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虞美人草 三 (3)

时间: 2021-03-22    进入日语论坛
核心提示: 「都合か。世の中に都合ほど卑怯(ひきょう)なものはない」「するとアレキサンダーは大変な卑怯な男になる訳だ」「アレキサンダ
(单词翻译:双击或拖选)
  「都合か。世の中に都合ほど卑怯(ひきょう)なものはない」
「するとアレキサンダーは大変な卑怯な男になる訳だ」
「アレキサンダーなんか、そんなに(えら)いと思ってるのか」
 会話はちょっと切れた。甲野さんは寝返りを打つ。宗近君は箕坐(あぐら)のまま旅行案内をひろげる。雨は(なな)めに降る。
 古い京をいやが上に()びよと降る糠雨(ぬかあめ)が、赤い腹を空に見せて()いと行く乙鳥(つばくら)()(こた)えるほど繁くなったとき、下京(しもきょう)上京(かみきょう)もしめやかに()れて、三十六峰(さんじゅうろっぽう)(みど)りの底に、音は友禅(ゆうぜん)(べに)を溶いて、菜の花に(そそ)ぐ流のみである。「御前(おまえ)川上、わしゃ川下で……」と(せり)を洗う門口(かどぐち)に、(まゆ)をかくす手拭(てぬぐい)の重きを脱げば、「大文字(だいもんじ)」が見える。「松虫(まつむし)」も「鈴虫(すずむし)」も幾代(いくよ)の春を苔蒸(こけむ)して、(うぐいす)の鳴くべき(やぶ)に、墓ばかりは残っている。鬼の出る羅生門(らしょうもん)に、鬼が来ずなってから、門もいつの代にか取り(こぼ)たれた。(つな)がぎとった腕の行末(ゆくえ)は誰にも分からぬ。ただ昔しながらの春雨(はるさめ)が降る。寺町では寺に降り、三条では橋に降り、祇園(ぎおん)では桜に降り、金閣寺では松に降る。宿の二階では甲野さんと宗近君に降っている。
 甲野さんは寝ながら日記を()けだした。横綴(よことじ)の茶の表布(クロース)の少しは汗に()ごれた(かど)を、折るようにあけて、二三枚めくると、一(ページ)(さん)(いち)ほど白い所が出て来た。甲野さんはここから書き始める。鉛筆を()って景気よく、
一奩(いちれん)楼角雨(ろうかくのあめ)閑殺(かんさつす)古今人(ここんのひと)
と書いてしばらく考えている。転結(てんけつ)を添えて絶句にする気と見える。
 旅行案内を(ほう)り出して宗近君はずしんと畳を威嚇(おどか)して椽側(えんがわ)へ出る。椽側には御誂向(おあつらえむき)に一脚の()椅子(いす)が、人待ち顔に、しめっぽく()えてある。(れんぎょう)(まばら)なる花の間から(とな)()の座敷が見える。障子(しょうじ)は立て切ってある。(うち)では琴の()がする。
(たちまち)(きく)[#「耳+吾」、56-1弾琴響(だんきんのひびき)垂楊(すいよう)惹恨(うらみをひいて)(あらたなり)
と甲野さんは別行に十字書いたが、気に入らぬと見えて、すぐさま棒を引いた。あとは普通の文章になる。

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