狐はお祝いの席でご馳走を食べ、陽気にして、そのあとで、「奥様、子どもの世話をするのは私たちの義務です。強い体にするには良い食べ物を食べさせなくてはいけません。すばらしい御馳走をとれる羊小屋を知っていますよ。」と言いました。狼はその考えが気に入って、狐と一緒に農家の庭に出かけて行きました。狐は遠くから小屋を指差し、「あそこから見られないで忍びこめます。その間私はニワトリをとれるか向こう側を見てきます。」と言いました。ところが狐はそこに行かないで森の入口に座り脚を伸ばして休んでいました。
狼は羊小屋に忍び込みました。そこに犬がいてさんざん吠えたのでお百姓が走って出てきて、狼をつかまえ、衣類などを洗うために用意してあった強力な揮発油を狼の毛皮にふりかけ、火をつけました。狼はほうほうのていで逃げて足を引きずりながら外にでました。そこに狐がいて、文句たらたらのふりをして言いました。「ああ、奥様、なんともひどい目にあいました。お百姓たちが私に襲いかかって、手足がみんな折れてしまいました。ここにいて死んで欲しくないと思ってくださるなら、背負ってくれませんか」狼は自分でもゆっくりしか歩けませんでしたが、狐のことが心配だったので、狐を背負い、のろのろ運びました。狐はすっかり無事で家に着きました。すると狐は狼に叫びました。「ははは、さよなら、奥様、味わった焼き物が奥様の身になりますように。」心の底から笑いながら跳ねていってしまいました。