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草枕 十一(3)

时间: 2021-02-22    进入日语论坛
核心提示:木蓮の花ばかりなる空を瞻(み)ると云う句を得た。どこやらで、鳩がやさしく鳴き合うている。 庫裏に入る。庫裏は明け放してある
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木蓮の花ばかりなる空を()

と云う句を得た。どこやらで、鳩がやさしく鳴き合うている。
 庫裏に入る。庫裏は明け放してある。盗人(ぬすびと)はおらぬ国と見える。(いぬ)はもとより()えぬ。
「御免」
訪問(おとず)れる。(しん)として返事がない。
「頼む」
と案内を乞う。鳩の声がくううくううと聞える。
「頼みまああす」と大きな声を出す。
「おおおおおおお」と遥かの(むこう)で答えたものがある。人の家を()うて、こんな返事を聞かされた事は決してない。やがて足音が廊下へ響くと、紙燭(しそく)の影が、衝立(ついたて)の向側にさした。小坊主がひょこりとあらわれる。了念(りょうねん)であった。
和尚(おしょう)さんはおいでかい」
「おられる。何しにござった」
「温泉にいる画工(えかき)が来たと、取次(とりつい)でおくれ」
「画工さんか。それじゃ御上(おあが)り」
「断わらないでもいいのかい」
「よろしかろ」
 余は下駄を脱いで上がる。
「行儀がわるい画工さんじゃな」
「なぜ」
「下駄を、よう御揃(おそろ)えなさい。そらここを御覧」と紙燭を差しつける。黒い柱の真中に、土間から五尺ばかりの高さを見計(みはから)って、半紙を四つ切りにした上へ、何か(したた)めてある。
「そおら。読めたろ。脚下(きゃっか)を見よ、と書いてあるが」
「なるほど」と余は自分の下駄を丁寧に揃える。
 和尚の(へや)は廊下を(かぎ)()(まが)って、本堂の横手にある。障子(しょうじ)(うやうや)しくあけて、恭しく敷居越しにつくばった了念が、
「あのう、志保田(しほだ)から、画工さんが来られました」と云う。はなはだ恐縮の(てい)である。余はちょっとおかしくなった。
「そうか、これへ」
 余は了念と入れ代る。室がすこぶる狭い。中に囲炉裏(いろり)を切って、鉄瓶(てつびん)が鳴る。和尚は向側に書見(しょけん)をしていた。
「さあこれへ」と眼鏡(めがね)をはずして、書物を(かたわら)へおしやる。
「了念。りょううねええん」
「ははははい」
座布団(ざぶとん)を上げんか」
「はははははい」と了念は遠くで、長い返事をする。
「よう、来られた。さぞ退屈だろ」
「あまり月がいいから、ぶらぶら来ました」
「いい月じゃな」と障子をあける。飛び石が二つ、松一本のほかには何もない、平庭(ひらにわ)の向うは、すぐ懸崖(けんがい)と見えて、眼の下に朧夜(おぼろよ)の海がたちまちに開ける。急に気が大きくなったような心持である。漁火(いさりび)がここ、かしこに、ちらついて、遥かの末は空に入って、星に()けるつもりだろう。
「これはいい景色。和尚(おしょう)さん、障子をしめているのはもったいないじゃありませんか」
「そうよ。しかし毎晩見ているからな」
何晩(いくばん)見てもいいですよ、この景色は。私なら寝ずに見ています」
「ハハハハ。もっともあなたは画工(えかき)だから、わしとは少し違うて」
「和尚さんだって、うつくしいと思ってるうちは画工でさあ」


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