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黄金豹-猫宅

时间: 2021-11-28    进入日语论坛
核心提示:ネコやしき 豹(ひょう)はいつのまにか、銀座を遠くはなれて、さびしい町にさしかかっていました。商店はなくなって、両がわに塀
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ネコやしき


 (ひょう)はいつのまにか、銀座を遠くはなれて、さびしい町にさしかかっていました。商店はなくなって、両がわに塀ばかりつづく住宅町です。
 そういうさびしい町に、さしかかったとき、ちょっとかわったことがおこりました。豹が、道のまん中で立ちどまったのです。そして、うしろをふりかえったのです。夕やみの中に青く光る目が、(りん)のように、うすきみ悪く光りました。
 それを見ると警官たちは、思わず立ちどまりました。もし豹が、こちらへむかってくるようだったら、すぐピストルをうたなければならないと身がまえをしたのです。
 しかし豹は、そこに立ったまま首だけをうしろにむけて、じっとにらんでいるばかりです。
 こちらへ飛びかかってくるようすも見えません。
 そうして、人間と猛獣との奇妙なにらみあいが、しばらくつづきましたが、とつぜん、なにに驚いたのか、豹がブルッと身ぶるいをしたかと思うと、恐ろしいいきおいで、前の方へかけだしました。
「それッ、逃がすなッ。」
というので、警官たちも、豹のあとを追って走ります。しかし、人間の足は、ピョイピョイと飛ぶように走る豹の早さにはかないません。みるみる、あいだがへだたっていくのです。
 豹はそれから、二つほど町かどをまがりました。そこには、赤レンガの塀がつづいています。塀の中には、古い木造の西洋館が立っているのです。だれかの住宅なのでしょう。
 アッと思うまに、黄金の豹は、そのレンガ塀に飛びつきました。そして、二、三ど、パッ、パッと、飛びあがっているうちに、うまく塀の上にのぼりつき、そこで、グッと警官たちの方をにらみつけておいてから、塀の内がわへ飛びおりてしまいました。
 警官隊は、そのうちの門の前にかけつけました。うちの人たちに、豹が邸内にはいったことを知らせなければならないからです。
 門の扉は開いたままになっており、その中に、大きなシュロの立ち木があって、そのむこうに、西洋館の入口が見えています。
 警官たちは、ピストルをかまえて、用心ぶかくあたりを見まわしながら、その門の中へはいっていきました。しかし、豹のすがたは、どこにも見えません。きっと、うら庭の方にいるのでしょう。
 警官たちは右と左の二組にわかれて、うら庭の方へまわっていきます。そして、隊長らしい、ひとりの警官だけは、あとにのこって、西洋館の入口のベルをおしました。
 すると、ドアが開いて、ひとりの老人があらわれ、うさんくさそうに、じろじろと警官の姿をながめました。
 その老人は、太いべっこうぶちのめがねをかけ、まっ白なあごひげを、胸までたらし、はでなこうしじまの背広をきています。めしつかいでは、なさそうです。主人かもしれません。
「たいへんなことがおこったのです。一ぴきの豹が、おたくの塀をのりこして、うら庭へ飛びこんだのです。今、みんなが、庭の方をさがしていますが、豹が、うちの中へはいるとたいへんですから、窓の戸を、ぜんぶしめていただきたいのです。」
 警官がそういいますと、白ひげの老人は、ニヤリと笑って、
「窓ならだいじょうぶですよ。みんなしまってます。じつは、わしのうちには、たくさん動物がいますので、窓から外へ出ないように、しめきってあるのですよ。」
「動物といいますと?」警官がみょうな顔をしてたずねました。
「いや、小さな動物です。ネコですよ。ネコが十六ぴきいるのです。わしの、かわいい友だちです。うっかりすると、窓から逃げだしますのでね。それで、いつも、しめきってあるのですよ。」
 十六ぴきとは驚きました。このうちは、ネコやしきです。このじいさんは、ネコじいさんです。
 そうして、話しているうちに、奥の方から、ぞろぞろと、ネコどもが出てきました。白ネコ、黒ネコ、みけネコ、ぶちネコ、色さまざまのネコどもが、じいさんのうしろへ集まってくるのです。
「しっ、しっ、おまえたち、奥へいっていなさい。恐ろしい豹がやってきたんだとよ。くい殺されたらたいへんだから、みんな、奥へ、かくれていなさい。」
 じいさんは、人間にものをいうように、ネコどもに話しかけました。すると、そのことばがわかったのか、ネコたちは、一ぴきずつ、のろのろと、奥の方へもどっていくのです。
 そのとき、入口の外に、どやどやと足音がして、庭をさがしていた警官たちがもどってきました。
「ふしぎです。豹は消えてしまいました。われわれは両方から、うら庭へはいっていって、築山(つきやま)のうしろや、木のかげを、すっかり、しらべたのですが、どこにもいません。」
 それを聞くと白ひげの老人が、ニヤニヤと笑いました。
「その豹は、金色をしていましたかね。」
「そうです。全身、金色の、ふしぎな豹です。」
「ウフフフ……、うわさにたかい『まぼろしの豹』じゃ。あいつが、消えてしまったら、もう、見つかりっこありませんよ。」じいさんは、うさんくさく、笑いながらいうのでした。
 それから、その付近いったいの、大捜索がはじまりました。十人のほかに、たくさんの警官や消防署員がやってきて、町から町をしらべまわったのです。
 しかし、豹はどこにもいません。ほんとうに、消えてしまったとしか思えないのです。やっぱり、あれは、豹のお化けだったのでしょうか。『まぼろしの豹』だったのでしょうか。
 それにしても、ネコやしきのネコじいさんは、なんだか、あやしげな人物です。このまえ、中学生が豹に出あったとき、その豹が消えた町かどから、あらわれたじいさんが、やっぱり、まっ白な、長いあごひげをたらしていました。そして、同じこうしじまの背広をきていました。まぼろしの豹が、消えうせるたびに、そのあとへ姿をあらわす、このじいさんは、いったい、なにものだったのでしょうか。

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