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探偵ガリレオ 第五章 離脱る 06

时间: 2017-12-28    进入日语论坛
核心提示:       6  事件解決から三日後、草薙はタクシーの助手席に座って、帝都大学に向かっていた。後部座席には上村親子が座
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 事件解決から三日後、草薙はタクシーの助手席に座って、帝都大学に向かっていた。後部座席には上村親子が座っている。
「本当に一時間で済むんでしょうね。今日は雑誌のインタビューがあるので、四時までには必ず新宿に行かなきゃならないんですよ」上村宏が不機嫌さを露骨に声に出していった。突然部屋に押し掛けられ、強引にタクシーに乗せられたのだから、不愉快になるのも当然だった。
「すぐに終わるはずです。我々が行くまでに準備は整えておくといってましたし」
「どういう実験をするつもりか知りませんが、私の信念を変えるのはまず無理だと思いますよ。とにかくあの日忠広が、見えるはずのないものを見たのは事実なんですから。例の事件で疑われていた人だって、結局無実だと証明されたわけでしょう?」
「お言葉ですが、あの人が無実だと結論づけられたのは、真犯人が判明したからです。アリバイが証明されたからじゃありません」
「同じことです。その人が無実だということは、主張していたアリバイが正しかったということです。つまりあの日あの場所に、赤いミニクーパーは停まっていたんだ。そしてそれを忠広は見た。絶対に見えるはずのない場所からね」
「まあですから、そういうことがあり得るのかどうかを、これから実験しようというわけです」
 草薙の言葉に、上村宏はふんと鼻を鳴らした。
「恥をかくのがオチだと思いますがね。いっておきますが、もし実験が失敗した場合でも、このことは記事にしますからね。覚悟しておいてください」
「ええ、それはもう」後ろに向かって愛想笑いしてから、草薙は前方に顔を戻した。だが内心は冷や冷やしていた。彼は湯川が何をするつもりなのか、全く知らなかった。
 大学に着くと、上村親子を案内しながら、理工学部の棟に向かった。物理学科第十三研究室が、湯川のいる部屋だった。
 部屋のドアをノックすると、どうぞ、という声が聞こえた。草薙はドアを開けた。
「グッドタイミングだ。ちょうど準備が完了したところだ」白衣姿の湯川が、実験机の傍らからいった。
「二人を連れてきたよ」そういってから草薙は、流し台のところにいた人物を見て驚いた。竹田幸恵だった。
「竹田さん、どうしてここに?」上村が尋ねた。
「湯川先生から電話をいただいて、実験を手伝ってほしいといわれたの。あたしも興味があったから、是非お手伝いさせてもらおうと思ってやってきたのよ」彼女はにっこりしていった。
「よく彼女の電話番号がわかったな」草薙は湯川に訊いた。
「別に難しいことじゃない。カレーパンを買った時の袋に、電話番号が印刷されていた」
「あ……」あっさりといわれ、草薙は拍子抜けした。だがすぐに、あの時にこの男がカレーパンを買ったのは、この日の状況を予測していたからだろうかという気になった。
「何をするつもりかは知りませんが、早いところお願いしますよ。とにかく我々は忙しいんでね」上村が草薙と湯川の顔を見比べながらいった。
「お時間はとらせませんよ。そう、煙草を一本吸う間に終わります。煙草をお持ちですか」湯川は上村に訊いた。
「持ってますけど、吸っていいんですか」
「通常は禁煙ですが、今日は特別に認めます。ただし、この場所で吸ってください」湯川は実験机の上にガラスの灰皿を置いた。
「じゃあ失礼して」上村は上着のポケットから煙草を取り出し、一本を口にくわえて火をつけた。
「俺も吸っていいか」草薙も煙草の箱を出しながら訊いた。
 湯川はややげんなりしたように口元を歪めたが、結局小さく頷いた。ありがたい、と草薙は煙草に火をつけた。
「これは何ですか」上村が、実験机の上に並べて置いてある二つの水槽を指して訊いた。五十センチぐらいの長さの直方体をした水槽で、どちらにも七分目ほど水が入っている。
「触らないで。現在、中の水は非常に微妙な状態に保たれているんだ。揺らしたりしたら、そのバランスが崩れてしまう」
 湯川の言葉で、中の水に触ろうとしていた草薙はあわてて手を引っ込めた。
「この水を使って何をする気ですか」上村が重ねて訊いた。
 湯川が白衣のポケットから何か取り出した。それは、会議の時にスライドの注視位置を示すのに使ったりする、レーザーポインタだった。
「上村さん。あなたは、例の食品工場の大扉が全開になっていたとしても、角度から考えて、お宅の窓から堤防を見通すのは不可能だとおっしゃいましたね」湯川が確認するように尋ねた。
「ええ、いいましたよ」上村が答えた。挑む目をしていた。
「あそこの地形については、僕も確認しました。たしかに工場の大扉を全開したとしても、お宅とミニクーパーの停まっていた位置を直線で結ぶのは不可能でした。直線で結べないということは、通常は見通せないということです。なぜなら光は直進しますから」そういって湯川はレーザーポインタのスイッチを入れた。「竹田さん、すみませんが部屋の明かりを消してください」
 はい、と幸恵は返事して、壁のスイッチを切った。窓にはカーテンがひかれていたので、室内は一気に薄暗くなった。すると、レーザーポインタから出た光が、真っ直ぐに伸びているのがよく見えた。
 なるほどそれで煙草を許可したのかと草薙は納得した。空中に煙が漂っていたほうがレーザーの光を確認しやすいということは、以前湯川から教わったのだ。
「しかし」湯川はレーザー光を上村の胸元に当てていった。「もし光が曲がったらどうですか。見えるはずのないものが、見えることもあるんじゃないですか」
「光が曲がる?」いってから上村は、ああと頷いた。「鏡のことをいってるわけですか。そりゃあ鏡があれば、反射して見えることもあるでしょう。でも一体どこに鏡があったんです。しかもそんなに大きな鏡が」
 上村がしゃべっている途中から、湯川は首を振り始めていた。
「誰が鏡のことなんかいいましたか。まあ、黙って見ていてください。いいですか、この二つの水槽のうち、左側の水槽には普通の水が入れてあります。今、この中にレーザー光を通してみます」そういうと湯川は、レーザーポインタをゆっくりと左の水槽に向けた。あっ、と声を漏らしたのは、忠広だった。身体の小さい彼の場合、水槽をちょうど真横から見る格好になるのだ。
 レーザー光は水槽の側面でわずかに上に屈折し、そのまま水の中を直進していた。
「余談ですが、水にはほんの少しだけミルクを混ぜてあります。こうしたほうがレーザー光を見やすいのでね」湯川がいった。
「光が曲がってるよ」忠広が父親を見上げた。
 上村は、ふっと息を吐いた。
「反射でなければ屈折ですか。光が水に入る時に屈折するというのは、理科で習いました。でも、現場のどこかに巨大な水槽でもありましたかね」
「あなたは本当にせっかちな人だなあ」うんざりしたように湯川はいった。「光が水槽に入った時に屈折することは、この際考えなくて結構です。僕がまず見てもらいたいのは、いったん水の中に入った光は、そのまま直進しているということなんです」
「それなら確認しました。真っ直ぐに進んでいる」
「では次に、もう一つの水槽に光を通してみます」湯川はレーザーポインタを、右側の水槽に向けていった。
 おおっ、と今度は草薙が最初に声を出した。続いて忠広や幸恵も、うわあ、と驚きの声を上げた。上村は目を見開いたまま、黙っている。
 水槽に入った光は直進せず、下に向かって緩やかなカーブを描いているのだ。それは明らかに、「曲がっている」と表現すべきものだった。
「どういうことだ」と草薙は訊いた。
「もちろん水に仕掛けがあるのさ」湯川はいった。「じつはこちらの中身は砂糖水なんだ。しかも上のほうの濃度は薄く、下になるにしたがって濃くなるようにしてある。光は濃度の薄いところから濃いところに進む時、屈折をする。しかも濃度が濃いほど屈折率は大きい。だから光は斜め下に進めば進むほど、一層大きく曲げられることになる」
「なるほど、そういうことか」水槽に顔を近づけ、草薙はいった。「こういうものにお目にかかったのは、初めてだなあ」
「お目にかかったのは初めてかもしれないが、これと同じ原理で起きる自然現象のことなら、君も知っているはずだ」
「えっ、そうか。何のことだ?」
「その前に」といって湯川は壁まで歩いていき、明かりのスイッチを入れた。「例の事故のことを上村さんに話してくれないか」
「ああ、わかった」
「事故?」上村が虚をつかれたような顔をした。「何ですか、事故って」
「あの日、お宅の裏の食品工場で、ちょっとした事故があったんですよ」草薙が話し始めた。「あの工場では、食品を冷凍するのに液体窒素を大量に使っているんですが、そのタンクが壊れたそうなんです。当然液体窒素が流れだし、工場内の床の一部が急激に凍ってしまったという話でした」
「これもその時のサンプルですよ」湯川が、半分に切れたスニーカーを手に持って見せた。「急速に凍らされた後、何らかの衝撃で割れたんでしょう。その後、もう一度溶けると、このようになるわけです」
 壊れたスニーカーを見て、上村も少なからず驚いたようだった。
「そんなことがあったんですか。でも、そのことと今の実験と、どういう関係があるんですか」
 それは草薙も知りたいことだった。彼は湯川のほうを見た。
「液体窒素が流れ出たことで、工場の人間たちはあわてたはずです。すぐに換気が必要だと思い、大扉を開放したわけです。その結果どうなったか。当然、真夏の熱い空気が工場内に流れ込みました。その瞬間工場の中は、下には冷たい窒素、上には熱い空気という具合に、極めて密度の違うガスの層が出来てしまったのです」湯川は、先程の砂糖水の入った水槽を指差した。「液体と気体の違いはありますが、その時工場の中は、この水槽と同じ状況だったといえます」
「するとその時にレーザー光線を通したら、さっきみたいに曲がったわけか」
「そういうことになる」湯川は草薙に向かって頷いた。
「そうなると……どうなるんだ」
「当然、工場の中を通して向こう側を見ようとした場合、見えるのは本来の位置にあるものではなく、もっと下にあるものだ。あの時の場合、ふつうならば絶対に見えるはずのない堤防が見えたわけだ」
「そんなことがあるのか……。いや、原理はわかったが」草薙は呟いた。頭では理解できても、イメージが湧かなかった。
「さっきもいったように、同じ原理の自然現象のことなら、君だってよく知っているはずだ」湯川はいった。「蜃気楼だよ」
 ああ、と草薙は頷いた。話を横で聞いていた竹田幸恵も、納得した顔で首を縦に振っている。
「違う、蜃気楼なんかじゃない」上村が何かを断ち切るように右手を振り下ろした。
「竹田さんも見ただろう? あの時、工場の大扉は閉まっていたじゃないか」
「工場に問い合わせたところ、大扉を開けていたのは、ほんのわずかな間だけだったそうですよ」草薙はいった。
「違う、ちがう。おい忠広、ちゃんと話してやれ。おまえは空に浮かんだんだよな。そうして、あの景色を見たんだよな」
 しかし少年は父親の言葉に頷かなかった。
「空になんか、浮かんでないよ」泣きながらいった。「身体がふわふわしただけだよ。それなのにお父さんが、空に浮かんだっていえって……」
「忠広っ」上村がヒステリックに叫んだ。
 その時湯川が、忠広のほうに近づいていった。そして少年の前でしゃがみこんだ。
「正直に答えてくれ。君はあの景色をどんなふうにして見たんだい? 工場の大きな扉が開いて、その向こうに見えたんじゃないのかい?」
 すると忠広は少し考えてから、困ったように首を捻った。
「わかんない。そうだったかもしれない。ぼく、あの時ぼんやりしてたから、よくわかんないんだ」
「そうか」湯川は少年の頭に手を置いた。「それじゃあ、仕方ないな」
「蜃気楼だという証拠は何もない」上村がいった。「すべて推論にすぎない」
「そうです。でも、彼が幽体離脱したという証拠もない」
 湯川の反論に、上村は言葉に詰まった。するとその時、竹田幸恵がいった。
「上村さん、こういうこと、もうやめましょうよ。あたし、知ってるのよ」
「知ってるって……何を?」
「あなたが忠広ちゃんの絵に手を加えたことよ。週刊誌に載ってた写真を見て、びっくりしちゃったんだから。忠広君が最初に描いた絵、あんなにはっきりとしたものじゃなかった。そりゃあ赤い車に見えなくはなかったけれど、白い屋根なんてなかったし、タイヤだって付いてなかった。全部あなたが後から描き加えたものなんでしょ」
 彼女の指摘は事実のようだった。その証拠に上村は苦しげに顔を歪めた。
「あれは……話をわかりやすくするためにやったことです」
「何いってるのよ。単なるインチキじゃないの。そんなものに忠広ちゃんを付き合わせたりして……」幸恵は上村を睨みつけた。
 返す言葉がないのだろう、上村は唇を噛んだ。やがて彼は意を決したように、忠広の手を取った。
「興味深い実験を見せていただいて、ありがとうございます。でも、決定的な証拠は何もないようですから、参考意見として伺っておきます。予定がありますので、これで失礼します」
「上村さん……」
 幸恵が声をかけたが、彼は無視し、息子を連れて部屋を出ていってしまった。
 遠ざかっていく足音を、部屋に残った三人はしばらく黙って聞いていた。
「追いかけなくていいんですか」草薙は幸恵に訊いた。
「でも……」
「追いかけたほうがいい」湯川がいった。「あの少年のために」
 幸恵は、はっとしたように顔を上げた。それから二人に一礼すると、足早に出ていった。
 草薙は湯川と顔を見合わせ、ふうーっと長い息を吐いた。
「子供相手でも、まともに話ができるじゃないか」と草薙はいった。
 すると湯川は、白衣の袖をまくって見せた。手首に赤い斑点ができている。
「なんだ?」と草薙は訊いた。
「じんましんだ」と湯川は答えた。
「えっ?」
「慣れないことはするもんじゃないな」そういって湯川は窓のカーテンを大きく開いた。
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