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第二部 第十四章 罠(2)

时间: 2024-01-18    进入日语论坛
核心提示:「そこで考えたんですが、みんなには大きな部屋――いつかあなたと話をしたことのある例の部屋で待ってもらうんです。おれはドア
(单词翻译:双击或拖选)

「そこで考えたんですが、みんなには大きな部屋――いつかあなたと話をしたことのある

例の部屋で待ってもらうんです。おれはドアをあけてやつを迎え入れたら、まず玄関わき

の客間へ通しておいて、書類をとりに奥へ引っこみます。そうすれば、そのすきにみんな

にようすを伝えることができますからね。それからおれはでたらめの書類をもってやつの

ところへもどります。やつがそれを読んでいるところを、おれはいきなりとびかかって、

やつの利き腕にしがみつきます。で、おれの呼ぶ声をきいたら、みんなはすぐとびこんで

きて下さい。できるだけ早いほうがいいです。腕力はほぼ互角だろうし、ことによるとお

れの手におえないかもしれませんからね。でもみんながくるまでは、なんとかもちこたえ

てみせますよ」

「そりゃ名案だ。こんどのことでは支部はおまえに感謝せねばなるまいな。これで、おれ

が支部長の座をしりぞく際には、安心して後任を推薦できるってもんだぜ」

「とんでもない、議員さん、おれなんかまだほんの駆けだしですよ」マクマードはそう

いったものの、その顔にはまんざらでもないようすがにじみでていた。

 下宿へ帰ると、彼は目前に迫った運命の一夜に備えて準備にとりかかった。まずスミ

ス・アンド・ウェッソンを掃除し、油をさし、弾丸 たま をこめた。それから探偵をおとしい

れる部屋をしらべた。かなり大きな部屋で、中央には細長いもみ材のテーブルがあり、あ

との三方にはそれぞれ窓があった。鎧戸はついてなかった――ただうすいカーテンがつる

されているだけである。マクマードはそれらを丹念に見てまわった。今夜のような秘密の

仕事をやるには少し開放的すぎると思ったにちがいない。でも街道から引っこんでいるお

かげで、それも支障をきたすほどのことではなかった。最後に彼は同宿のスキャンランと

相談した。スキャンランもスコウラーズの一員ではあったが、仲間の意見にあえて逆らえ

るほどの勇気もなく、ときどき手伝わされる血なまぐさい仕事にも内心びくびくしながら

つきあっているといった、毒にも薬にもならない小心者だった。マクマードは今晩の計画

を手みじかに話してやった。

「マイク・スキャンラン、だからおれだったら今夜はこんなところにいないで、どこかよ

そへいってるよ。今夜中にここで血をみるのは必至なんだから」

「そうかい、いやなに、マック、おれだってなにもやる気がねえわけじゃねえのだが、ど

うにも気が弱くてね。こないだも例の炭坑で経営者のダンがやられるのをみたときにゃ、

じつはあまりいい気持ちがしなかったんだ。おれはあんたやマギンティとはちがって、ど

うやらこういったことには向いてねえんだな。支部ににらまれることさえなきゃ、あんた

のいうとおりにして、今夜はあんたたちにまかせるよ」

 みんなは打ちあわせどおりの時刻にやってきた。小ざっぱりとした服装に身を包んだそ

の外見だけをみれば、りっぱな市民としか思えないが、その冷酷な口もとや残忍な目つき

をよくみれば、バーディ・エドワーズの助かる見込みはほとんどないことが、はっきりと

うかがえた。連中はひとり残らず、いままでに十回やそこらは手を血で赤く染めたことの

ある男たちだった。まるで肉屋が羊を殺すように、平気で人間を殺す連中だった。なかで

もとりわけ残忍だったのは、顔つきといいふるまいといい、いうまでもなくマギンティ親

分だった。秘書のハラウェイは、ほっそりとしたみるからに意地悪そうな男で、やせこけ

たひょろ長い首をしていて、手足を神経質そうにぴくぴく動かすくせがあった――支部の

財政に関するかぎりは清廉で信頼のおける人物だったが、それ以外のことになると、正義

とか誠実とかいった観念はひとかけらももちあわせていなかった。会計係のカーターは、

冷淡な、どちらかといえばむっつりした顔つきの、黄色い羊皮紙みたいな皮膚をした中年

男だった。策を練ることにたけ、いままで行ってきた悪事の実際的計画は、ほとんど彼の

ずる賢い頭から生まれたものだった。ウイラビー兄弟は二人ともしなやかなからだつきを

した長身の行動家で、顔には決然たる闘志をみなぎらせていた。兄弟と仲のいい「虎」の

コーマックは、ずんぐりした色黒の若者で、その凶暴な性質は仲間からさえも恐れられて

いた。その夜、ピンカートンの探偵を殺すためにマクマードの下宿に集まってきたのは、

ざっとかくのごとき連中だった。

 主人役のマクマードがテーブルの上にウイスキーをだしておいたので、みんなは仕事前

の景気づけにと、あわただしげにそれを飲んでいた。ボールドウィンとコーマックはすで

にかなり酔いがまわっており、早くも凶暴性を発揮しはじめていた。コーマックは両手で

ストーヴにちょっとさわってみた――春とはいえ夜はまだ冷えるので、火がいれてあった

のである。

「これならいけるぜ」彼は憎しみをこめていった。

「そうだとも」ボールドウィンは彼のいわんとするところを察して、「そいつへしばりつ

けてやったら、やつも泥を吐くにちがいねえ」

「心配しなくとも、泥は必ず吐かせてみせるぜ」マクマードがいった。このマクマードと

いう男は、鋼鉄の神経の持主だった。今夜の仕事の全責任を一人で背負っていながら顔色

ひとつ変えず、じつに平然とかまえている。ほかの連中もそれに気がついて、さかんに感

心していた。

「おまえにまかせておけば安心だ」親分は満足そうにいった。「おまえにのどをしめあげ

られるまで、やつはなんにも気がつくまい。窓に鎧戸がないのが残念だな」

 マクマードは窓のカーテンをしめてまわった。

「これでもう外からはのぞかれやしない。そろそろくるころだな」

「くるとはかぎらんさ。危険をかぎつけたかもしれねえ」秘書がいった。

「だいじょうぶ、必ずくるさ」マクマードがいった。「こっちが会いたがってるのと同

様、向こうもきたがってるんだから。ほら、きいたか!」

 みんなはまるで蝋人形のように、身動きひとつしなかった。口へもっていきかけたグラ

スを途中でとめた者もいた。玄関のドアをたたく大きな音が三つきこえた。

「しいっ!」マクマードは片手をあげて注意を促した。一同は喜びに輝かせた目をたがい

に見かわし、それぞれ隠しもっているピストルに手をやった。

「ぜったいに音をたてるんじゃないぞ!」マクマードはそうささやくと、ドアをそっとし

めて部屋の外に消えた。

 殺し屋たちは耳をすまし、固唾 かたず をのんで待った。廊下をいく仲間の足音を耳で追っ

た。玄関のドアをあける音がきこえた。何やらあいさつめいた言葉がかわされている。す

ると誰かが家の中へ足を踏み入れる音がきこえ、ききなれない声がひびいてきた。つづい

て玄関のドアがしまり、鍵がまわされる。獲物はまんまと罠にかかったのだ。「虎」の

コーマックがげらげら笑いだしたので、マギンティ親分はあわててその口を大きな手でぴ

しゃりとおさえた。

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