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草枕 八(2)

时间: 2021-02-22    进入日语论坛
核心提示:「ははあ、洋画か。すると、あの久一(きゅういち)さんのやられるようなものかな。あれは、わしこの間始めて見たが、随分奇麗にか
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「ははあ、洋画か。すると、あの久一(きゅういち)さんのやられるようなものかな。あれは、わしこの間始めて見たが、随分奇麗にかけたのう」
「いえ、詰らんものです」と若い男がこの時ようやく口を開いた。
「御前何ぞ和尚さんに見ていただいたか」と老人が若い男に聞く。言葉から云うても、様子から云うても、どうも親類らしい。
「なあに、見ていただいたんじゃないですが、(かがみ)(いけ)で写生しているところを和尚さんに見つかったのです」
「ふん、そうか――さあ御茶が()げたから、一杯」と老人は茶碗を各自(めいめい)の前に置く。茶の量は三四滴に過ぎぬが、茶碗はすこぶる大きい。生壁色(なまかべいろ)の地へ、()げた(たん)と、薄い()で、絵だか、模様だか、鬼の面の模様になりかかったところか、ちょっと見当のつかないものが、べたに()いてある。
杢兵衛(もくべえ)です」と老人が簡単に説明した。
「これは面白い」と余も簡単に()めた。
「杢兵衛はどうも偽物(にせもの)が多くて、――その糸底(いとぞこ)を見て御覧なさい。(めい)があるから」と云う。
 取り上げて、障子(しょうじ)の方へ向けて見る。障子には植木鉢の葉蘭(はらん)の影が暖かそうに写っている。首を()げて、(のぞ)き込むと、(もく)の字が小さく見える。銘は観賞の上において、さのみ大切のものとは思わないが、好事者(こうずしゃ)はよほどこれが気にかかるそうだ。茶碗を下へ置かないで、そのまま口へつけた。濃く(あま)く、湯加減(ゆかげん)に出た、重い露を、舌の先へ一しずくずつ落して(あじわ)って見るのは閑人適意(かんじんてきい)韻事(いんじ)である。普通の人は茶を飲むものと心得ているが、あれは間違だ。舌頭(ぜっとう)へぽたりと()せて、清いものが四方へ散れば咽喉(のど)(くだ)るべき液はほとんどない。ただ馥郁(ふくいく)たる(におい)が食道から胃のなかへ()み渡るのみである。歯を用いるは(いや)しい。水はあまりに軽い。玉露(ぎょくろ)に至っては(こまや)かなる事、淡水(たんすい)(きょう)を脱して、(あご)を疲らすほどの(かた)さを知らず。結構な飲料である。眠られぬと訴うるものあらば、眠らぬも、茶を用いよと勧めたい。
 老人はいつの間にやら、青玉(せいぎょく)の菓子皿を出した。大きな(かたまり)を、かくまで薄く、かくまで規則正しく、()りぬいた匠人(しょうじん)手際(てぎわ)は驚ろくべきものと思う。すかして見ると春の日影は一面に()し込んで、射し込んだまま、()がれ()ずる(みち)を失ったような感じである。中には何も盛らぬがいい。
「御客さんが、青磁(せいじ)()められたから、今日はちとばかり見せようと思うて、出して置きました」

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