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第二部 第十四章 罠(3)

时间: 2024-01-18    进入日语论坛
核心提示:「しずかにしねえか、このばか! だいなしにする気か」 となりの部屋から、何やらぼそぼそと話す声がきこえてきた。それがやけ
(单词翻译:双击或拖选)

「しずかにしねえか、このばか! だいなしにする気か」

 となりの部屋から、何やらぼそぼそと話す声がきこえてきた。それがやけに長く感じら

れる。するとようやくドアが開き、マクマードが唇に指をあてて姿を現した。

 彼はテーブルのはしまでいって、一同を見まわした。彼のようすがどことなくさっきと

ちがっている。まるでこれから大仕事をやってのけようとする者のような態度だった。顔

には断固たる決意がみなぎり、眼鏡の奥の目は激しい闘志に燃えている。彼が一座の主導

権を握ってしまったことはどうみても明らかだった。みんなは好奇の目を輝かせてじっと

彼を見つめたが、彼は何もいわない。異様な目つきでいつまでも一同を見まわしている。

「どうした、きたのか? バーディ・エドワーズはきたのか?」マギンティがついにたま

りかねて叫んだ。

「きた」マクマードはゆっくりと答えた。「バーディ・エドワーズはここにいる。おれが

そのバーディ・エドワーズだ!」

 十秒ばかり、部屋には人がいないのではないかと思われるくらい、深い沈黙があった。

ストーヴの上で煮えたぎるやかんの音だけが、するどく耳にひびいてくる。七つのまっ青

な顔が、恐怖のあまり凍りついたようになって、彼らの前に君臨する男を呆然と仰ぎみて

いる。すると突然、窓ガラスの砕け散る音がして、窓という窓から冷たく光る銃身がのぞ

きこみ、あっという間にカーテンがむしりとられた。これを見てマギンティ親分は、手負

いの熊のようにうなり声をあげ、半ば開いたままのドアめがけて突進していった。だがそ

こにもピストルがねらいをつけて待ちかまえており、鉱山警察のマーヴィン隊長の青い目

が照準のうしろできびしく光っていた。親分はあとずさりして、もとの椅子に倒れこん

だ。

「そこにいるほうが身のためだよ、議員さん」いままでマクマードとして知られていた男

が、いった。「それからボールドウィン、そのピストルから手をはなさないと、死刑執行

人の仕事が一人ぶん減ることになるぞ。さ、はやくしろ。さもないと――よし、それでい

いんだ。この家は四十人もの武装警官で包囲されている。逃げられるものかどうか、

ちょっと頭を働かせればわかるはずだ。マーヴィン、こいつらの銃をとりあげてくれ!」

 ライフル銃をぐるりからつきつけられたのでは、もはや抵抗のしようもなかった。一同

は武器をとりあげられ、悄然としてふてくされながらも、おとなしくテーブルのまわりに

すわっていた。

「別れる前にひと言いっておきたいことがある」一同を罠にかけた男がいった。「これ

で、こんどは法廷の証人席に立つときまで、おまえらに会う機会はまずあるまい。それま

でにいまからいうことをじっくり考えてみるがいい。おれの正体はもうわかったはずだ。

やっとたねをあかせるときがきたってわけだ。おれこそ何を隠そう、ピンカートン探偵社

のバーディ・エドワーズだ。おれはおまえら一味をぶっつぶす役をおおせつかった。これ

は困難で、危険をともなう勝負だった。誰ひとりとして、最も親しい者や最愛の者です

ら、おれがやろうとしていることを知らなかった。知っていたのは、ここにいるマーヴィ

ン隊長とこの仕事の依頼主だけだった。だがありがたいことに、それも今晩でおわった。

そしておれは勝ったのだ!」

 七つの青ざめてこわばった顔が彼を見あげた。それらの目には、激しい憎悪があふれん

ばかりに煮えたぎっていた。彼はそこにぞっとするような威嚇を読みとった。

「おそらくおまえらは、勝負はまだついていないと思っているだろう。なら、おれはいつ

でも相手になってやる。だがいずれにせよ、おまえらの中にはこれを最後にもう二度と勝

負にいどめなくなる者もいる、ということを忘れるな。それに、今夜中にぶた箱へぶちこ

まれる者が、おまえたちのほかにも六十人ばかりいるはずだ。じつをいうとこの仕事をま

かせられたとき、正直いっておまえらのような組織が現実にあるなんて信じられなかっ

た。どうせ根も葉もないうわさ話にすぎないんだろうから、それならそれで、そのことを

証明してやればいいと思っていた。きくところによると『自由民団』に関係があるらしい

ということだったので、早速シカゴへいって、入団してみた。ところがそこは悪事にはお

よそ縁のない、むしろ善意あふれる団体だったので、ますますもって、これはたんなるう

わさ話にすぎないと確信するようになった。それでも仕事を放り出すわけにはいかなかっ

たので、ものはためしとこの炭坑の谷へやってきた。ここへきて初めて、自分の考えがま

ちがっていたことがわかった。三文小説にあるようないいかげんな話ではなかったのだ。

それで、おれはここに踏みとどまって調べてみることにした。おれはシカゴで人を殺した

ことなんてないし、にせ金をつくった覚えもありゃしない。おまえたちにくれてやったの

は全部、りっぱに通用する本物の金だ。でもあんなに有効に金を使ったのは初めてだぜ。

おれはおまえたちに気に入られるこつを知っていた。それで、法に追われているふりをし

たのだ。で、そういったことはすべて思いどおりに運んだってわけさ。

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