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白夜行7-3

时间: 2017-01-17    进入日语论坛
核心提示: 出窓から入ってくる風は、すっかり秋のものになっていた。この部屋を初めて見に来た時には、梅雨らしい細かい雨が降っていたも
(单词翻译:双击或拖选)
 出窓から入ってくる風は、すっかり秋のものになっていた。この部屋を初めて見に来た時には、梅雨らしい細かい雨が降っていたものだったがと、つい三か月ほど前のことを高宮誠は思い出していた。
「絶好の引っ越し日和ねえ」床を乾拭《からぶ》きしていた頼子《よりこ》が、手を休めていった。「お天気だけが心配だったんだけれど、これなら運ぶ人たちも助かるわね、きっと」
「引っ越し屋はプロだぜ。天気なんか、さほど関係ないよ」
「あらあ、そんなことないわよ。山下さんのところなんか、お嫁さんの荷物の入るのが先月だったでしょ? 台風で大変だったとおっしゃってたわ」
「台風なんか特別だよ。もう十月だぜ」
「十月だって、大雨の降ることがあるじゃない」
 頼子が再び手を動かし始めた時、インターホンのチャイムが鳴った。
「誰かな」
「雪穂さんじゃないの?」
「でも彼女なら、鍵を持っているはずだけどな」そういいながら誠は、リビングルームの壁に取り付けられたインターホン用の受話器を取り上げた。
「はい」
「あたし。雪穂です」
「なんだ、やっぱり君か。鍵を忘れたのかい?」
「そうじゃないけど……」
「ふうん。とにかく開けるよ」
 誠はオートロックの解錠ボタンを押した。それから玄関に行き、鍵を外すと、ドアを開けて待った。
 エレベータの止まる音がし、足音が近づいてきた。やがて廊下の角から唐沢雪穂が姿を見せた。薄いグリーンのニットを着て、白いコットンパンツを穿いていた。上着を手に持っているのは、今日は特別暖かいからだろう。
「やあ」と誠は笑いかけた。
「ごめんなさい。いろいろと買い物をしていたら、遅くなっちゃった」雪穂は手に持っていたスーパーの袋を見せた。その中には洗剤やスポンジ、ゴム手袋などが入っていた。
「掃除なら、先週済ませたじゃないか」
「でもあれから一週間経っているし、家具を入れたりしたら、きっとあちこち汚れると思うから」
 彼女の言葉に、誠は頭をゆらゆらと振った。
「女ってのは、同じことをいうんだな。お袋もそういって、掃除用具を一式持ってきているんだ」
「あっ、じゃあ早くお手伝いしなきゃ」雪穂はあわてた様子でスニーカーを脱ぎ始めた。それを見て誠は意外な気がした。彼女が履くのはいつも、踵《かかと》の高い靴ばかりだったからだ。そういえば雪穂のパンツルックを見るのも初めてだった。
 そのことをいうと、彼女はちょっと呆《あき》れた顔をした。
「お引っ越しの日にスカートだったり、ハイヒールを履いてたりしたら、仕事が何もできないじゃない」
「そういうことよ」奥から声がした。シャツの袖をまくった頼子が、笑いながら出てきた。
「こんにちは、雪穂さん」
「こんにちは」雪穂はぺこりと頭を下げた。
「この子は昔からこうなのよ。自分で部屋の掃除をしたことがないものだから、拭いたり掃いたりするのがどれだけ大変かってことを知らないの。たぶんこれからも雪穂さんに苦労をかけると思うから、覚悟しておいてね」
「ええ、それは大丈夫です」
 頼子と雪穂はリビングルームに行くと、早速掃除の段取りを決め始めた。二人のやりとりを聞きながら、誠はさっきと同じように出窓のそばに立ち、すぐ下の道路を見下ろした。そろそろ家具屋が到着する頃だった。電器屋には、家具屋にいったよりも一時間遅い時刻を指示してある。
 いよいよだな、と誠は思った。あと二週間で、所帯を持つことになる。これまではなかなか実感が湧かなかったが、さすがにここまで近づくと、少し緊張感が出てきた。
 雪穂は早くもエプロンをつけ、隣の和室の畳を拭き始めていた。そういう家庭的な格好をしても、彼女の美しさは少しも損なわれることがなかった。つまり本物の美人ということだ。
 丸四年か、と誠は口の中で呟いた。雪穂と付き合ってきた期間のことだ。
 彼が雪穂と知り合ったのは、大学四年の時だった。彼が所属していた永明大学ソシアルダンス部は清華女子大のソシアルダンス部と合同で練習を行っていたが、そこへ彼女が入部してきたのだ。
 何人かいた新入生の中でも、雪穂は特別輝いて見えた。整った顔立ち、均整のとれたプロポーションは、そのままファッション雑誌の表紙を飾れそうだった。多くの男子部員が彼女にひかれ、彼女を恋人にすることを夢見た。
 誠もその中の一人だった。その頃《ころ》付き合っている相手がいなかったこともあるが、一目見た時から彼女に心を奪われた。
 それでもきっかけがなければ、彼が雪穂に交際を申し込むことなどなかっただろう。何人かの部員が、彼女にふられたことを知っていたからだ。自分も恥をかくことになるだけだと思い込んでいた。
 ところがある時雪穂のほうから、どうしてもマスターできないステップがあるので教えて欲しいといってきた。誠にとって絶好のチャンスが訪れたわけだ。彼はマンツーマンでダンスの特訓をするという名目で、皆のアイドルを独占する時間を得ることに成功した。
 さらに、そうした二人だけの練習を重ねるうちに、雪穂のほうも自分に対して悪い印象は持っていないようだという感触を、誠は抱くようになった。そこである日思い切ってデートに誘ってみた。
 じっと誠を見つめてきた雪穂の返答は、次のようなものだった。
「どこへ連れていってくれるんですか」
 誠は踊りだしたい気持ちを抑え、「君の好きなところ」と答えた。
 結局その時にはミュージカルを見て、イタリアンレストランで食事をした。そしてもちろん彼女の家まで送った。
 それから四年あまり、二人は恋人同士であり続けた。
 あの時彼女のほうからダンスを教えてくれといってこなかったら、たぶん自分たちが交際することはなかっただろうと誠は思う。翌年には彼は卒業していたから、その後は全く顔を合わせなくなっていたに違いない。そう思うと、唯一のチャンスをものにしたという感じがする。
 また、ある女子部員が退部したことも、二人の関係に微妙な影響を及ぼしていた。じつは誠にはもう一人、気になっている新入部員がいた。当時彼は雪穂のことを高嶺《たかね》の花のように思っていたから、そちらの彼女のほうに交際を申し込もうかと思ったりもしていた。川島江利子というその女子部員には、雪穂のような華やかさはないが、一緒にいるだけで安らぎが得られるような独特の雰囲気があった。
 ところが川島江利子は、突然ダンス部を辞めた。彼女と親しかった雪穂も、その詳しい理由は知らないということだった。
 江利子が退部せず、誠が交際を申し込んでいたらどうなっていたか。仮に断られたとしても、その後雪穂に乗り換えるようなことはしなかっただろうと彼は思う。そうなれば、現在の状況も全く違ったものになっていたはずだ。少なくとも、二週間後に都内のホテルで雪穂と結婚することはなかった。
 人の運命とはわからないものだ――そう実感せざるをえない。
「ところで、どうして鍵を持っているのにインターホンを鳴らしたんだい?」カウンターキッチンの掃除をしている雪穂に、誠は訊いた。
「だって、勝手に入るなんてことできないじゃない」手を休めずに彼女は答えた。
「どうして? そのために君にも鍵を渡したんじゃないか」
「でも、まだ結婚式が終わってないのに」
「そんなこと、別に気にする必要ないのに」
 するとまたしても頼子が横から口を挟んできた。
「けじめをつけるってことよねえ」そして二週間後には嫁になる女性に笑いかける。
 雪穂は二週間後に姑になる女に頷き返した。
 誠は吐息をつき、窓の外に目を戻した。彼の母親は、初めて雪穂を見た時から、彼女のことを気に入っている様子だった。
 運命の糸は、自分と唐沢雪穂とを結びつけようとしているのだろうと誠は思った。そして、それに従っていれば全てうまくいくのかもしれない。
 だが――。
 現在彼の脳裏には、一人の女性の顔が焼き付いて離れない。考えまいとしても、ふと気づくと彼女のことを考えているのだ。
 誠は頭を振った。焦りに似た感情が、彼の内面を支配していた。
 数分後、家具屋のトラックが到着した。
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