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【夕顔篇】夕顔の咲く辺り

时间: 2014-06-16    进入日语论坛
核心提示:◆ 夕顔の咲く辺り六条わたりの御忍び歩(あり)きのころ、内裏(うち)よりまかでたまふ中宿(なかやど)りに、「大弐(だいに
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◆ 夕顔の咲く辺り

六条わたりの御忍び歩(あり)きのころ、内裏(うち)よりまかでたまふ中宿(なかやど)りに、「大弐(だいに)の乳母(めのと)のいたくわづらひて尼になりにける、とぶらはむ」とて、五条なる家尋ねておはしたり。
 
 御車入(い)るべき門(かど)は鎖(さ)したりければ、人して惟光召させて、待たせたまひけるほど、むつかしげなる大路(おほぢ)のさまを見渡したまへるに、この家のかたはらに、檜垣(ひがき)といふもの新しうして、上は半蔀(はじとみ)四五間ばかり上げわたして、簾などもいと白う涼しげなるに、をかしき額(ひたひ)つきの透き影、あまた見えて覗(のぞ)く。立ちさまよふらむ下(しも)つ方思ひやるに、あながちに丈(たけ)高き心地ぞする。「いかなる者の集へるならむ」と、様(やう)変はりて思さる。
 
 御車もいたくやつしたまへり、前駆(さき)も追はせたまはず、「誰(たれ)とか知らむ」とうちとけたまひて、すこしさし覗きたまへれば、門は蔀(しとみ)のやうなるを、押し上げたる、見入れのほどなく、ものはかなき住まひを、あはれに、「何処(いづこ)かさして」と思ほしなせば、玉の台(うてな)も同じことなり。
 
 切り懸(か)けだつ物に、いと青やかなる葛(かづら)の心地よげに這(は)ひかかれるに、白き花ぞ、おのれひとり笑みの眉(まゆ)開けたる。「遠方人(をちかたびと)にもの申す」と、ひとりごちたまふを、御隋身(みずゐじん)つい居て、「かの白く咲けるをなむ、夕顔と申しはべる。花の名は人めきて、かうあやしき垣根になむ咲きはべりける」と申す。げにいと小家(こいへ)がちに、むつかしげなるわたりの、この面(も)かの面、あやしくうちよろぼひて、むねむねしからぬ軒のつまなどに這ひまつはれたるを、「口惜しの花の契りや。一房折りて参れ」とのたまへば、この押し上げたる門(かど)に入りて折る。
 
 さすがに、ざれたる遣(や)り戸口に、黄なる生絹(すずし)の単袴(ひとへばかま)、長く着なしたる童(わらは)の、をかしげなる出で来て、うち招く。白き扇のいたうこがしたるを、「これに置きて参らせよ。枝も情けなげなめる花を」とて取らせたれば、門開けて惟光の朝臣(あそん)出で来たるして、奉らす。「鍵を置き惑はしはべりて、いと不便(ふびん)なるわざなりや。もののあやめ見たまひ分くべき人もはべらぬわたりなれど、らうがはしき大路(おほぢ)に立ちおはしまして」と、かしこまり申す。引き入れて、下りたまふ。
 
(現代語訳)
 
 
 六条辺りに、源氏がお忍び通いをなさっていたころ、宮中から出て行かれる途中のお休み場所として、「大弍の乳母が重い病気になって尼になっていたのを、お見舞いしよう」ということで、五条にあるその家を訪ねていらっしゃった。
 
 お車が入るべき正門は閉ざしてあったので、源氏は従者に惟光を呼びにやらせ、お待ちになっている間、むさ苦しげな大路の様子を見渡していらっしゃると、この家の隣に、桧垣というものを新しく作って、上方は半蔀を四、五間ほどずらりと吊り上げて、簾などもとても白く涼しそうなところに、美しい額つきをした透き影が、たくさん見えてこちらを覗いている。立ち動き回っているらしい下半身を想像すると、やたらに背が高い感じがする。源氏は、「どのような者が集まっているのだろう」と、風変わりな思いをなさる。
 
 源氏は、お車もたいそう地味になさり、従者に先払いもおさせにならず、「誰とも分かろうはずがない」と気をお許しなり、少し覗いてご覧になっていると、門は蔀のようなのを押し上げてあって、その奥行きもなくささやかな住まいであり、しみじみと、「どの家を終生の住みかとできようか」とお考えになってみると、立派な御殿も同じことである。
 
 切り懸けめいた板塀に、とても青々とした蔓(つる)草が気持ちよさそうに這いまつわっているところに、真っ白い花が、自分ひとりにこやかに明るく咲いている。「遠方の人にお尋ねする」と独り言をおっしゃると、御随身がひざまずいて、「あの白く咲いている花を、夕顔と申します。花の名は人を連想させますが、このようなみすぼらしい家の垣根に咲くのでございます」と申し上げる。なるほど辺りは小さい家が多く、むさ苦しそうな所で、この家もあの家も見苦しくよろけ傾いて、頼りなさそうな軒の端などに這いまつわっているのを、「気の毒な花の定めよ。一枝手折ってまいれ」とおっしゃるので、この押し上げてある門から入って折った。
 
 そうは言うものの、しゃれて趣のある遣戸口に、黄色い生絹の単袴を、長く着こなした女童で、かわいらしげな子が出て来て、ちょっと手招きをする。白い扇でたいそう香を薫きしめたのを出して、「これに載せて差し上げなさいませ。枝も風情なさそうな花ですもの」と言って渡したので、御随身は門を開けて出てきた惟光朝臣に託して、源氏に差し上げさせた。惟光は、「鍵を置き忘れまして、大変ご迷惑をおかけいたしました。どなた様と分別申し上げられる者もおりませぬ辺りですが、ごみどみした往来にお立ちになられて」とお詫び申し上げた。車を引き入れて、源氏はお降りになった。
 
(注)大弍の乳母 ・・・ 源氏の乳母。源氏の家来である惟光の母。
(注)半蔀 ・・・ 「蔀」は格子の裏に板を張った板壁。「半蔀」は上半分が蔀となって外側に吊り上げられるようになっている。
(注)切り懸けだつ ・・・ 柱に横板を少しずつずらして打ちつけた板塀。
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