うらなり君の送別会のあるという日の朝、学校へ出たら、
おれは何とも云わずに、山嵐の机の上にあった、一銭五
「君は一体どこの産だ」
「おれは
「うん、江戸っ子か、道理で負け惜しみが強いと思った」
「きみはどこだ」
「僕は
「会津っぽか、強情な訳だ。今日の送別会へ行くのかい」
「行くとも、君は?」
「おれは無論行くんだ。古賀さんが立つ時は、
「送別会は面白いぜ、出て見たまえ。今日は大いに飲むつもりだ」
「勝手に飲むがいい。おれは
「君はすぐ
「何でもいい、送別会へ行く前にちょっとおれのうちへお寄り、
山嵐は
おれはまず
それから増給事件と将来重く登用すると赤シャツが云った話をしたら山嵐はふふんと鼻から声を出して、それじゃ僕を
うらなりが、そんなに
今度の事件は全く赤シャツが、うらなりを遠ざけて、マドンナを手に入れる策略なんだろうとおれが云ったら、無論そうに違いない。あいつは
おれはあまり感心したから、君そのくらいの腕なら、赤シャツの五人や六人は一度に張り飛ばされるだろうと聞いたら、無論さと云いながら、曲げた腕を
君どうだ、今夜の送別会に大いに飲んだあと、赤シャツと野だを
じゃ演説をして古賀君を大いにほめてやれ、おれがすると江戸っ子のぺらぺらになって重みがなくていけない。そうして、きまった所へ出ると、急に
そうこうするうち時間が来たから、山嵐と一所に会場へ行く。会場は
二人が着いた
やがて書記の川村がどうかお着席をと云うから、柱があって
赤シャツが座に復するのを待ちかねて、山嵐がぬっと立ち上がったから、おれは
挨拶が済んだら、あちらでもチュー、こちらでもチュー、という音がする。おれも真似をして
そのうち
それから一時間ほどするうちに席上は大分乱れて来る。まあ一
「美しい顔をして人を陥れるようなハイカラ野郎は延岡に
「うん」
「ハイカラ野郎だけでは不足だよ」
「じゃ何と云うんだ」
「ハイカラ野郎の、ペテン師の、イカサマ師の、
「おれには、そう舌は廻らない。君は能弁だ。第一単語を大変たくさん知ってる。それで
「なにこれは
「そうかな、しかしぺらぺら出るぜ。もう一遍やって見たまえ」
「何遍でもやるさいいか。――ハイカラ野郎のペテン師の、イカサマ師の……」と云いかけていると、
「両君そりゃひどい、――逃げるなんて、――僕が居るうちは決して
とおれと山嵐をぐいぐい引っ張って行く。実はこの両人共便所に来たのだが、
「さあ、諸君、いかさま師を引っ張って来た。さあ飲ましてくれたまえ。いかさま師をうんと云うほど、酔わしてくれたまえ。君逃げちゃいかん」
と逃げもせぬ、おれを
ところへお座敷はこちら? と芸者が三四人はいって来た。おれも少し
芸者が来たら座敷中急に陽気になって、一同が
しばらくしたら、めいめい
すると、いつの間にか
向うの方で漢学のお
山嵐は馬鹿に大きな声を出して、芸者、芸者と呼んで、おれが
おれはさっきから苦しそうに袴も