからわれわれの手に負えない相手では決してありません」彼は勝ち誇ったような笑

みをうかべて、「こちらが迅速かつ巧妙に行動すれば、ことは簡単にけりがつくはずで

す。私を信頼し力を貸してくだされば、何も恐れることはありません」

「そもそもいったい何を恐れなきゃいけないんだい? そんなやつにしっぽをつかまれて

たまるもんか」

「みんながみんな、議長さんのようにしっかりしているのであれば、そうもいえましょ

う。しかしこの男には、資本家の巨億の富が後ろについているのです。この支部には金で

ころぶような弱い者は一人もいない、といいきれますか? 必ずどこかからわれわれの秘

密をかぎつけるでしょう――おそらくもうつかんでいるかもしれません。確実な対応策は

ただひとつあるのみです」

「この谷から生かして帰さぬことだ」ボールドウィンがいった。

 マクマードはうなずいた。

「そのとおりだ、同志ボールドウィン。きみとはしばしば意見を異にしてきたが、今夜の

きみの言葉はすっかり気に入ったぜ」

「で、その男はどこにいるんだ? おれたちはどうやってやつを見分けりゃいいんだ」

「支部長殿」マクマードは真剣な表情でいった。「この件は支部の死活にかかわる重要な

問題ですから、公 おおやけ の場で論議するのはふさわしくないと考えるのですが、いかがでしょ

う? といってなにもここに列席のみなさんを疑っているわけでは、決してありません。

しかしもし万一、うわさめいたものがたとえほんの少しでもこの男の耳にはいるようなこ

とがありますと、こちらの勝ち目はまずなくなります。よって私は、支部の信任のもとに

特別委員会を設けることを提案いたします。私の考えとしましては、議長、まずあなたを

はじめとして、ここにいる同志ボールドウィン、そしてさらにあと五名ばかりの方に加

わっていただければよいかと思います。その席でならば、私は私の知りえたこと及びとる

べき方策についての私なりの考えを、率直に申しあげるつもりでおります」

 この提案はただちに採択され、委員会の顔ぶれがきまった。議長とボールドウィンのほ

かに、はげたかのような顔のハラウェイ秘書、残忍な青年殺し屋「虎」のコーマック、会

計係

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