君
おれはそうですなあと少し進まない返事をしたら、君釣をした事がありますかと失敬な事を聞く。あんまりないが、子供の時、
船頭はゆっくりゆっくり
ここいらがいいだろうと船頭は船をとめて、
しばらくすると、何だかぴくぴくと糸にあたるものがある。おれは考えた。こいつは魚に相違ない。生きてるものでなくっちゃ、こうぴくつく訳がない。しめた、釣れたとぐいぐい
それから赤シャツと野だは
すると二人は小声で何か話し始めた。おれにはよく
「え? どうだか……」「……全くです……知らないんですから……罪ですね」「まさか……」「バッタを……本当ですよ」
おれは外の言葉には耳を
「また例の
言葉はかように途切れ途切れであるけれども、バッタだの天麩羅だの、団子だのというところをもって推し測ってみると、何でもおれのことについて
もう帰ろうかと赤シャツが思い出したように云うと、ええちょうど時分ですね。今夜はマドンナの君にお
船は静かな海を岸へ
「それでね、生徒は君の来たのを大変
「いろいろの事情た、どんな事情です」
「それが少し込み入ってるんだが、まあだんだん分りますよ。
「ええなかなか込み入ってますからね。一朝一夕にゃ到底分りません。しかしだんだん分ります、僕が話さないでも自然と分って来るです」と野だは赤シャツと同じような事を云う。
「そんな
「そりゃごもっともだ。こっちで口を切って、あとをつけないのは無責任ですね。それじゃこれだけの事を云っておきましょう。あなたは失礼ながら、まだ学校を卒業したてで、教師は始めての、経験である。ところが学校というものはなかなか情実のあるもので、そう書生流に
「淡泊に行かなければ、どんな風に行くんです」
「さあ君はそう率直だから、まだ経験に
「どうせ経験には乏しいはずです。
「さ、そこで思わぬ辺から乗ぜられる事があるんです」
「正直にしていれば
「無論怖くはない、怖くはないが、乗ぜられる。現に君の前任者がやられたんだから、気を付けないといけないと云うんです」
野だが
「僕の前任者が、
「だれと指すと、その人の名誉に関係するから云えない。また判然と
「気を付けろったって、これより気の付けようはありません。わるい事をしなけりゃ
赤シャツはホホホホと笑った。別段おれは笑われるような事を云った覚えはない。
「無論
港屋の二階に灯が一つついて、汽車の