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永日小品(えいじつしょうひん)--心

时间: 2020-12-13    进入日语论坛
核心提示: 二階の手摺(てすり)に湯上りの手拭(てぬぐい)を懸(か)けて、日の目の多い春の町を見下(みおろ)すと、頭巾(ずきん)を被(かむ)っ
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 二階の手摺(てすり)に湯上りの手拭(てぬぐい)()けて、日の目の多い春の町を見下(みおろ)すと、頭巾(ずきん)(かむ)って、白い(ひげ)(まば)らに()やした下駄(げた)の歯入が垣の外を通る。古い(つづみ)天秤棒(てんびんぼう)(くく)りつけて、竹のへらでかんかんと(たた)くのだが、その音は頭の中でふと思い出した記憶のように、鋭いくせに、どこか気が抜けている。爺さんが筋向(すじむこう)の医者の門の(わき)へ来て、例の()(そこ)なった春の(つづみ)をかんと打つと、頭の上に真白に咲いた梅の中から、一羽の小鳥が飛び出した。歯入は気がつかずに、青い竹垣をなぞえに(むこう)の方へ廻り込んで見えなくなった。鳥は一摶(ひとはばたき)に手摺の下まで飛んで来た。しばらくは柘榴(ざくろ)の細枝に(とま)っていたが、落ちつかぬと見えて、二三度()ぶりを()える拍子(ひょうし)に、ふと欄干(らんかん)()りかかっている自分の方を見上げるや否や、ぱっと立った。枝の上が(けむ)るごとくに動いたと思ったら、小鳥はもう奇麗(きれい)な足で手摺の(さん)()まえている。
 まだ見た事のない鳥だから、名前を知ろうはずはないが、その色合が(いちじ)るしく自分の心を動かした。(うぐいす)に似て少し渋味(しぶみ)の勝った(つばさ)に、胸は(くす)んだ、煉瓦(れんが)の色に似て、吹けば飛びそうに、ふわついている。その(あたり)には(やわら)かな波を時々打たして、じっとおとなしくしている。(おど)すのは罪だと思って、自分もしばらく、手摺に倚ったまま、指一本も動かさずに辛抱していたが、存外鳥の方は平気なようなので、やがて思い切って、そっと身を(うしろ)へ引いた。同時に鳥はひらりと手摺の上に飛び上がって、すぐと眼の前に来た。自分と鳥の間はわずか一尺ほどに過ぎない。自分は(なか)ば無意識に右手(めて)を美しい鳥の方に出した。鳥は(やわら)かな(つばさ)と、華奢(きゃしゃ)な足と、(さざなみ)の打つ胸のすべてを()げて、その運命を自分に託するもののごとく、向うからわが手の(うち)に、安らかに飛び移った。自分はその時丸味のある頭を上から眺めて、この鳥は……と思った。しかしこの鳥は……の(あと)はどうしても思い出せなかった。ただ心の底の方にその(あと)(ひそ)んでいて、総体を薄く(ぼか)すように見えた。この心の底一面に煮染(にじ)んだものを、ある不可思議の力で、一所(ひとところ)に集めて判然(はっきり)と熟視したら、その形は、――やっぱりこの時、この場に、自分の手のうちにある鳥と同じ色の同じ物であったろうと思う。自分は(ただち)(かご)の中に鳥を入れて、春の日影の(かたむ)くまで眺めていた。そうしてこの鳥はどんな心持で自分を見ているだろうかと考えた。
 やがて散歩に出た。欣々然(きんきんぜん)として、あてもないのに、町の数をいくつも通り越して、(にぎや)かな往来(おうらい)を行ける所まで行ったら、往来は右へ折れたり左へ曲ったりして、知らない人の(あと)から、知らない人がいくらでも出て来る。いくら歩いても(にぎや)かで、陽気で、楽々しているから、自分はどこの点で世界と接触して、その接触するところに一種の窮屈を感ずるのか、ほとんど想像も及ばない。知らない人に幾千人となく出逢(であ)うのは(うれ)しいが、ただ嬉しいだけで、その嬉しい人の眼つきも鼻つきもとんと頭に映らなかった。するとどこかで、宝鈴(ほうれい)が落ちて廂瓦(ひさしがわら)に当るような音がしたので、はっと思って向うを見ると、五六間先の小路(こうじ)の入口に一人の女が立っていた。何を着ていたか、どんな(まげ)()っていたか、ほとんど分らなかった。ただ眼に映ったのはその顔である。その顔は、眼と云い、口と云い、鼻と云って、離れ離れに叙述する事のむずかしい――否、眼と口と鼻と(まゆ)と額といっしょになって、たった一つ自分のために作り上げられた顔である。百年の昔からここに立って、眼も鼻も口もひとしく自分を待っていた顔である。百年の(のち)まで自分を従えてどこまでも行く顔である。黙って物を云う顔である。女は黙って(うしろ)を向いた。追いついて見ると、小路と思ったのは露次(ろじ)で、不断(ふだん)の自分なら躊躇(ちゅうちょ)するくらいに細くて薄暗い。けれども女は黙ってその中へ這入(はい)って行く。黙っている。けれども自分に後を()けて来いと云う。自分は身を穿(すぼ)めるようにして、露次の中に這入った。
 黒い暖簾(のれん)がふわふわしている。白い字が染抜いてある。その次には頭を(かす)めるくらいに軒灯が出ていた。真中に三階松(さんがいまつ)が書いて下に(もと)とあった。その次には硝子(ガラス)の箱に軽焼(かるやき)(あられ)が詰っていた。その次には軒の下に、更紗(さらさ)小片(こぎれ)を五つ六つ四角な(わく)の中に並べたのが()けてあった。それから香水の(びん)が見えた。すると露次は真黒な土蔵の壁で行き留った。女は二尺ほど前にいた。と思うと、急に自分の方をふり返った。そうして急に右へ曲った。その時自分の頭は突然先刻(さっき)の鳥の心持に変化した。そうして女に()いて、すぐ右へ曲った。右へ曲ると、前よりも長い露次が、細く薄暗く、ずっと続いている。自分は女の黙って思惟するままに、この細く薄暗く、しかもずっと続いている露次の中を鳥のようにどこまでも跟いて行った。

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