そら豆が、「私もすんでのところで逃げたのよ。だけどおばあさんが鍋に入れてしまったら、仲間みたいに情け容赦なくスープにされてしまうところだったわ。」と言いました。「僕も同じ目にあうところだったよ。」とわらが言いました。「おばあさんは僕の兄弟たちをみんな殺して火と煙にしちゃった。一度に60人をつかまえて命を奪ったんだ。僕はさいわいにおばあさんの指をすりぬけたけどね。」「だけど僕たちどうしようか?」と炭がいいました。「思うに」と豆が答えました。「私たちは運よく死ななくて済んだんだから、お友達になって一緒にいましょう。ここだとまた悪いことが起こるといけないから、一緒に出て行って、よその国でやり直さない?」その提案は他の二人の気に入り、三人は一緒にでかけました。
しかし、まもなく三人は小さな川にやってきて、橋も渡り板もなかったので、どうしたら向こうに渡れるかわかりませんでした。わらが良い考えを思いつき、「僕がまっすぐ向こうに寝転がろう、そうしたら橋みたいに僕の上を歩いて渡れるよ。」と言いました。それでわらはこちらの岸から向こう岸へ体を伸ばし、炭は、せっかちな性格だったので、新しく建てられた橋の上で思いっきりつまづきました。それでも真ん中に着いて、足元で水がゴーゴー流れているのが聞こえたとき、結局、怖くなり、立ち止まって前へ進もうとしませんでした。ところが、わらが燃え始め、二つに割れて、川におちたので、炭はそのあとを滑り落ち、水に入った時シューと音を立てて最後の息をひきとりました。
そら豆は、用心してまだ岸に残っていましたが、その様子を見て笑わずにはいられませんでした。そして笑い止めることができなくて、ひどく笑ったので破裂してしまいました。豆もまたお終いになっていたはずでしたが、運よく仕事を捜して旅をしていた仕立て屋が川のそばで座って休んでいて、思いやりの心があったので、針と糸をとりだし、豆を縫い合わせました。豆はとても可愛らしく仕立て屋にお礼を言いました。しかし、仕立て屋が黒糸を使ったので、その時から豆にはみんな黒い縫い目があるのです。